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夫婦同氏強制及び再婚禁止期間等の民法の差別的規定の早期改正を求める会長声明

2015年03月02日

東京弁護士会 会長 髙中 正彦

 夫婦同氏を強制する民法第750条が憲法及び女性差別撤廃条約に違反するとして男女5人が国に対して損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第三小法廷は、本年2 月18日、審理を大法廷に回付した。また、女性だけに離婚後6カ月間の再婚禁止期間を定める民法第733条が違憲であるとして女性が国に損害賠償を求めた訴訟の上告審についても、同日、第三小法廷が審理を大法廷に回付した。
 民法第750条が定める夫婦同氏強制のもとでは、夫婦は、婚姻に際し夫または妻のどちらか一方の氏を選択しなければならない。これにより、96.17%の夫婦において妻が改氏するという異常な実質的不平等が生じている上(2012年厚生労働省人口動態統計)、改氏を余儀なくされることにより生じる不利益は甚大である。氏名は個人として尊重される基礎であり、人格の象徴として人格権の一内容を構成するものであるから(最高裁昭和63年2月16日判決)、自己の生来の氏が婚姻後使用できなくなることは、明らかな人権侵害である。
 また、民法第733条が女性にのみ課している待婚期間は、主に父子関係の確定のための規定とされるが、夫婦や家族のあり方が多様化した今日の実情にそぐわないばかりか、科学技術の発達により親子関係の確定が容易になったことから、もはやその必要性も大きく減退している。女性のみに6カ月間もの待婚期間を要するのは、女性に対する不合理な差別である。
 法制審議会は、1996年に「民法の一部を改正する法律案要綱」を総会で決定し、男女とも婚姻適齢を満18歳とすること、女性の再婚禁止期間の短縮、選択的夫婦別氏制度の導入、及び、婚外子と婚内子の相続分を同等とすることを答申し、また、2010年にも上記要綱と同旨の法律案が法務省により準備された。また、国連の自由権規約委員会、女性差別撤廃委員会、児童の権利委員会及び社会権規約委員会は、日本に対し、差別的規定の改正について重ねて勧告等を行ってきた。
 以上にもかかわらず、国会は、婚外子の相続分を婚内子の相続分の2分の1と定めた民法第900条4号ただし書前半部分の改正を行ったのみで、それ以外の差別的な規定については放置している。夫及び妻に同一の性を選択する権利を保障するために、選択的夫婦別氏制度を採用し、再婚禁止期間については見直すことを内容とする民法改正が必要である。すでに、女性差別撤廃条約の批准から29年が経過しており、国会が上記各差別的規定を放置することは許されない。
 当会は、差別的な上記各規定の改正を多年にわたり求めてきた(2007年9月10日「民法第772条の改正を求める意見書」2010年3月4日「民法(家族法部分)の早期改正を求める会長声明」2013年9月5日「民法(家族法)の改正を求める会長声明」など)。夫婦同氏を強制する民法第750条及び女性だけに離婚後6カ月間の待婚期間を定める民法第733条の違憲性等を問う上告審の審理が大法廷に回付された今、当会は、国会が、両規定を含む民法の差別的な各規定を改正するよう、強く求めるものである。

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