東京弁護士会
性の平等に関する委員会

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公開学習会「離婚における子どものケア~元子どもと臨床の立場から~」

1 概 要

2015 年9月11日18 時~ 20 時,弁護士会館5 階502会議室において,「離婚における子どものケア~元子どもと臨床の立場から~」をテーマに公開学習会を開催しました。
両親の離婚が子どもたちにどのような影響を与え,その影響を最小限に抑えるために何が必要なのか,両親の離婚に直面した子どもたちが何を考え,何を望み,周囲の大人たちはどのように手を差し伸べることができるのか...。
学習会では,ご自身も両親の離婚によって父親との離別を経験し,現在は離婚家庭の子どもたちを支援する団体の代表を務める新川明日菜さん(NPO法人Wink 理事長)と,子どもの臨床に長年携わっておられる酒井道子さん(慶應義塾大学病院小児科・臨床心理士)を講師に招き,それぞれに講演していただくとともに,パネルディスカッションを行いました。

2 新川明日菜さんの講演

新川明日菜さんからは,ご自身の体験談(母親の4度の離婚と3度の再婚を経験,実父とは0歳で別居,15歳で初めて面会交流を行ったこと等)とNPO法人Winkの活動紹介を踏まえながら,「離婚家庭と子どもたち」をテーマに離婚家庭の子どもに必要なサポートについて講演いただきました。
親の離婚という大きな出来事に直面した子どもには一人でも悩みを聴いてくれる第三者の存在が不可欠であること,同じ経験をする仲間によるピアサポートの必要性,子どもにとって同居親の精神状態がなにより大切であり親の精神面を支えるサポートが必要であることについて,これまでに関わってきた親子の実例を挙げながらお話しされました。

3 酒井道子さんの講演

酒井道子さんからは,長年臨床の現場で離婚家庭の子どもたちに接してこられた立場から,「子どもの気持ちをどうやってとらえるのか」をテーマに講演いただきました。
両親が離婚したとき本人は幼かったから覚えていないはず...などということはなく,子どもには生まれた直後から周囲の人の感じていることや意図を感じ取る能力があること,両親が離婚に至るプロセスの中で,子どもが成長障害や愛着障害,チックや吃音,不登校等様々な形でサインを出すことがありこれは子どもの心の叫びであるということ,子どもが両親の関係について何も知らされないことによって現実以上に大きな不安を抱いてしまう可能性があること等について,具体的な臨床例を挙げて説明されました。
また,離婚による影響から子どもを守るためには,子どもの声をよく聴くこと,言葉で説明するのが難しい幼い子どもの気持ちをいかに汲み取るかの重要性,信頼関係を構築し時間をかけて聴き取った子どもの気持ちを尊重することの重要性についても具体的な事案を交えてお話しされました。

4 パネルディスカッション

⑴ 学習会の後半は,当委員会委員の中西俊枝弁護士をコーディネーターとして,パネルディスカッションを行いました。
⑵ 新川明日菜さんの発言の概要
・子どもにとって両親が離婚するという事実自体が残酷ではあるがその点は仕方がない。両親のどちらを選ぶかについて,子ども自身が重荷に感じることはある程度やむをえない。それ以上に,離婚のプロセスの中で子どもが蚊帳の外に置かれたまま自分の意見や気持ちを聴いてもらえないことの方が辛い。
・親を捨てていいのは子どもだけ。子どもの意見を聴いて尊重してほしい。
・(面会交流に躊躇する監護親に対して行っている働きかけとして)監護親の過去の苦労をねぎらい,味方であることを伝えて信頼関係を築いている。両親の離婚によって自分の存在を否定してしまう子どもが多い現実を伝え,そうならないために非監護親との面会交流が大切であると伝えている。
・子どもは成長とともに自分で親を判断できるようになるので,面会交流を躊躇する監護親にはその時まで(非監護親との面会交流を継続できるよう)頑張ってもらう。
・非監護親に対しては「どうか子どもに振り回されてほしい」と伝えている。
・子どもに会えなくて辛い非監護親を支える存在も必要。それぞれが何を不安に感じているのかぶつけ合うことで,解決策がみつかることもある。
・面会交流について家庭裁判所で取り決めたから終わりではなく,取決め後も,子の成長に応じて変更させていく必要がある。
⑶ 酒井道子さんの発言の概要
・親の離婚によって子どもに負担がかかったとしても,子ども自身が安心安全な環境に置かれれば,心身への影響は回復する。特に精神的に不安定になってしまった子に対しては,専門家への受診時期が早ければ早いほど回復に必要な時間も短くてすむので,受診することも選択肢に入れてほしい。
・(非監護親との面会交流について)親子の関係を継続させることは大切であるが直接会うことだけが交流という運用は硬直的すぎる。子どもの声をしっかりと聴き,子ども自身の気持ちを尊重する必要がある。
・非監護親に会いたくないという子どもの意見を「忠誠葛藤」などと画一的に評価することはナンセンス。子どもが非監護親に会いたくないというときにはその背景に複雑な事情がある場合が多い。多くの場合子どもは両親間の葛藤的状況を見て育ち,現在自分の安心安全を守ってくれるはずの監護親を傷つけたくない気持ちを抱くのは当然である。一方で親の感情とは別に非監護親に対して会いたい気持ちや会いたくない理由を抱えていることも多い。その気持ちのどちらも否定すべきではない。子どもの今の気持ちを丁寧に聴き取り,その時の気持ちに即した非監護親との出会い方を考えていくことが必要である。
・(現状の制度について)子どもの声を聴くプロセスが不十分である。幼児や小学校低学年の子どもにも気持ちや意思がある。年齢にかかわりなくもっと時間をかけて子どもとの信頼関係を構築して子どもの本当の声を聴き取る必要がある。その子どもにかかわっている専門家の意見にももっと耳を傾けるべきである。

5 最後に

この学習会全体を通して,講師のお二人がともに子どもの声を聴くことの重要性についてお話しされていたことが印象的でした。
学習会参加者からのアンケートでは,子の目線での話が聞けて良かった,10歳未満の子どもにももちろん意思があるという言葉に勇気づけられた,子どもの気持ちを尊重していきたい等の意見をいただくとともに,各講師の講演とパネルディスカッションのいずれでも良い評価をいただきました。
当委員会では,今後も引き続き離婚やDV,両性の平等に関する問題について,調査・研究を続け,当事者や支援者のみなさまに有益な情報を提供していきたいと考えています。

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