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学校教育法「改正」法案に関する会長声明

2001年06月12日

東京弁護士会 会長 山内 堅史

 政府が3月13日に今国会に提出した学校教育法「改正」法案について、6月14日にも衆議院を通過、今国会での成立の可能性が強まったとの報道がなされている。同法案は(1)出席停止に関する規定の「改正」と(2)子どもの社会奉仕体験活動の促進のための規定の新設を内容としている。いずれも首相の私的諮問機関である「教育改革国民会議」の最終報告とそれを実現するための文部科学省の「21世紀教育新生プラン」に基づくものである。
出席停止措置は、他の子どもの教育を受ける権利を保障するための、最終的な手段として認められているものであるが、子どもの教育を受ける権利を一時的にせよ制 限するものであるから、措置の適用は十分に慎重でなければならない。
改正法案は、子どもの教育を受ける権利を保障する視点からの検討が不十分であり、出席停止を命ずる要件も曖昧である。また、停止期間の絞りがなく、子どもに対する告知と聴聞の機会や保護者の不服申立の制度すら保障されていない。さらに改正法案は、出席停止中の子どもの教育支援を講ずるとしているが、具体的な支援内容には触れていない。
次に「社会奉仕体験活動」の規定の新設については、「体験学習」自体は有意義なことであるが、成績評価や内申書の記載などにより実質的に「強制」になることが危惧される。
「奉仕活動」の強制は任意参加を前提とするボランティア活動とは異質のものであり、奉仕活動先やその内容・態様の如何によって、親や子どもの思想・信条の自由の侵害など、子どもや親の人権のうえで様々な問題が生じる恐れがある。
東京弁護士会は1985年から子どもの人権救済センターを設置して電話相談や面接相談、さらには子どもの人権救済活動を積極的に行ってきた。こうした立場から、今般の学校教育法「改正」法案については、国民各層の議論を深め、さらに十分に慎重な検討を尽くすよう求めるものである。