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法務省勉強会の取りまとめ報告書を受けて、改めて少年法の適用年齢引下げに反対する会長声明

2017年01月24日

東京弁護士会 会長 小林 元治

 昨年12月20日、法務省は「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」の取りまとめ報告書(以下「報告書」という。)を公表した。これは、2015年9月7日に自由民主党政務調査会が提出した「成年年齢に関する提言」を受けて開催された法務省主催の勉強会の議論状況をまとめたものである。
 報告書では少年法の適用年齢を現行の20歳未満から18歳未満へと引き下げることについては賛否両論があるとし、方向性を示してはいない。しかしながら、少年法の適用年齢を18歳未満へ引き下げた場合の「若年者」に対する刑事政策的措置については、かなりの紙幅を割いて検討を加えており、本年2月に諮問されると報道されている法制審議会において、少年法の適用年齢引下げを前提とした議論が進む懸念は否定できない。
 一方、18歳、19歳の実態に目を向けると、高卒で就職する者の比率は低下し、18歳になっても多くは親に扶養されるなど、少年たちは、真に自立した社会人になっているとはいえない。また、非行少年たちは、18歳、19歳を含め、生育環境や資質・能力にハンディを抱えている者が多い。
 さらに、科学的な見地からも、脳の発達が20歳代半ばまで続くという脳科学の知見に照らすと、18歳、19歳の者は、まさに、未成熟で発達の途上にある可塑性が高い存在であって、罪を犯したことについて成熟した大人と同じように非難し、責任を負わせるべきではなく、処遇・教育の効果が特に期待できると考えられる。
 そのような少年たちが更生し、社会に適応して自立していくためには、20歳未満の者が犯したすべての事件を家庭裁判所に送致し(全件送致主義)、家庭裁判所調査官や少年鑑別所による科学的な調査と鑑別の結果を踏まえ、少年に相応しい処遇を決する現行少年法のきめ細やかな福祉的・教育的な手続が必要である。実際のところ、現行少年法の有効性については、今回の勉強会で出された有識者の意見を含め、ほぼ異論がないところであった。
 したがって、今後「若年者」に対する刑事法制の在り方を検討する場合にも、少年法の適用年齢の引下げを前提とすることなく、あくまで20歳以上の若年成人を対象とした検討を行うべきである。
 当会は、2015年6月12日に「少年法の『成人』年齢引下げに反対する会長声明」を発表しているが、報告書の公表を受け、改めて少年法の適用年齢引下げに反対する。
 そして、この適用年齢の引下げが多くの子どもたちと子どもたちを育てる大人にとって重要な問題であることをさらに分かり易く社会に伝えるべく全力を尽くす所存である。

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