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消費者庁および消費者委員会の人事に関する会長声明

2009年08月10日

東京弁護士会 会長 山岸 憲司

 本年5月29日、消費者庁関連3法が成立し、消費者庁および消費者委員会の設立が実現することとなった。消費者の利益の擁護及び増進を目的として、消費者行政の司令塔として機能する消費者庁と独立した第三者機関として消費者行政全般に関する監視機能を有する消費者委員会が設置されたことは、従来の産業育成中心の行政からのパラダイムの転換として極めて画期的であり、当会も本年6月8日付の会長声明のとおりこれを高く評価するものである。
ところで、消費者庁および消費者委員会が上記の設立の趣旨に従い機能するかは、この組織を担う方の人選によって決まる。特に、その長に誰が就任するかは極めて重要である。両組織の設置の趣旨からすれば、消費者庁長官および消費者委員長は、両組織の職責の意味を十分に理解するとともに、消費者問題を扱った経験が豊富で、真に消費者の目線から消費者行政に取り組むことができる人材でなければならない。そうでなければ、国会で長時間にわたって審議し、全会一致で成立した法の趣旨が、実質的に著しく損なわれる結果となる可能性がある。
消費者委員会は、従来の諮問型審議会とは全く異なるものであって、消費者目線から消費者行政を監視する重大な職責を担った組織であり、同委員会が消費者庁に並立し、監視機能を十分に発揮して初めて真に消費者のための行政が実現できる。従って、同委員会を構成する委員も、各界からバランス良く選任するなどという手法を採るべきではないし、産業界の利益代表や消費者問題を統計的に発生させてきた事業分野との関係がある者、消費者問題への関わりが薄い者なども選任されるべきではない。
また、消費者委員会の委員長は、法律上委員の互選により選任されるのであり(設置法12条)、政府が消費者委員会の意向を無視して適任者を予め示唆して委員会を主導することはあってはならず、その選任過程は透明である必要がある。
更に、今般、本年8月30日に実施される衆議院選挙の結果に基づいて新内閣が発足する運びとなったが、その発足直前に現内閣が消費者庁・消費者委員会という極めて重大な組織の人事について決断を下すことは拙速と言わざるを得ない。衆議院選挙の結果も踏まえ、新内閣発足後に国民の意見を十分反映させたうえで選任がなされるべきである。
以上のとおりであるから、当会は、政府に対して、次の点を求める。
(1) 消費者庁長官および消費者委員は、両組織の職責の意味を十分に理解するとともに、消費者問題を扱った経験が豊富で真に消費者の目線から消費者行政に取り組むことができる人を選任されたい。
(2) 消費者委員長の選任は、政府主導で人選がなされるのではなく、透明性をもって委員の互選のもとに行われるべきである。
(3) 消費者庁長官および消費者委員の選任については、拙速に陥ることなく、新内閣発足後に、国民の意見を十分反映した上で慎重にされたい。