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教育委員会制度改革に関する会長声明

2014年03月24日

東京弁護士会 会長 菊地 裕太郎

 政府与党は、今国会に教育委員会制度の改革を目指して、地方教育行政法の改正案を提出しようとしている。
 教育委員会制度の改革内容については、中央教育審議会の教育制度分科会が、2013年12月の答申(「今後の地方教育行政の在り方について」)において、本案と別案の二つの改革案を答申し、方針を絞りきることができなかった程難しく慎重を要するものである。それにもかかわらず、政府与党案は、現行の教育委員長と教育長を一本化した新「教育長」を置き、首長にその任免権を与える(新「教育長」の任期は3年に短縮)、そして首長が主宰する常設機関として「総合教育会議」を設置し、同会議において教育行政の大綱的方針を決定するなど、自治体の首長が教育行政の中身に直接関われる制度にするものである。また、教育委員会は教育行政の執行機関として残すものの首長や新「教育長」の権限が強化されたことから相対的にその発言力は弱まる恐れがある。

 しかし、これらの改革案については、改革の必要性を裏付ける立法事実が存在するかの検証が十分になされていない。緊急事態に対応できなかったと批判されたいくつかの教育委員会の例をことさら強調するのではなく、広く全国の都道府県、市区町村の教育委員会の実態を把握しなければ、改革の真の必要性は不明と言わざるを得ない。
 また、教育に関する大綱的な方針の策定権限を首長に与えることは、憲法・教育基本法が守ろうとしている教育の政治的中立性や教育の自主性・自律性を損なうことにもなる。教育が国家に管理統制されたり、政治の介入によって偏向することの危険性は、我が国の戦前の軍国主義教育の例からも明らかである。当会は、教育が不当な支配に服することがあってはならないという、戦後我が国が、憲法及び教育基本法に基づいて、最も大切にしてきた教育行政の根本理念を覆すような改革には反対である。
 当会としては、改革の必要性についてのより明白な立法事実の存否について検証を行い、仮に改革が必要であっても上記のような権力が容易に教育に介入できるような制度とならないよう慎重な審議を求めるものであり、拙速な法制化には反対する。