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テロ対策特別措置法案に関する会長声明

2001年10月16日

東京弁護士会 会長 山内 堅史

 9月11日にアメリカで発生した残虐かつ卑劣な同時テロ攻撃は、まさに国際的な平和と安全に対する脅威であり、断じて許すことができない。このようなテロ犯罪に対しては、国際社会が共同で対処し、犯罪者に対し国連憲章を中核とする国際法に基づく責任を厳正に追及しなければならない。また、テロの撲滅に向けて、国際社会が一致協力して、あらゆる措置をとる必要がある。これは、平和主義、国際協調主義を嘔っている日本国憲法の前文の趣旨にも合致するところである。
しかし、同時に、憲法9条は、世界に先駆け、武力による威嚇または武力行使の放棄を明確に規定している。したがって、わが国は、国連を中心とするテロ対策に積極的かつ主体的に取り組んでいくべきであることはもちろんであるが、テロ対策の立法にあたっては、それが憲法第9条に違反しないように充分に留意しなければならない。

 政府が10月5日に国会に提出したテロ対策特別措置法案(略称)は、外国の領域をも活動地域とした、米軍など諸外国の軍隊等の活動に対する武器弾薬の輸送をも含む協力支援活動、戦闘行為により遭難した諸外国の戦闘参加者の捜索救助活動を、自衛隊が実施するものとしている。
しかし、自衛隊が公海上のみならず外国の領域において武器弾薬などの輸送を含む支援活動を行うことは、諸外国の軍隊等の武力行使と一体不可分な兵站活動とみなされるおそれが強いものである。また、戦闘参加者の捜索救助活動は、非戦闘地域を実施区域として行われることとされてはいるが、活動の性格上当然戦闘地域に近接した場所でなされる行為であるから、戦闘行為と一線を画することは事実上困難である場合が多く、武器使用基準の緩和とも相まって、諸外国の行う武力行使と一体化したものと評価されかねない。
さらに、同法案は、政府の定める基本計画や同計画に基づく協力支援活動などの対応措置の実施について国会の承認を要求していないが、これは国政に関する国会のチェック機能を有名無実にするものであり、憲法41条に抵触するおそれがある。

 よって、当会は、ここにテロ対策特別措置法案の憲法上の問題点を指摘し、国会に対し、慎重な審議を求めるものである。