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大阪市のアンケートの実施に反対する会長声明

2012年02月15日

東京弁護士会 会長 竹之内 明

大阪市は本年2月9日,市職員宛てに政治活動・組合活動等についてアンケートを実施した。このアンケートは,回答者に実名を記載させるものであり,市長はこのアンケートにつき,業務命令として職員に回答を義務づけるものであって,正確な回答をしない場合には処分の対象となりうることも表明している。
本アンケートの内容は,組合活動や政治活動への参加歴,これらの活動への参加を勧誘した者の氏名,組合活動や選挙運動に関する意見等の回答を求めるものであり,更に,前記勧誘者の氏名については,回答を義務づけない一方で無記名での通報を勧誘している。

このように,職員らに対し組合活動や選挙運動に関する意見等の回答を強いることは,職員らの内心の自由を著しく侵害するものであり,断じて許されるものではない。

また,同アンケートが,組合活動に関して市が職員にその参加歴等を問い,業務命令をもって実名での回答を義務づけることは,憲法の保障する労働基本権に対する著しい侵害である。公務員に対する労働基本権の制限の合憲性については周知の通り古くから疑問が提示されているが,大阪市の本アンケートは,一般の公務員について異論の余地なく承認されている団結権までをも明らかに侵すものであるといわざるを得ない。

更に,政治活動への参加歴の告白など政治的行為についてのアンケートに回答を強制することは,政治活動の自由に対する許された限度を超えた制約である。まして,地方公務員法においても政治的行為を行なった地方公務員に対する罰則が用意されていないことを考えれば,本アンケートは明らかに過度に広範な制約である。

加えて,勧誘者の氏名の通報を勧誘することは,労働基本権及び政治活動の自由の行使に対する深刻な萎縮効果をもたらすものであり,労働者間の連帯を断ち切り孤立化させたり,本来許されるべき活動についてまで事実上の制約を課したりするものであり,これもまた到底看過できない。

本アンケートはこのように幾重にも憲法上の問題があるものであり,広範かつ重大な人権侵害を伴う。橋下徹大阪市長が,このようなアンケートに対する回答を,職員全員に強要することは,公務員の人権を侵害するものであり到底容認できない。

したがって,当会は,大阪市に対し,このような重大な人権侵害を伴うアンケート調査を,直ちに中止することを求めるものである。