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1票の較差をめぐる最高裁大法廷判決に関する会長声明

2013年11月21日

東京弁護士会 会長 菊地 裕太郎

 2013年11月20日、最高裁判所大法廷は、2012年12月16日に施行した衆議院議員総選挙について、選挙区間の投票価値の較差が当時最大で2.425倍に達したことをもって、憲法の投票価値の平等に違反することを認めたものの、「憲法上要求される合理的期間内に是正がされなかったものということはできない。」「本件区割基準規定及び本件区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできない。」旨の判決を言い渡した。
 本判決に先立ち大法廷は、2011年3月23日、第45回総選挙において投票価値の不平等を認め、その主要因である1人別枠方式を含む抜本的改正を求める判決を示していた。しかし国会は、今回の選挙が施行されるまでのおよそ1年9か月間、抜本的改正はおろか、定数調整すら行わずに選挙が施行された。2011年判決が何ら活かされずに行われた選挙であるだけに、選挙無効の可能性を含めて判決が注目されていた。
 本判決が、投票価値の較差が違憲状態にあることを認めたことは、2011年判決と同様であり、当然である。しかし、合理的期間が経過していないとする点にはにわかに賛成しかねる。たしかに、この間、未曾有の東日本大震災に対応する必要があったことは否めない。しかし、実際の国会では、2011年判決が求めた新しい選挙区割りとは無関係の定数削減論を絡めた選挙制度改革の議論を始めたことにより紛糾し、結果的に、制度の抜本的改正はもちろん、0増5減の定数調整すら、2016年の総選挙まで持ち越されたのである。
 本判決のような合理的期間論は、違憲の選挙を有効とするものであり、合理的か否かの確たる基準をもたない尺度を緩やかに認定すれば、憲法の規範力を貶め、憲法の最高法規性(98条1項)ないし立憲主義は画餅に帰していく。そもそも、投票価値の是正は、国会議員の身分が絡む問題だけに、国会内部で治癒することを期待することは極めて困難であり、最高裁判所がメスを入れ、解決の道筋を照らすべきだったのである。かかる意味から本判決は、憲法保障機能を十全に果していないといわざるを得ない。
 当会は、国に対して、既に合理的期間が経過したとの前提に立ち、0増5減のような弥縫策ではなく、一刻も早く1人別枠方式を実質的に廃止する内容の選挙区割りに改め、1票の価値の較差をできるかぎり1倍に近づけるよう求めるものである。