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憲法出前講座ー憲法ってなんだろう

憲法出前講座―憲法ってなんだろう2010年5月に施行された憲法改正手続法(国民投票法)では、18歳以上の国民に投票権が認められています。中学生・高校生も近い将来、「日本国憲法」に向かい合うことになるかもしれません。その際、今の「憲法」が私たちの社会の中でどのような役割を果たしているのか、日本国憲法が世界の中でどのような特徴を持っているのか等を把握しておくことが重要です。
憲法は、私たち国民の誰もが持っている権利を、国家等から侵されることのないように守ってくれる防波堤です。また、法律は、他人の権利を侵害するような振舞いを制限して、みんなが快適に暮らせるようにするためのルールです。
すなわち、憲法は国民一人ひとりの自由を守るために、法律を作る国家権力を縛るものです。これに対し、法律は国民が際限なく自由に振舞うことで、他の国民の迷惑とならないよう、国民一人ひとりを縛るものなのです。

東京弁護士会の憲法問題対策センターでは、「憲法」の大切な役割を知ってもらうために、弁護士が直接出向いて「憲法」に関する様々な興味深いお話をする企画を実施しています。

講座のポイント

学習の視点

弁護士:憲法と法律はどう違うのかわかりますか?
生  徒:「はい、憲法は最高法規です」
弁護士:あ、よく勉強してますね、じゃあ、問題です!憲法を守らなければならないのは誰でしょう?
生  徒:「え?みんな守らないといけなんじゃ・・・あ、国民?」

これは私たちが行っている授業の一風景です。
憲法には国民の基本的人権が定められています。では、この人権を尊重し、守らなければならないのは誰でしょうか?国民でしょうか?いいえ違います。人権を尊重し、憲法を守らなければならないのは国家権力(立法、行政、司法)です。国家権力が国民の人権を侵害しないように、国を縛るルールが憲法。
国民の代表者(特に国会)は、法律を作ります。国民は法律を守らなければならない。しかし、国民の代表者も間違えることがあります。法律が少数者の人権を侵害してしまうことがあります。だから、憲法は、国や法律の上位にあり、その過ちを正すことができる最高法規とされています。
「最高法規」という言葉を単に覚えるのではなく、このような「立憲主義」、「法の支配」と言われる考え方を、生徒さん達に理解してもらうことを目標にしています。
なお、私たち弁護士の職業紹介の機会も兼ねているため、派遣された弁護士の経験した事件や普段の仕事、弁護士を目指したきっかけなどについても時間の許す限りお話しています。

取り扱うテーマ

生徒さんが憲法の大切さや人権の大切さを理解し、積極的に意見を出してもらうために、特に中学生以上のクラスでは、実際にあった事件(判例)を素材としてお話します。
また、「18歳選挙」では、生徒さんが主権者の一人として考える姿勢を養います。

講座の流れ

1コマ授業

希望のテーマについて、クラスにつき1名の弁護士が生徒さんとの対話形式の授業を行います。授業の最後に、生徒さんから色々な質問を受け付けて終了します。

2コマ授業

1コマ授業よりテーマについてじっくり討論できます。その後弁護士の仕事内容の紹介をします。ドラマとは違う実際の弁護士の話に、生徒さんが盛り上がることも。

講座の内容

1、ハンセン病事件

「私の母はハンセン病でした。母は強制入所となりましたが、入所の半年後に死亡しました。自殺と聞いております。私自身も痛みを感じ、母と同じ病気になったのかと恐れていましたが、病気のことだけは肉親にも打ち明けることができませんでした。病気を隠したまま戦地で死にたいと思い、二十歳の時に出兵しました。」これは、ハンセン氏病事件で証拠提出された原告の陳述書の一部を要約したものです。
国はハンセン病患者を強制隔離する法律を作りました。法律を作った当時から強制隔離の必要があるのかには異論があり、その後、この病気は発病率が低いことや早期発見と治療により完治する病気であることが明白になりました。しかし、法律は放置され、患者の強制隔離は続きました。
この法律を廃止しなかった国会に対し、裁判所は、何と言ったのか。憲法の大切さを学びましょう。

2、判例素材

「石に泳ぐ魚事件」(表現の自由,プライバシー権など)
小説を書く自由は表現の自由。でも、勝手に他人の人生をモデルに小説を書くのも自由?
「外務省秘密漏洩事件」(知る権利,報道の自由など)
新聞記者が国家公務員法違反で逮捕される。でも、取材をして真実を突き止めたら逮捕?
「芝信金昇級昇格差別事件」(平等権)
男性社員と女性社員で、昇進昇格に差があるのは、差別じゃないですか?
「朝日訴訟事件」(生存権)
こんな生活で本当に「健康で文化的な最低限度の生活」って言えるのかな?
「自衛隊イラク派遣事件」(憲法9条)
航空自衛隊が人道支援のためイラクに派遣されました。実は、イラクで武装した外国の軍隊を航空機で輸送していました。日本の自衛隊も外国の軍と一緒になって戦争したことにならないのかな?

さらに、「婚外子相続差別事件」(平等権)、「愛媛玉串料事件」 (政教分離) など多数。

3、18歳選挙と選挙権の大切さ

初めての選挙を迎えた高校生のA君。テレビで話す候補者の話を聞いて、ツイッターでツイート。
「あの候補者、テレビでこんなことを言ってたぜ、こんなやつに絶対入れたくない」
このA君のインターネットでの書き込み、大丈夫でしょうか?
この授業では、選挙のルールについて勉強します。
ただ、選挙のルールを学ぶためには、選挙が民主主義を実現するために、不可欠の制度であることを知らなければなりません。そして、憲法がなぜ民主政を保障したのか、国民一人一人に選挙権を保障したのかを学ぶ必要があります。
外国籍の学生には選挙権が与えられていないことにも目を向けてみましょう。
憲法と選挙について学ぶことは国や社会について自分で考えるという意識を促す機会となるでしょう。

お申込み方法

年間を通じて受け付けています。
ご希望の方は、開催希望日の2ヶ月前までに、申し込み用紙をダウンロード・印刷し、必要事項をご記入のうえ、下記送付先までFAXでお送りください。後ほど、こちらからご連絡をさせていただきます。

所要時間・費用

時間配分は1コマ、2コマ等(50分~120分)、ご要望に応じます。
費用は、交通費等を含めて無料です。

お問い合わせ

東京弁護士会(広報課内)法教育総合センター担当

  • TEL03-3581-2251
  • FAX03-3581-0865