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弁護人の接見交通権侵害を理由とする国家賠償請求訴訟についての会長談話

2012年10月12日

東京弁護士会 会長 斎藤 義房

本日、東京地方裁判所において、当会会員が、接見交通権に対する違法な侵害がなされたことを理由とする国家賠償請求訴訟を提起した。

この事件は、2012年3月30日、当会会員が、東京拘置所において、弁護人として健康状態に異常が認められる被告人と接見をしていた際に、東京拘置所の職員により、面会室内で写真撮影をしたことを理由に、その接見及び写真撮影・録画を中断させられ、強制的に被告人との接見を中止させられたというものである。

本件国家賠償請求訴訟では、接見交通権の内実とその制約の根拠が問われている。

弁護人の接見交通権は、憲法34条の被疑者・被告人の弁護人の援助を受ける権利を保障する刑事手続上最も重要な権利である。

そして、刑事訴訟法39条1項にいう「接見」は、身体を拘束された被疑者・被告人と弁護人との間の口頭でのコミュニケーションが中核となるにしても、それにとどまるものではない。

接見状況の録音、写真撮影・録画(以下「写真撮影等」という。)は、接見時の被疑者・被告人に関する情報の取得行為にほかならず、その点において、被疑者・被告人の口頭での陳述を聴取り、その内容を筆記すること、あるいは弁護人が接見時に知覚した被疑者・被告人の外観上の特徴を筆記することと同じである。

このように接見交通権は、単なる面会にとどまらず、接見室でなしうる弁護活動上必要な活動を当然に行い、これによって被疑者・被告人の防御権を十分に保障する内実を持つ。そして、それが公平な裁判の実現に資するのである。

他方、弁護活動の一環としての写真撮影等を禁止する法令上の規定は存在しない。

当会としても、2012年7月31日には、日本弁護士連合会、関東弁護士会連合会、第一東京弁護士会及び第二東京弁護士会と共同して、東京拘置所における弁護人の接見に際し、面会室内での写真撮影等の禁止などの不当な制限を加えないことを申し入れているところである。

当会としては、今後の裁判において、接見交通権が刑事手続上最も重要な権利であり、施設管理権によって、憲法及び刑事訴訟法上保障されている弁護活動を制限することができないことが確認されることを望むものである。