弁護士による法的解説・事例紹介(障がい者事案) 幡野 博基 弁護士 多摩支部 高齢者・障害者の権利に関する委員会 委員 自己紹介(幡野) 視覚障害(身体障害者手帳4級) 発症時期:中学1年生頃 現在の両眼矯正視力:約0.03 一部視野欠損あり 暗くなると視力が弱くなる 平成28年12月 弁護士登録(東京弁護士会・69期)    多摩パブリック法律事務所 動画をご覧いただいていかがでしたでしょうか。 @脳性まひの方の事例 A視覚障害の方の事例 B聴覚障害の方の事例 他にも様々な事例があります。 【事例@】  宅建業者が、車いす使用者に対して「床が汚れる」等として敷金や保証金等を通常より多く求める。 【事例A】  車いす利用者が内覧を申し込んだ際に「先に契約者が決まったため案内できない」と断られた。そ の後、空室のまま掲載され続けていたので、車いすであることを伏せて別名義で再度内覧申込すると 「空室で案内可能」と返答が来た。 引用:DPI日本会議「国交省 差別解消法対応指針に対するDPI意見ver.2」 2023年DPI差別事例&合理的配慮の好事例収集のまとめ | DPI 日本会議 (dpi-japan.org) 賃貸人の意識の現状 実践的な工夫・改善策 事業者向けパンフレットの作成・周知 公益社団法人全国賃貸住宅経営者協会連合会作成 【宅建業者・管理業者・家主さん向け】障害者差別解消法解説ガイドブック(2023年11月版) 内閣府 障害者差別に関する相談窓口「つなぐ相談」  障害者差別解消法に関する質問に回答すること及び障害を理由とする差別等に関する相談を自治体 ・各府省庁等の適切な相談窓口に円滑につなげるための調整・取次を行うことを目的に、令和5年10 月16日から令和7年3月下旬まで、試行的に「つなぐ窓口」を設置。 電話相談:0120-262-701  毎日10時から17時まで(祝日・年末年始を除く) メール相談:info@mail.sabekai-tsunagu.go.jp 障害者権利条約について 障害者権利条約の目的:他の者との平等 障害者も、障害のない人と同じ基本的人権が保障されるようにする。 基本的人権を保障するための手段が「差別解消」。 障害を理由とする差別 不当な差別的取扱い 合理的配慮の不提供 障害者差別解消法が対象とする「差別」 類型 不当な差別的取扱い 定義 正当な理由なしに、障害または障害に関連する事由を理由として、障害者を排除し、その権利 の行使を制限し、その権利を行使する際に条件をつけ、その他障害者に対する不利益な取り扱いをす ること。 根拠 法第7条1項 法第8条1項 基本方針 類型 合理的配慮の提供 定義 障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、そ の実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害 者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮を する。 根拠 法第7条2項≪行政機関等:法的義務≫ 法第8条2項≪民間事業者:努力義務≫ ※令和6年4月1日から法律上は民間事業者も法的義務化 ※東京都の事業者は東京都障害者差別解消条例で既に法的義務化 「社会的障壁」とは? 私 障害 社会参加 社会 学校 会社 家族 町内会 世の中全般 阻もうとする力 ・障害の理解がない ・いじめられる ・入店拒否・搭乗拒否 ・「迷惑をかけないでね」 障害 社会的障壁 合理的配慮の内容が決まるまでの手順 意思表明 障害者からの「私は障害(社会的障壁)のせいで困っています」という意思の表明 話しあう 合理的配慮の提供の内容に関する話合い。 社会通念上「過重な負担」に当たらないか。 確定 合理的配慮の内容の確定 (確定した合理的配慮の履行確保) 環境整備について 障害者差別解消法5条 行政機関等及び事業者は、合理的配慮の提供を的確に行うため、自ら設置する施設の構造の改善及び 設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に努めなければならない。 国交省 差別解消対応指針 何が書かれているか? 【目次】 一 趣旨 二 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の基本的な考え方 三 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の具体例 四 事業者における相談体制の整備 五 事業者における研修・啓発、障害を理由とする差別の解消の推進に資する制度等の整備 六 国土交通省における所掌する分野ごとの相談窓口 国交省 差別解消対応指針 物件一覧表や物件広告に「障害者不可」などと記載する。 賃貸物件への入居を希望する障害者に対して、障害があることを理由 に、賃貸人や家賃債務保証会社 への交渉等、必要な調整を行うことなく仲介を断る。 障害者に対して、客観的に見て正当な理由が無いにもかかわらず、「火 災を起こす恐れがある」等の 懸念を理由に、仲介を断る。 一人暮らしを希望する障害者に対して、一方的に一人暮らしは無理であると判断して、仲介を断る。 障害者差別解消法の特徴・課題 障害者差別解消法上、合理的配慮提供義務が規定されている。 →他分野でも合理的配慮義務が定められて良いのでは? 不動産賃貸業に関する裁判例が見当たらない。 →他分野の裁判例等を参考とした対応がとれないか? 複合的な差別(障害者差別以外の差別が重なっているもの)に関する規定がない。 まとめ 障害者差別に関する相談はなくなっていない。相談ニーズに応えていく必要がある。 →弁護士会として障害者差別相談に対応していく必要性がある。 真に多様な人が共生できるように、障害者に限らず、様々な分野横断的な差別解消法制が必要ではな いか。