アクセス
JP EN

労働問題

より充実した労働環境のために

roudou.jpg働いて対価を得ること、すなわち労働は、私たちが毎日の生活を営むための基本的手段です。日本の就労人口の約7割が会社等に勤めて賃金を得る労働者であるといわれています。
労働者は労働を提供し、使用者(会社等)は提供された労働相応の賃金を支払うのですから、建前上、両者は対等の関係のはずです。しかし、実際には使用者のほうが圧倒的に優位であり、そのため、賃金の未払い、サービス残業、不当解雇、雇い止めといった問題が絶えません。また、職場におけるセクハラ、パワハラ、労災事故等、一口に労働問題といってもその内容は多岐に亘ります。
生きるための権利である労働の権利を、使用者(会社等)の利益との間でどのように調和的に実現していくべきか、弁護士も皆さんと一緒にこの問題に取り組んでいます。

「労働」に関しての質問一覧
上司から、仕事の段取りが悪いという理由で、毎日のように、1時間程度、他の同僚や部下の前で、大声で叱責を受けています。また、私の能力を否定し罵倒するような内容の電子メールを同僚も含めて送るなどされています。こうしたことが1年ほど続いて、最近は気力もなくなり、会社を辞めたいと考えるようになりました。これらはパワーハラスメントに該当しますか、また、今後、どのように対処すれば良いでしょうか?
私どもの会社では、正社員として期間の定めなく採用されている者と契約社員として期間の定めをして採用している者がおります。近頃「雇い止め」に対する規制が話題に上っていますが、どのような「雇い止め」が許されないのか、明確な基準はあるのでしょうか?
私は、突然会社の上司から、「会社の経営が厳しいので、来月末日限りで君を解雇する」と言われました。しかし、私のほかに同じ理由で解雇となる者はなく、私自身も業績不振などの負い目はありません。そのため、経営不振という理由には納得できません 。この場合、解雇は無効だとして会社に残ることができますか。また、不当な解雇につき、慰謝料、その他の給与などの金銭的な支払いを求めることはできますか。
ある企業から内定をいただきましたが、卒業目前に、突然内定を取り消すとの書面が送られてきました。その理由は「入社後の勤務に不適当と認められる」からとありますが、何が不適当なのか書かれていません。この企業に対して、なにか対抗できることはないのでしょうか?
私は、担当業務の都合上、毎月約40時間は残業をせざるを得ない状況にありますが、会社は、一律に残業手当を支払っているからそれ以上の残業代は支払わないと言っています。他の社員の中には、年俸制を理由に残業代の支払を断られた者もいるようです。これは正しいのでしょうか?残業代の支払いを求めることは出来ますか。
仕事から帰る途中、妻に頼まれて食料品を買いにスーパーに立ち寄ろうとしましたが、その途中で交通事故に遭い、大けがをしてしまいました。このような場合も労災保険給付の対象になるのでしょうか?

上司から、仕事の段取りが悪いという理由で、毎日のように、1時間程度、他の同僚や部下の前で、大声で叱責を受けています。また、私の能力を否定し罵倒するような内容の電子メールを同僚も含めて送るなどされています。こうしたことが1年ほど続いて、最近は気力もなくなり、会社を辞めたいと考えるようになりました。これらはパワーハラスメントに該当しますか、また、今後、どのように対処すれば良いでしょうか?

パワーハラスメントに該当する可能性が高いと言えます。
この点、職場 におけるパワーハラスメント(以下「パワーハラスメント」といいます)とは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものをいいます。
あなたの上司の行為は、この①から③のいずれも満たすと考えられますので、パワーハラスメントに該当する可能性が高いといえます。
パワーハラスメントが行われた場合、従業員にとっては、働く環境が悪化するほか、その態様によっては、精神疾患・自死等の重篤な結果に至る場合もあります。事業者にとっては、従業員の士気や作業効率が下がり、不正行為も生じやすくなるといった弊害があるほか、態様によっては従業員に対して損害賠償義務を負う場合もあります。近年においては、パワーハラスメントに対する社会の目が厳しくなり、事業者にはパワーハラスメントへの対応義務が課されています(労働施策総合推進法30条の2第1項)。

パワーハラスメントの解決方法としては、職場内の救済手続、都道府県労働局等の行政機関の手続を利用するほか、必要に応じて、弁護士や労働組合を介して、会社に対して職場改善を求めていくことが考えられます。もちろん、パワーハラスメントの態様によっては、加害者や会社に対して損害賠償請求を行うことも考えられます[S5] [a6] 。なお、都道府県労働局においては、従来からハラスメントに対する相談対応や紛争解決援助が行われていましたが、新たに上記労働施策推進法に基づく助言、指導又は勧告、調停といった紛争解決援助の制度が設けられました(同法30条の5第1項・30条の6第1項)。
適切な解決方法を判断するにあたっては、法律の専門家である弁護士に具体的な事実関係を伝えて相談し、助言を求めることが有用です。

私どもの会社では、正社員として期間の定めなく採用されている者と契約社員として期間の定めをして採用している者がおります。近頃「雇い止め」に対する規制が話題に上っていますが、どのような「雇い止め」が許されないのか、明確な基準はあるのでしょうか?

いわゆる雇止めとは、期間の定めのある労働者の雇用契約を、期間満了により打ち切ることであり、正社員として期間の定めなく採用されている者ではなく、契約社員として期間の定めをして採用されている者について問題となります。
契約期間が定められている以上、契約期間の満了に従って雇用契約が終了するのが原則です。
しかし、期間の定めのない契約と同視できる場合や、雇用継続に対する合理的な期待がある場合には、契約の継続を認めて労働者を保護する必要性があることから、使用者としては、客観的合理的な理由があり、社会通念上相当でなければ、労働者の再契約の申込みを拒絶できません(労働契約法19条)。
どのような場合に再契約の申込が拒絶できないかは、弁護士に相談されると良いでしょう。

また、平成25年4月1日以降に開始した有期雇用契約 について、当初の契約時から5年を超えた場合には、次の契約更新のときに、労働者の申込みにより期間の定めのない雇用契約への変更を求めることが出来ます(労働契約法18条)。5年に近づく時期の契約において、次回は再契約をしない旨の条項を入れるケースもありますが、当該条項を入れた書面に労働者がサインをしたからといって、それだけで直ちに再契約が認められなくなるわけではなく、上記の労働契約法19条の要件を満たす場合には再契約が成立する場合もあります。

私は、突然会社の上司から、「会社の経営が厳しいので、来月末日限りで君を解雇する」と言われました。しかし、私のほかに同じ理由で解雇となる者はなく、私自身も業績不振などの負い目はありません。そのため、経営不振という理由には納得できません 。この場合、解雇は無効だとして会社に残ることができますか。また、不当な解雇につき、慰謝料、その他の給与などの金銭的な支払いを求めることはできますか。

労働契約においては、客観的合理的な理由があり、社会通念上相当でなければ、解雇が無効となります(労働契約法16条)。
ご質問の内容は、会社の経営が厳しいことを理由としているようですので、いわゆる「整理解雇」に関する問題です。この整理解雇とは、業績不振の会社等が、経費削減、あるいは不採算部門閉鎖等を理由に行う解雇のことを指します。
この場合は、労働者側に特に非がないことから、人員削減が真に必要か、解雇以外の努力を尽くしたか、解雇者対象者の選定基準は合理的か、労働者に対する事前の説明・協議を尽くしたか等の観点からその有効性が判断されます。
したがって、上記の各視点から、整理解雇として有効かを確認し、弁護士へご相談されるのが良いでしょう。
仮に解雇が無効となれば、会社との雇用関係が継続することになります。この場合には、解雇期間中の未払い賃金について、会社に対して支払いを求める権利も認められることが一般的です。また、解雇により被った精神的苦痛について慰謝料請求が認められる場合もあります。

ある企業から内定をいただきましたが、卒業目前に、突然内定を取り消すとの書面が送られてきました。その理由は「入社後の勤務に不適当と認められる」からとありますが、何が不適当なのか書かれていません。この企業に対して、なにか対抗できることはないのでしょうか?

内定は、具体的事情によっては、内定通知により「始期付解雇権留保付の労働契約」が成立すると認められる場合があり、その取消しは、従業員の解雇と同様に扱われる場合があります。
なお、誓約書の取消事由には「その他入社後の勤務に不適当と認められること」といった記載がよく見られますが、これに当たる事由としては、内定後に重大犯罪で処罰された場合や、内定後の事故で会社の努力では補えないほどの障害を負い、就労が困難となった場合などが挙げられますが、そのような事由がない場合、会社に対して明確な回答を求めるべきですし、当面の就労の機会を確保するために地位保全の仮処分等を検討したほうがよいでしょう。

私は、担当業務の都合上、毎月約40時間は残業をせざるを得ない状況にありますが、会社は、一律に残業手当を支払っているからそれ以上の残業代は支払わないと言っています。他の社員の中には、年俸制を理由に残業代の支払を断られた者もいるようです。これは正しいのでしょうか?残業代の支払いを求めることは出来ますか。

割増賃金の計算を簡素化する、従業員の作業効率を高める、見かけの給与を高く見せる等の理由で、予想される残業時間相当の割増賃金を予め固定残業手当として支払う例は多く見られます。しかし、当該手当自体が無効であると判断される場合があり、この場合には、当該手当を含めた金額をベースにした時間外手当(残業代)を支払う必要があります。なお、当該手当の有効無効にかかわらず、実際の残業時間が固定残業手当において想定された残業時間を超えた場合には、その差額について、別途割増賃金を支払う必要があります。
また、年俸制であること自体は残業代を支払わない理由とはならないため、年俸制の場合であっても、法定労働時間を超えて労働をした場合には、労働基準法上の例外(管理監督者にあたる場合等)に該当しない限り、時間外手当を支払う必要があります。

仕事から帰る途中、妻に頼まれて食料品を買いにスーパーに立ち寄ろうとしましたが、その途中で交通事故に遭い、大けがをしてしまいました。このような場合も労災保険給付の対象になるのでしょうか?

通勤途中の事故は、必ずしも業務上の災害ではありませんが、業務に従事することと密接不可分な関係にあるため、現在では労災保険給付の対象となっています。ただし、補償の対象となるのは、勤務地と住居を結ぶ合理的な経路上での事故に限られます。寄り道をして通常の通勤路から外れたところで事故に遭った場合には補償の対象とならない場合があります。ただ、日用品の購入など、一定の日常生活上必要な行為をなす上での事故の場合は、例外的に補償の対象になるものとされています。