東京弁護士会

東京弁護士会における総合的な不祥事対策の取組について

当会では、近時発生している弁護士不祥事への総合的対策として、次のような施策に取り組んでいます。これらの施策を通し、市民の皆様の信頼回復に努める所存ですので、何卒よろしくお願い申し上げます。

1 預り金等の取扱いに関する会規の制定

2013年5月29日の定時総会において、従前の会規を廃止し、新たに「預り金等の取扱いに関する会規」(新会規)を制定しました(6月20日施行)。会規全文はこちら(PDF:87KB)

【旧会規からの主な変更点】

①会による照会・調査の要件の拡大

旧会規では、懲戒請求や紛議調停の申立がなされた場合などに限定されていた照会の要件を、新会規では、新会規第2条から第8条までに違反すると思料する相当の理由がある場合に変更し(新会規第9条)、市民窓口に寄せられた苦情等から早期の調査が必要と認められる場合など、会による迅速な調査開始が可能となりました。

②照会・調査に対する回答および協力義務の拡大

旧会規では、預り金の保管状況の照会を受けた会員は、依頼者の同意が得られないことを理由としてその回答を拒否することができましたが、新会規では、会員は依頼者の意向にかかわらず書面で回答し、調査に協力しなければならないことになりました。ただし、事件内容に関わる事項については伏せて回答することができます(新会規第10条1項)。これにより、問題のある会員の預り金に見合う財産保全の有無に関する迅速な調査が可能となりました。

2 市民窓口の機能強化

市民窓口は、本来、弁護士業務が市民に理解され、身近なものとなるようにするための苦情・要望の窓口です。苦情の中には、連絡がとれない、非弁提携や預り金の流用が疑われるといった迅速な対応を要求される重大・深刻なものが含まれており、これらを看過しては不祥事や被害の拡大を防止することができません。そこで、市民窓口に寄せられた苦情情報を積極的に活用し、不祥事防止に生かすための方策を講じています。

(1)苦情情報の分析

2012年度の市民窓口に対する苦情受付件数は、1800件余りです。これらの苦情情報を、すべて文書・データ化し、苦情内容を分析するとともに、担当理事者が検討し、迅速な対応が必要だと思料されるものについては、調査を行います。

(2)苦情情報の積極的活用

  • 市民窓口に寄せられた苦情情報は次のように活用します。
  • 苦情対象会員の非弁提携が疑われるような場合は、当会非弁提携弁護士対策本部に情報を提供し、場合によっては担当理事者とともに調査を行います。
  • 市民窓口委員会調査チームによる調査を開始します。すでに複数の調査委嘱が行われており、機動的な調査が期待されています。
  • 「連絡がとれない」との苦情については事件処理遅滞または放棄が予想され、預り金流用が懸念される苦情については預り金に見合う財産の消失が懸念されるため、担当理事者が対象弁護士の事務所等を訪問したり、預り金会規による照会等を行うなどの調査を行います。
  • 市民窓口に寄せられた苦情に基づく調査を行った結果、対象会員に明らかな懲戒事由があると認められた場合、会長は、綱紀委員会に対し、調査を命じます。当会では、調査命令を発令するにあたり、常議員会の議決を要しないこととなっているので、迅速な発令が可能です。なお、被害の拡大を回避するためには、事前公表も行うことがあります。

(3)苦情情報の対象会員への通知

苦情対象会員について1年以内に3人以上の申出人から苦情の申出があったときは、申出人の意向にかかわらず、当該会員に対し、書面により3人以上の申出人から苦情の申出があった旨を通知することができるようにしました。

3 紛議調停における情報の活用

紛議調停において、事件処理放置や虚偽報告といった非行事実が取り扱われている場合があることから、紛議調停委員会の情報も、非行探知のため、市民窓口の苦情情報とともに担当理事者間で情報を共有します。

4 会費滞納情報の活用

会費を滞納している会員は、経済的に困窮していることが推察されるため、財務担当理事者とも情報を共有し、定期的に打ち合わせをして調査等の対応の要否を検討します。

5 弁護士倫理研修の強化

(1)中間倫理研修の開始

新規登録時、登録後5年及び同10年、同20年、同30年、同40年、同50年、同60年等の会員を対象に、毎年11月に実施している倫理研修を、2013年からは、これに加え、登録後3年、同15年、同25年、同35年、同45年、同55年、同65年等の会員を対象に、ディスカッション方式で2時間の研修(中間倫理研修)を開始しています。これにより、新たに制定された預り金等の取扱いに関する会規等をより適時に会員に周知することなどが可能になりました。

(2)倫理研修のさらなる強化・活性化の検討

当会では、倫理研修の内容として、懲戒事例のみならず市民窓口に寄せられた苦情も材料とした研修についての検討も行っています。

6 弁護士相談窓口の充実

弁護士は、紛争を取り扱う職業であるため、悩み事に直面することが避けられない。そして、非行の原因として、うつ病をはじめとする精神疾患が指摘されている。このため、当会でも会員の仕事等の悩みや受け付ける相談窓口整備と、メンタルヘルスの対策の充実をすすめている。

(1)会員サポート窓口

事務所の開設や閉鎖、病気や精神疾患等による休業・会費免除に関する相談、利益相反等の事件の受任・辞任、事務所経営に関するトラブルなど業務に関する様々な問題に関し、ベテランの会員が相談に応じ、アドバイスしています。
ご利用に関してはこちらをご覧ください。(会員サイトへリンクしています。)

(2)弁護士業務妨害対策センター

弁護士業務に対する妨害によって、対応に苦慮したり身の危険を感じる会員に対し、妨害者への対応の検討、事務所のセキュリティについての助言や警察への要請等の支援を活発に行っています。
ご利用に関してはこちらをご覧ください。(会員サイトへリンクしています。)

(3)チューター制度

司法修習を終えて、当会に新規入会登録後3年以内の即時独立弁護士、早期独立弁護士、事務所内独立採算弁護士等に対し、当会弁護士登録5年目から30年目までの会員のなかからチューターを指名し、1年間にわたり事件処理の事務や処理方法、新規業務獲得、事務所経営や独立開業に関する事項についての一般的なアドバイスを提供しています。
ご利用に関してはこちらをご覧ください。(会員サイトへリンクしています。)

(4)若手相談室(新進会員活動委員会)

弁護士登録5年以内の弁護士会員に対して、事務所内の人間関係のトラブル、精神的な悩み、経済的な悩みなど、弁護士業務に関連して生じる様々な悩みごとの相談に対応するための相談窓口を設けています。
ご利用に関してはこちらをご覧ください。(会員サイトへリンクしています。)

(5)こころの相談「ほっと」ライン

株式会社ティーペックに業務委託し、心理カウンセラーによる電話、WEB、面談によるカウンセリングを受けることができる体制を作っています。
ご利用に関してはこちらをご覧ください。(会員サイトへリンクしています。)

(6)東京都弁護士国民健康保険組合によるメンタルヘルスカウンセリング

東京都弁護士国民健康保険組合(弁護士国保)が株式会社法研および株式会社東京カウンセリングセンターに委託して、組合員のメンタルヘルスカウンセリングを行うもので、電話、面談、WEBによる相談を受け付けています。
ご利用に関してはこちらをご覧ください。(東京都弁護士国民健康保険組合サイトへリンクしています。)

7 東京弁護士会ウェブサイトの「ご意見・ご要望」への投稿の活用

東京弁護士会ウェブサイトの「ご意見・ご要望」へは、市民の皆さまのみならず、他会・当会の弁護士からも投稿可能です。
投稿は担当理事者においてすべて目を通しております。投稿数はとても多く、内容も多岐にわたっていますが、WEB上の問題のある弁護士広告や非弁提携弁護士に関する情報提供も少なからず存在するので、状況に応じて必要な調査をします。

当会では、以上の対策を総合的に講じることにより、不祥事の発生や被害拡大の防止をはかり、ひいては不祥事根絶を目指しております。