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接見室での写真撮影に関する最高裁決定に対する会長談話

2016年06月22日

東京弁護士会 会長 小林 元治

 本年6月15日、最高裁判所第二小法廷は、当会会員が、接見妨害を理由に提訴していた国賠訴訟について、上告及び上告受理申立を退ける決定をした。
 この事件は、2012年3月30日、当会会員が、東京拘置所において、弁護人として、健康状態に異常が認められる被告人と接見をしていた際に、東京拘置所の職員により、面会室内で写真撮影をしたことを理由として、その接見及び写真撮影・録画を中断させられ、強制的に被告人との接見を中止させられたというものである。

 昨年7月9日、東京高等裁判所第2民事部は、東京地裁民事第39部が言い渡した一部認容判決を取り消し、一審原告の請求を棄却する旨の判決を行ったものであり、本最高裁決定は同判決を維持したものである。
 接見交通権は、憲法第34条が保障する被疑者・被告人の弁護人の援助を受ける権利の中核ともいうべき刑事手続上最も重要な権利である。高裁判決は、「接見」を「面会」ということのみに限定し、接見室内での写真撮影は「接見」に当たらないとし、メモのような情報記録化のための行為についても、広範な制約を認め、国家権力が庁舎管理権に基づき施設内の規律と秩序を守るという名目で接見交通権を侵害することを認めるに等しい決定であった。このように本件では、憲法第34条が保障する弁護人依頼権の中核をなす「接見交通権」の内実が問われ、その解釈が国民の人権に直接かつ重大な影響を及ぼすものであったのであるから、最高裁は「憲法の番人」として「接見交通権」の内実について明確な判断を示すべきであった。
 ところが、本最高裁決定は、接見交通権や正当な弁護活動の侵害といった重要な論点を含むにもかかわらず、憲法判断を示さなかったばかりか、過去の最高裁判例と相反する判断の有無及び法令の解釈に関する重要な事項を含まないとして、上告受理申立も退けたものであり、極めて不当な決定といわざるを得ない。

 当会は、弁護人が被疑者・被告人との接見の際に、弁護活動上必要がある場合に、写真撮影・録画を行うことは、接見交通権として保障されるべき行為であることをあらためて表明し、関係各機関に対し弁護人と被疑者・被告人との間の自由な接見交通を保障することを強く求める。

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