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被害者等審判傍聴規定の新設を含む法制審要綱についての会長談話

2008年02月13日

東京弁護士会 会長 下河邉 和彦

 本日法制審総会が採択した少年法「改正」要綱(骨子)における被害者等審判傍聴規定の新設には、少年法の理念と目的に照らし問題があり、このままでの法案化には強く反対する。
問題の第1は、被害者等による傍聴を許す家庭裁判所の判断基準を「少年の年齢及び心身の状態、事件の性質、審判の状況その他の事情を考慮して相当と認めるとき」としている点である。これでは、少年の更生の観点からは相当とは言えない場合でも、被害者等の申出により、裁判長が審判傍聴を許すという運用になりかねない。その結果、傍聴している被害者等に影響されて審判が刑事裁判的な運用になり、少年審判の教育的・福祉的機能が損なわれるおそれがある。
したがって、このような判断基準で被害者の傍聴を許す制度の創設は行うべきではない。とりわけ、被害者等の傍聴による萎縮可能性が一般的・類型的に高い低年齢の少年、少なくとも14歳未満の少年の事件については、傍聴の対象から除外すべきである。また、「被害者を傷害した場合にあっては、これにより生命に重大な危険を生じさせたときに限る」との要件は、傍聴の対象事件を限定する趣旨であることは理解できるが、現実の運用において限界が不明確であるから、さらに明確な要件にすべきである。
第2に、記録の閲覧・謄写を認める要件を緩和することは賛成であるが、閲覧・謄写の対象範囲を、法律記録の少年の身上経歴などプライバシーに関する部分についてまで拡大することは、少年の更生に対する影響からみて問題であるから、対象範囲から除外すべきである。
被害者等の権利保障のために今なすべきことは、各関係機関が被害者等に対し、2000年少年法「改正」で導入された、被害者等による記録の閲覧・謄写(少年法5条の2)、被害者等の意見聴取(少年法9条の2)、審判の結果通知(少年法31条の2)の各規定の存在をさらに丁寧に知らせ、これを被害者等が活用することができる支援体制を整備することであり、あわせて、犯罪被害者に対する早期の経済的、精神的支援の制度、および国費による被害者代理人制度を、すみやかに拡充ないし新設すべきことである。
当会は、今後も、これら被害者等の権利保障のための諸施策の推進と少年法の理念・目的の実現に引き続き努める所存である。