東京弁護士会

少年法適用年齢に関する法制審議会答申に反対する会長声明

2020年11月25日

東京弁護士会 会長 冨田 秀実

法制審議会に「少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関連)部会(以下、「部会」という)」が設けられ、2017年3月以降、約3年半にわたり、部会において、「少年」の年齢を18歳未満とすること並びに非行少年を含む犯罪者に対する処遇を一層充実させるための刑事の実体法及び手続法の整備の在り方について議論が重ねられてきた(諮問103号)。そして、2020年9月の部会において、「とりまとめ」(答申案)が採択され、同年10月29日、法制審議会総会は、法務大臣宛の答申(以下「答申」という。)を採択した。
答申は、18歳または19歳の少年について犯罪の嫌疑がある場合は全ての事件を家庭裁判所に送致し、家庭裁判所が調査をしたうえで処分を決定するという枠組みが維持されており、この点は相当である。
しかしながら、(1)18歳および19歳の者が、少年法が適用される「少年」であるとの位置づけが明確にされていない点が問題である。また、(2)18歳および19歳の者に対する処分および刑事事件の特例に関し、①原則逆送の対象事件を、死刑または無期若しくは短期1年以上の範囲に拡大した点、②ぐ犯を適用対象としない点、③家庭裁判所における処分の決定は、犯罪の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内で行わなければならないとした点、④公判請求された場合に、推知報道の禁止(法61条)を解禁する点、⑤不定期刑(法52条)や資格制限排除の特例(法60条)が適用されないとした点は問題である。
上記(1)の点に関し、答申は18歳および19歳の者の位置づけについて、20歳以上とは異なり、「類型的に未だ十分に成熟しておらず、成長発達途上にあって可塑性を有する存在」としているものの、少年法の適用年齢を引き下げるか否かについて明確にしていない。罪を犯した18歳、19歳の者の立ち直りのためには国家が後見的に介入することが求められるのであって、18歳、19歳の者にも少年法が適用されることを明記するべきである。
また、上記(2)については、以下の点が問題である。
①については、原則逆送の対象事件が短期1年以上の刑に拡大されることにより、例えば強盗罪のように犯行態様や犯罪結果といった犯情の幅が大きい事件も原則逆送となる。そして、検察官送致された事案は強制起訴が想定されているところ、20歳以上であれば起訴猶予となるような軽微な事案までもが起訴されてしまうのみならず、要保護性の高い事案が執行猶予となり、何らの教育的措置も与えられないまま本人が社会に戻ってくることになる。このような改正は、更生の機会を奪うだけでなく、再犯防止の観点からも逆効果となる可能性があり、不当である。未成熟で発展途上にある18歳、19歳に必要なのは教育であって、刑罰ではない。
②に関しては、ぐ犯の対象者は要保護性が高く、まさに保護処分が必要とされるにもかかわらず、改正によりぐ犯の対象から18歳、19歳を外すことは、本人の立ち直りの機会を失わせることにつながりかねない。民法上の成年であっても、要保護性に応じた処分をすることが必要であって、18歳、19歳をぐ犯の対象から外すべきではない。
③については、家庭裁判所の処分はあくまでも要保護性を十分に考慮した処分をするべきであって、「犯罪の軽重」によって処分の上限を画するべきではない。家庭裁判所がどのような考慮要素に基づいてどのような処分をするかはもっぱら家庭裁判所の判断に委ねられるべきである。このような改正は、家庭裁判所の適切な処遇選択を制約することにつながりかねず、妥当ではない。
④については、法が定める推知報道禁止の趣旨は、未成熟で発展途上にある少年及びその家族の名誉・プライバシーを保護するとともに、それによって非行をした少年の更生を図るというものである。更生した少年を社会で受け止め、その立ち直りを支え、再犯防止につなげることは極めて重要である。にもかかわらず、本人の実名等が広く報道されることにより、世間からバッシングを受けて生活が行き詰まったり、進学・就労への支障が生ずるなど、結果的に本人の立ち直りを阻害し、さらには、家族の生活を脅かすことが懸念される。
⑤のうち、不定期刑を適用除外とする点については、不定期刑が、少年が未成熟で可塑性に富み、教育による改善更生が期待されることから処遇に弾力をもたせるために教育的配慮により規定されたものであるところ、18歳、19歳の者についてもその趣旨は妥当するのであるから、適用除外とするべきではない。また、資格制限排除の特例を適用除外とする点については、例えば教員や士業など、前科を有することによる資格制限があるが、これらの資格制限を排除し、社会復帰後の選択肢を減らさないことが本人の立ち直りにつながるのであって、この特例を適用除外とすべきではない。
以上のとおり、18歳および19歳の者に対する処分および刑事事件の特例に関しては、これまで有効に機能していた現行少年法の枠組みを大きく変えるものであって、容認できない。
当会は、2019年3月20日に少年法における「少年の年齢を18歳未満に引き下げること」に反対する意見書を発出したところであるが、今般、法制審議会が採択した答申を受け、少年法適用年齢を18歳未満に引き下げることについて改めて強く反対する。

印刷用PDFはこちら(PDF:157KB)