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北星学園大学及びその教員らに対する脅迫行為等に関する会長声明

2014年10月23日

東京弁護士会 会長 髙中 正彦

   札幌市厚別区所在の北星学園大学に対し、平成26年3月以降、同大学の教員が朝日新聞の記者時代に従軍慰安婦に関する記事を書いたことを理由に、この教員を解雇ないし退職させるよう要求する電話やファックスが繰り返し送りつけられており、特に同年5月及び7月には、要求に応じないと学生に危害を加える旨の脅迫文書が届くなどの異常な事態に至っている。さらに、インターネット上には、同教員の家族に関する情報が、実名や顔写真入りで掲載され、脅迫的文言が書き込まれている。
   これらの行為が刑法上の脅迫罪等を構成する犯罪であることは言うまでもないが、それらが大学の所属学生の生命・身体に対する危害を予告しつつ大学の所属教員の解雇等を迫る点において大学の自治を根底から脅かすものでもある。同時に、それが、民主主義の根幹をなすが故に憲法上最も重要な権利とされている表現の自由に対する暴力的な攻撃である点において、到底看過できない重大な問題を孕んでいる。しかもその攻撃は、元記者個人にとどまらず、その家族のプライバシーに対してまで向けられている点において、きわめて悪質である。
   一般に、報道に不正確な点や誤りがあったとしても、その是正は、言論による健全かつ適正な批判や報道機関の自浄作用に委ねるべきであり、犯罪的な手段によることは断じて許されるものではない。
   そして、このような表現の自由に対するあからさまな攻撃は、表現の自由を損ない委縮させるものであって、その蔓延を許せば、健全な情報流通を阻害し、ひいては民主主義をも崩壊させかねないというべきである。
   当会は、匿名でこれら一連の人権侵害行為を実行してきた者に対して卑劣な行為を直ちに中止するよう求め、合わせて一刻も早く犯罪行為としての摘発を含む然るべき法的措置が執られ、民主主義社会への挑戦行為を終息させるよう関係各機関の迅速な活動を求めるものである。
   また、当会は、この間同大学が違法行為に対して毅然たる態度で臨んでこられたことに敬意を表し、引き続き大学の自治を守る姿勢を堅持されるよう期待するとともに、今後とも、このような違法な人権侵害行為や憲法秩序に対する挑戦を抑止、根絶する活動に取り組んでゆくものである。

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