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公益通報者保護特別委員会

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公益通報の具体例:入札談合(2016年8月号②)

 前回のコラムでは公益通報の対象となる具体例として、事業者による虚偽の広告・表示問題を取り上げましたが、今回は、入札談合の問題を取り上げたいと思います。

  国や地方公共団体が行う公共工事や公共調達における競争入札において、参加事業者の間で「意思の連絡」による価格調整が行われ落札価格をつり上げる、いわゆる入札談合が、独占禁止法上の違法行為であり、しばしば公正取引委員会によって摘発されていることは広く知られているところです。このような入札談合は、カルテルと共に独禁法上の「不当な取引制限」というものに該当する重大な違法行為であり、課徴金や刑事罰の対象となるのみならず、建設業法による営業停止処分、指名競争入札における指名停止、発注者との間の違約金条項、住民訴訟や株主代表訴訟等、一度発覚した場合には、様々なペナルティを受けるリスクがあります。それにも拘わらずこの種の行為の摘発は、頻々と発生しています。
 このような入札談合は、発注者である国・自治体に対して適正な発注価格を誤魔化して引き上げる行為であり、経済的観点だけからすれば詐欺・横領と変わりありません。その調整幅は本来の適正価格の5割以上と言われる事例も存在し、1回の受注調整だけでも国や自治体は多大な支出を強いられ、その財源となっているのは国民の税金ですから、引いてはその付けは国民・住民全体に回 されることとなります。
 入札談合は、有名大手事業者の多くが摘発されることも多く、かつては課徴金等のリスクと引き比べても談合を継続した方が経常的な利益に繋がるとの経営判断から企業ぐるみで確信犯的に反復継続してきたのではないかと見られる向きも少なくなかったと思います。しかし、平成17年独禁法改正による課徴金率の引き上げとリーニエンシー制度(談合参加事業者の中で公正取引委員会に自主申告した順に課徴金を減免する制度)の導入、刑事罰引き上げ、その他のペナルティ強化、入札談合等関与行為防止法改正による発注者側の処罰強化、公共工事に振り向けられる財源の縮小等、様々な要因によって、最早そのような時代ではなく、談合を行うことは各事業者にとっても引き合わない状況になっていることを認識すべきです。
 所属されている事業者が、公共工事、公共調達に参加している場合に、入札談合の徴候と受け取られかねない状況が存在すると考えられる場合には、事が重大になる前に社内の内部・外部の公益通報相談窓口を利用する、それでも状況が改善されない場合には、弁護士会の公益通報相談窓口を利用されることも可能です。

以上

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