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東京都議会で可決 - 裁判官増員に関する意見書

【東弁新聞 1998/10/20 日付 00282 号 01面 C】

 東弁は本年5月28日の定時総会において、東京地方裁判所と東京高等裁判所の裁判官の増員を求める決議をした。
この決議を国民的な広がりを持った運動とするために、東京都議会をはじめ区・市議会に対して裁判官の増員を求める決議を要請する陳情を行った。その結果、都議会は本年9月28日、左記の「東京地方裁判所及び東京高等裁判所の裁判官の大幅増員に関する意見書」を満場一致で可決した。また中野区議会でも、9月25日、同旨の意見を採択した。

東京地方裁判所及び東京高等裁判所の裁判官の大幅増員に関する意見書
東京都議会意見書採択についての会長談話



東京地方裁判所及び東京高等裁判所の裁判官の大幅増員に関する意見書

平成10年9月28日
東京都議会議長 田中晃三

我が国の裁判は、時間がかかり過ぎ、当事者の言い分を十分に聴取してくれないと指摘されて久しい。その大きな原因は、裁判官が不足していることにある。
平成10年1月に施行された新民事訴訟法は、裁判の適正かつ迅速化と国民に利用しやすく、分かりやすい裁判という理念を掲げているが、この理念も、裁判官をはじめとする裁判所職員の増員、法廷等の増設がなければ、実現は困難である。
東京都においては、特に民事部裁判官の不足が深刻である。本年5月には、東京弁護士会が裁判所当局に対し、東京地方裁判所本庁民事部裁判官64名、同八王子支部民事部裁判官8名、東京高等裁判所民事部裁判官28名の緊急増員を求めている。
社会の複雑・多様化、高度化、国際化が進んでいる中で、透明なルールと自己責任の理念そして人権の擁護が求められており、司法は21世紀の我が国の基本的インフラである。この視点から、現在、司法の改革を求める声が、各界から高まっている。今こそ最高裁判所は、司法を市民に身近で、利用しやすく、納得のいくものにするために、裁判官の大幅増員をはかるべきである。
よって、東京都議会は、政府に対し、都民の適正かつ迅速な裁判を受ける権利を保障するため、東京地方裁判所及び東京高等裁判所の裁判官の大幅増員を図るよう強く要請する。
以上、地方自治法第99条第2項の規定により意見書を提出する。

内閣総理大臣
法務大臣
自治大臣 あて



東京都議会意見書採択についての会長談話

1998年10月1日
東京弁護士会 会長 二 宮 忠

 東京都議会本会議は、平成10年9月28日、「東京地方裁判所及び東京高等裁判所の裁判官の大幅増員に関する意見書」を満場一致で採択した。
この意見書は、時間がかかりすぎるうえ当事者の言い分を十分に聴いてくれないなど裁判所への市民の不満を耳にしている都議会議員が、市民の声の代弁者として、法的紛争の適正・迅速な解決、人権侵害からのすみやかな救済を図る裁判所の実現を求め、わが国の司法のあり方について積極的な提言をしたという点で画期的であり、かつ、都道府県レベルの議会としては、全国で初めてという点で先駆的なものである。
市民に身近で利用しやすく納得のいく司法をつくるため、かねてから、裁判官をはじめとする裁判所の人的容量および物的施設の拡充を求めてきた当会は、今回の東京都議会の意見書採択に、深甚な敬意を表するとともに、これを機に、さらに一層市民の声に耳を傾け、司法の改革運動をすすめていく決意である。