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裁判員法施行3周年にあたっての会長談話

2012年05月21日

東京弁護士会 会長 斎藤 義房

本日、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(いわゆる裁判員法)が施行されて満3年が経過し、同法附則による裁判員法の検証時期を迎えた。

この間、裁判員や補充裁判員を務めた市民が3万人に達しようとしている。裁判員経験者の声からは、裁判員裁判で市民自らが犯罪そのものと向き合って犯罪の背景や要因を考え、再犯防止のために求められているものが何かを考える契機となっていることが伺える。 

また、裁判員裁判が始まったことにより、直接主義・口頭主義の実質化が推進され、これまでの供述調書に頼っていたいわゆる調書裁判が公判中心主義に移行しつつあり、無罪推定の原則など刑事裁判の原則が尊重される傾向が現れている。

当会においては、裁判員制度の普及のために、中学校や高等学校における裁判員裁判の模擬評議等を主催するなどの法教育を実践してきた。あわせて、裁判員裁判における弁護活動の研修に取り組むとともに、実際の裁判員裁判の情報収集とその検証作業、裁判員経験者との交流会の開催など、よりよい制度への改革に向けた取り組みを続けている。 

これからの刑事司法改革の課題としては、①公訴事実等に争いのある事件で被告人側の請求がある事件も裁判員対象事件に加えること、②公判前整理手続における全面的証拠開示の実現、③裁判員非対象事件についても被告人側に公判前整理手続に付すことの請求権を認めること、④裁判員の守秘義務を緩和すること、⑤市民が裁判員や補充裁判員として参加する際の心理的負担軽減のために適切な措置、⑥より充実した公判審理を実現するために被疑者段階から複数名の国選弁護人を選任すること、⑦死刑の判断は全員一致を要件とすること、⑧被告人が少年である場合の公判審理のあり方、⑨検察官控訴の禁止、などが挙げられている。

当会は、今後とも、これらの活動を継続しつつ、よりよい刑事司法を実現するために、3年後検証を踏まえた裁判員法の改正及び刑事訴訟法の改正に向けて、尽力する所存である。