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憲法審査会の始動に当たっての会長声明

2011年11月08日

東京弁護士会 会長 竹之内 明

本年10月20日、衆議院及び参議院において各憲法審査会の委員が選任され、翌21日には第1回の会合が開催されて、会長、幹事が選出された。

当会は、憲法改正国民投票は、主権者である国民がわが国の最高法規である憲法のあり方について直接意見を表明するという国政上の重大問題であることに鑑み、国民の意思が的確に反映されるような手続でなされるべきであるとし、憲法改正手続法について、法案段階から多くの問題点を指摘してきた。

また、同法が成立した2007年5月14日に「憲法改正手続法案の成立についての声明」を発表し、(1)最低投票率の規定がないため、少数の投票者の意思により憲法改正が行われるおそれがあること、(2)改正案の発議について「内容において関連する事項ごと」に区分して行うとされているが、どのような場合に内容において関連するのかの基準が曖昧であり、国民の意思が正確に反映される投票方法となっていないこと、(3)公務員及び教育者の国民投票運動が規制されていることは、国民が広く憲法改正の議論をすることについて萎縮効果を与えること、(4)改正案の発議から投票までの60日以上180日以内という期間は、国民が十分に情報を得て議論を尽くすには短かすぎること、(5)メディアの報道や有料広告のあり方についても十分な審議が尽くされていないこと等、多くの重大な問題点をはらんでいることを指摘するとともに、同法が十分な審議を経ていない不十分なものであることは、参議院憲法改正に関する調査特別委員会において18項目にも亘る附帯決議がなされたことからも明らかであることを指摘し、同法の抜本的な見直しがなされることを強く要請した。

さらに、2010年4月16日の「憲法改正手続法の施行延期を求める会長声明」では、同法附則で、選挙権を有する者の年齢に関する公職選挙法、成年年齢に関する民法その他の法令、公務員の政治行為の制限に関する国家公務員法、地方公務員法その他の法令について「同法が施行されるまでに必要な法制上の措置を講ずるものとする」とされ、前記附帯決議において、特に成年年齢、最低投票率、テレビ・ラジオの有料広告規制の3点については「本法施行までに必要な検討を加えること」とされたにもかかわらず、附則及び附帯決議が求めている検討がほとんどなされておらず、必要な法制上の措置が講じられていない状況の下、同法の施行は延期されるべきことを求めた。

以上のような多くの問題点の抜本的見直しがなされないままに、同法が2010年5月18日に完全施行され、かつ、この度、各憲法審査会において委員が選任されて、第1回の会合が開催されたことは誠に遺憾である。

当会は、あらためて憲法改正手続法の抜本的見直しを求め、これがなされないままに憲法改正の審議がなされることに強く反対する。