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弁護士報酬の敗訴者負担制度に反対する会長声明

2001年05月23日

東京弁護士会 会長 山内 堅史

 司法制度改革審議会は、中間報告に引き続き2001年5月21日公表された最終意見書(案)においても、弁護士報酬の訴訟費用化(敗訴者負担)制度を導入する方針を明らかにした。
しかしながら、この方針は、国民の正当な権利行使を著しく困難ならしめる極めて特異な制度改革であり、同審議会が21世紀における身近で利用しやすい、あるべき司法の実現を目指して、さまざまな改革方針を果敢に打ち出している中にあって、突出した違和感を持たざるを得ず、当会としては到底これを認めることはできない。
最終意見書(案)は、その導入の理由について「裁判所へのアクセスを拡充する見地から」としている。しかし、敗訴者負担制度を導入すると、正当な権利の行使であることを確信している場合でも、証拠上相当の勝訴見込が立たない限り訴訟の提起を躊躇することは、ほとんど自明の理であって、国民の裁判所へのアクセスを妨げる結果となることは明白である。
まして、証拠の事前収集制度が極めて不十分なわが国の法制下においては、経済的弱者といわれる人々に対する訴訟への萎縮効果は著しいものがある。
さらに一般訴訟事件のみならず、消費者・公害環境・行政・労働などの訴訟事件、あるいは政策形成型の訴訟事件などについての訴訟抑制効果は深刻であって、わが国の法律制度の進展を大きく阻害する結果となりかねない。
最終意見書(案)は、一部の訴訟類型について一定の配慮をするとはしているが、そのような部分的な手当によって、敗訴者負担制度の導入に伴う弊害を除去し去ることはできない。
諸外国の中には、敗訴者負担制度を導入している例もあるが、導入の前提となる法制度や法文化を異にしているわが国に、直ちに妥当するものではない。
よって、当会は、弁護士報酬の敗訴者負担制度の導入に強く反対する。