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生存権裁判東京高裁判決に関する会長声明

2010年05月27日

東京弁護士会 会長 若旅 一夫

 本年5月27日、東京高等裁判所は、都内に在住する70歳以上の生活保護受給者が、その居住する自治体に対して、生活保護の老齢加算の廃止に伴う保護変更決定処分の取消を求めた訴訟において、原告らの請求を棄却した1審判決を支持し、原告らの控訴を棄却した。

 そもそも生活保護は、生活に困窮するすべての国民に対し、必要な保護を行い、健康で文化的な生活水準を維持することができる最低限度の生活を保障するものであり、憲法25条を具体化するものである。

 生活保護の基準は、最低賃金を始め、医療・福祉・税金などの多様な施策の適用基準にも連動しており、これを引き下げることは、低所得者層の生活に甚大な影響を与え、格差と貧困を一層拡大させることになる。

 日本弁護士連合会は2007年12月4日、生活保護基準が国民の生存権保障の水準を決する極めて重要なものであることから、これを安易かつ拙速に切り下げることには強く反対し、当会も2007年11月19日付「拙速な生活保護基準の引き下げに反対する声明」において、わが国の生活保護の捕捉率が極めて低く、生活保護基準以下の収入で生活する世帯が多数存在する中で、生活保護基準を引き下げれば低所得者層の生活に甚大な影響を与えることについての危惧を表明した。

 今般の東京高等裁判所の判決は、昨年12月生活保護の母子加算が復活したにも関わらず、行政による生活保護基準切り下げを容認するものであることから、今後も特に、高齢世帯において、貧困と格差の拡大が強く憂慮されるところである。

 当会は、憲法25条の生存権保障の趣旨に照らし、引き続き生活保護基準の切り下げに反対するとともに、真に生存権を実現するために会を挙げて努力する所存である。