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自衛隊等のイラク派遣に反対する会長声明

2003年12月09日

東京弁護士会 会長 田中 敏夫

政府は、本日、イラク復興支援特別措置法(以下イラク特措法という)に基づく自衛隊派遣の概要を定める「基本計画」を閣議決定した。

「基本計画」によると、陸上自衛隊をイラク南東部に、航空自衛隊をクウェートに派遣するとされている。
イラク専門調査団の調査概要によると、イラク南東部は「比較的安定した地域」であるが「襲撃等の可能性は存在」すると指摘されており、また「地対空ミサイルは航空機の脅威となり得る」とも指摘されている。
現在イラクでは、米兵等に対する攻撃や自爆テロが全土で連日のように発生しており、その治安はますます悪化している。日本人外交官2名が亡くなる事件も起きている。米軍も認めるとおり、「イラクは戦争状態にありその全土が戦闘地域」であり、イラクに安全な「非戦闘地域」などが存在しないことは明らかである。
「自衛隊等の対応措置は非戦闘地域において実施し、武力による威嚇または武力行使にあたるものであってはならない」との同法の基本原則に従えば、もはやイラクに自衛隊等を派遣することは不可能である。
今回の派遣は、国連の要請もイラクの同意もなく米英による侵攻の戦後処理としての占領行政に協力しようとするものに他ならないが、現在では米英によるイラク侵攻の正当性そのものに、より一層の疑問が投げかけられている。
このような状況下で、イラクに自衛隊等が派遣されるならば、自衛隊員やNGO関係者などイラク国内の日本人が米軍の協力者として広く攻撃の標的となり、自衛隊員が装備する対戦車砲等を用いてイラク国民に対し武力行使をせざるを得ない事態が発生するおそれが極めて高い。
それは、戦後初めて、自衛隊が他国の領土内で他国民を殺傷し、自衛隊員等も殺されるという、「殺し、殺される」(小泉首相)事態を呼び起こすことになる。かかる事態を招来する高度の危険性をかえりみず、派遣を強行することは、もはや、武力の行使を禁止した憲法第9条に違反するものであり絶対に許されないものである。
「テロに屈してはならない」との掛け声のもとに、若い自衛隊員等の尊い生命が軽視され、犠牲者を生みだすようなことが決してあってはならない。

当会は、政府の「基本計画」の閣議決定に断固反対し抗議するとともに、自衛隊等のイラク派遣中止を強く求めるものである。