相続登記はしないといけない?-相続登記の義務化-
Q
20年前に亡くなった母方の祖母名義の土地が未分割で、相続登記されていないことが分かりました。しかし、母も高齢ですし、母の兄弟にはすでに亡くなっている方もおり、私も従兄弟たちとは関係が希薄で、今更相続登記しようにも遺産分割するのは一苦労です。このまま放置して、不動産の相続登記を申請しなくても問題ないのでしょうか?
A.
相続登記は申請が義務化されますので、申請する必要があります。
期限内の申請を怠った場合には過料が科される可能性があります。
1. 所有者不明土地問題解消のための法改正
昨今、所有者が死亡しても相続登記がされないまま放置される不動産が増加し、登記を見ても直ちに所有者が判明しない、所有者が判明してもその所在が不明で連絡がつかないといった、いわゆる所有者不明土地が社会問題となっています。
この問題を解決するために法律が改正され、相続で不動産を取得した者は相続登記を申請することが義務づけられることになりました。
具体的には、相続や遺贈により不動産の所有権を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請を行うことが義務になります(改正不動産登記法第76条の2第1項)。
そして、正当な理由がないのにその申請を怠ったときには、10万円以下の過料が科されます(改正不動産登記法第164条)。
もっとも、相続登記を行うのには戸籍の収集などの手間がかかるため、これを簡易に履行できるようにするため、上記改正と共に、新たに相続人申告登記という制度が始まります(改正不動産登記法第76条の3)。これにより、相続人が、登記名義人である被相続人が亡くなったこと及び自らが相続人であることを申請義務の履行期間内に法務局の登記官に申し出ることで、申請義務を履行したものとみなされます。
この「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、所有権を取得したことを知った日から3年以内」というのは、ケースによって時期が異なります。
遺言書がある場合は、遺言によって不動産の所有権を取得した相続人が取得を知った日から3年以内に相続登記を申請することになります。
遺言書がなく、遺産分割をする場合、被相続人の死亡から3年以内に遺産分割が成立すれば、同期間内に相続登記の申請を行えば義務を果たしたことになります。被相続人の死亡から3年以内に遺産分割が成立しそうにない場合は、同期間内に相続人申告登記の申出を行い、その後、遺産分割が成立したら成立日から3年以内に相続登記の申請を行えば足ります。
つまり、被相続人の死亡から3年以内には、相続人申告登記の申出か相続登記の申請のいずれかを行う必要があるということです。
2. 施行日について
上記の改正不動産登記法の施行日は令和6年4月1日です。
注意すべきなのは、この法律が令和6年4月1日以前に発生した相続にも適用されるということです(この場合でも、相続登記申請義務の履行期間は令和6年4月1日から3年間ですので、施行日以前に発生した相続の登記は令和9年3月末までに手続すればよいということです)。
相続登記をしないまま放置している不動産に心当たりがある方は、お早めに登記申請手続きをすることをおすすめします。何から手をつけたらよいか分からないという方は、まずは弁護士にご相談ください。
文責:弁護士 赤間 亜理沙