主催:東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会 共催:日本弁護士連合会 シンポジウム「障害者権利条約をみんなで使おう!」  障害者権利条約を国内で実施する意味とは! 社会モデル、差別解消、合理的配慮 長瀬修 立命館大学 2014年9月4日(木) 弁護士会館2階「クレオ」 2014年1月20日  障害者権利条約を日本が批准 2013年12月4日 障害者の権利条約批准を国会が承認 2014年1月17日 批准の閣議決定 2014年1月20日 日本の批准 2014年2月19日 日本での発効 概要 (1)障害者権利条約交渉の特徴 Nothing about us without us (2)条約の国際的実施締約国会議  障害者権利委員会 (3)条約の柱 ・社会モデル ・差別禁止解消 ・合理的配慮 障害者 障害者権利条約略史 1971 精神薄弱者の権利宣言(知的障害者の権利宣言) 1975 障害者の権利宣言 1981 国際障害者年「完全参加と平等」 1983−1992 国連障害者の10年 1987 障害者差別撤廃条約提案 障害者権利条約略史 2001 国連総会でのメキシコ政府の障害者権利条約提案 2002−2006 国連障害者の権利条約特別委員会での審議 2006 障害者権利条約が国連総会で採択 2007 障害者権利条約を日本政府が署名 2011 改正障害者基本法 2013 障害者差別解消法 2014 障害者権利条約を日本政府が批准 (2)条約の国際的実施 ・締約国会議 ・障害者権利委員会 締約国会議 ・国連本部で毎年、3日間開催(2014年6月) ・2014年の主要テーマ ・障害と開発 ・国内モニタリング ・障害青少年 ・締約国による自国での権利条約の実施状況に関する発言 ・障害者の権利委員会委員の選挙(偶数年) (2)障害者権利条約の国際的実施 ・締約国会議 ・障害者権利委員会 障害者の権利委員会 ・年2回の会期、ジュネーブにて開催、2014年は34月に2週間、910月に3週間。 ・18名の専門家:締約国会議において締約国が指名し、選挙 ・締約国の報告の検討(日本の提出は2016年1月が締め切り) ・市民社会や障害者組織からの情報提供(パラレルレポート、シャドーレポート) ・事前質問事項(List of Issues)の準備 ・事前質問事項への政府からの回答 ・建設的対話 ・総括所見(勧告)(日本への総括所見は2019年前後) (3)障害者権利条約の柱 ・社会モデル ・差別禁止 ・合理的配慮 障害の社会モデル 障害者には、長期的な身体的、精神的、知的又は感覚的な機能障害であって、 様々な障壁との相互作用により他の者との平等を基礎として社会に完全かつ 効果的に参加することを妨げ得るものを有する者を含む。 (条約) 障害者  身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて、 障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 (2011年改正障害者基本法) 差別禁止(即時的実施義務) 障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のいかなる 分野においても、他の者との平等を基礎としてすべての人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使すること を害し又は無効にする目的又は効果を有するものをいう。 障害に基づく差別には、合理的配慮を行わないことを含むあらゆる形態の差別を含む。(条約) ・差別禁止は即時的実施義務 合理的配慮 障害のある人が他の者との平等を基礎としてすべての人権及び基本的自由を享有し 又は行使することを確保するための必要かつ適切な変更及び調整であって、 特定の場合に必要とされるものであり、かつ、不釣合いな又は過重な負担を課さないものをいう。 (条約) 社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、 それを怠ることによつて前項の規定に違反することとならないよう、 その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない。 (2013年障害者差別解消法) 合理的配慮 ・肢体不自由 ・視覚障害 ・聴覚言語障害 ・精神障害 ・知的障害 ・発達障害(自閉症など) 合理的配慮 reasonable accommodation 1964年 公民権法 ・人種、性、宗教、民族的出自による差別禁止 ・宗教差別への対応策として合理的配慮の概念の誕生 1973年 リハビリテーション法504条(障害差別禁止) ・障害分野への導入 1990年 ADA(米国障害者法) 2006年 障害者権利条約(CRPD) 社会を変える概念としての 合理的配慮の可能性 ・宗教 ・文化 ・障害 合理的配慮が求められる主な場面 ・教育 ・労働雇用 教育 ・インクルーシブ教育の原則 ・地域の学校に行ける権利 ・学校での合理的配慮の提供の義務 ・手話で学ぶ権利 ・盲学校やろう学校を選ぶ権利 ・手話のできるろう者教員や点字のできる盲人教員の採用 ・大学での合理的配慮の提供の義務                               (第24条) 労働雇用 ・一般企業で仕事をする権利 ・障害に基づく差別の禁止 ・政府、自治体と企業による雇用の促進 ・合理的配慮の提供                                 (第27条) 雇用場面での合理的配慮 「改正障害者雇用促進法に基づく差別禁止合理的配慮の提供の指針の在り方に関する研究会報告書」 (2014年6月6日) この報告書をもとに、現在、労働政策審議会 障害者雇用分科会が検討中             募集及び採用時 ○ 面接時に、就労支援機関の職員等の同席を認めること。 採用後 ○ 業務指導や相談に関し、担当者を定めること。 ○ 業務の優先順位や目標を明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順を分かりやすく示したマニュアルを作成する等の対応を行うこと。 ○ 出退勤時刻休暇休憩に関し、通院体調に配慮すること。 ○ できるだけ静かな場所で休憩できるようにすること。 ○ 本人の状況を見ながら業務量等を調整すること。 ○ 本人のプライバシーに配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること。 募集及び採用時 ○ 面接時に、就労支援機関の職員等の同席を認めること。 採用後 ○ 業務指導や相談に関し、担当者を定めること。 ○ 本人の習熟度に応じて業務量を徐々に増やしていくこと。 ○ 図等を活用した業務マニュアルを作成する、業務指示は内容を明確にし、一つずつ行う等作業手順を分かりやすく示すこと。 ○ 出退勤時刻休暇休憩に関し、体調に配慮すること。 ○ 本人のプライバシーに配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること。 募集及び採用時 ○ 面接時に、就労支援機関の職員等の同席を認めること。 ○ 面接採用試験について、文字によるやりとりや試験時間の延長等を行うこと。 採用後 ○ 業務指導や相談に関し、担当者を定めること。 ○ 業務指示やスケジュールを明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順について図等を活用したマニュアルを作成する等の対応を行うこと。 ○ 出退勤時刻休暇休憩に関し、体調に配慮すること。 ○ 感覚過敏を緩和するため、サングラスの着用や耳栓の使用を認める等の対応を行うこと。 ○ 本人のプライバシーに配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること。 募集及び採用時 ○ 募集内容について、音声等で提供すること。 ○ 採用試験について、点字や音声等による実施や、試験時間の延長を行うこと。 採用後 〇 業務指導や相談に関し、担当者を定めること。 ○ 拡大文字、音声ソフト等の活用により業務が遂行できるようにすること。 ○ 出退勤時刻休暇休憩に関し、通院体調に配慮すること。 ○ 職場内の机等の配置、危険箇所を事前に確認すること。 ○ 移動の支障となるものを通路に置かない、机の配置や打合せ場所を工夫する等により職場内での移動の負担を軽減すること。 ○ 本人のプライバシーに配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること。                募集及び採用時 ○ 面接時に、就労支援機関の職員等の同席を認めること。 ○ 面接を筆談等により行うこと。 採用後 ○ 業務指導や相談に関し、担当者を定めること。 ○ 業務指示連絡に際して、筆談やメール等を利用すること。 ○ 出退勤時刻休暇休憩に関し、通院体調に配慮すること。 ○ 危険箇所や危険の発生等を視覚で確認できるようにすること。 ○ 本人のプライバシーに配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること。 募集及び採用時 ○ 面接の際にできるだけ移動が少なくて済むようにすること。 採用後 ○ 業務指導や相談に関し、担当者を定めること。 ○ 移動の支障となるものを通路に置かない、机の配置や打合せ場所を工夫する等により職場内での移動の負担を軽減すること。 ○ 机の高さを調節すること等作業を可能にする工夫を行うこと。 ○ スロープ、手すり等を設置すること。 ○ 体温調整しやすい服装の着用を認めること。 〇 出退勤時刻休暇休憩に関し、通院体調に配慮すること。 ○ 本人のプライバシーに配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること。 ・肢体不自由 ・視覚障害 ・聴覚言語障害 ・精神障害 ・知的障害 ・発達障害(自閉症など) 2013年6月19日  障害者差別解消法成立 ・官民両分野での直接差別の禁止 ・政府と自治体の合理的配慮の提供義務 ・民間の合理的配慮は努力義務 ・差別解消の基本方針の閣議決定 ・公的機関の要領作成および民間事業主の指針策定 ・雇用に関しては、改正障害者雇用促進法(2013年6月)が適用 ・差別禁止 ・官民の事業主は合理的配慮の提供義務 ・障害者差別解消支援地域協議会の設置可能 ・紛争解決相談は既存の機関を活用 ・施行は2016年4月 障害者権利条約実施の主な課題 ・差別禁止と合理的配慮の提供 ・障害者差別禁止法の実施 ・改正障害者雇用促進法の実施 ・アクセシビリティ(施設及びサービス等の利用の容易さ) ・成年後見制度の見直し ・搾取、暴力、虐待の防止 ・インクルーシブ教育の実施 ・地域生活の促進 ・強制的入院(措置入院と医療保護入院)の見直し ・社会的入院の削減 ・政治参加の促進 ・国際協力のバリアフリー化と障害者の参加促進 危険な状況及び人道上の緊急事態 ・自然災害時の障害者への対応 ・東日本大震災の教訓(2倍の死亡率) ・障害者の死亡率をいかに引き下げるのか ・災害の人的被害全体を少なくするための合理的配慮とアクセシビリティ(施設及びサービス等の利用の容易さ)                                  (第11条) 障害者 概要 (1)障害者権利条約交渉の特徴 Nothing about us without us (2)条約の国際的実施 ・締約国会議 ・障害者権利委員会 (3)条約の柱 ・社会モデル ・差別禁止解消 ・合理的配慮 障害者権利条約の実施に共に 取り組みましょう