東京弁護士会

死刑執行に抗議するとともに、死刑執行を停止し、2020年までに死刑制度の廃止を含め刑罰制度全体の見直しを求める会長声明

2018年07月09日

東京弁護士会 会長 安井 規雄

2018年7月6日、全国に拘置されていた死刑確定者7名の死刑が一斉に執行された。うち6名は再審請求中であり、心神喪失の疑いのあるものも含まれている。今回の死刑執行は、昨年8月、上川法務大臣就任以降2回目のもので、第2次安倍内閣以降、13回目で合計28名になる。
死刑制度の存否については様々な意見があるところ、死刑は一度執行されると冤罪であった場合には取り返しがつかない。そもそも死刑は国家刑罰権の発動としてなされるもので、「国家が人の生命を奪うことが許されるのか」という根源的な問題がある。また、刑罰には応報の理念は認められるが、刑事政策の本質は犯罪者の更生を図るとともに犯罪を防止することにある。しかし、死刑では犯罪者の更生を図ることができず、犯罪抑止の効果もないとされている。
このような事情を考慮すると、死刑制度は見直されるべきものであるといえる。
特に日本においては、これまで死刑囚を含め多くの冤罪が発生し、再審無罪により社会復帰を果たした例(免田・財田川・松山・島田等々各事件)がある。このように誤判・冤罪の危険性が具体的かつ現実的問題であることについては大いに認識されるべきである。
また、死刑に直面している死刑確定者に対しては、被疑者・被告人段階、再審請求段階、執行段階のいずれにおいても十分な弁護権、防御権が保障されるべきである。それゆえ今回の再審請求中の死刑確定者に対する死刑の執行は問題であると言わざるを得ない。
更に、現在、国際社会においては死刑廃止に向かう潮流が主流となっており、日本を含め死刑制度を残し、死刑を執行している国は少数となっている。
国連の自由権規約委員会(1993年、1998年、2008年、2014年)、拷問禁止委員会(2007年、2013年)及び人権理事会(2008年、2012年)は、死刑の執行を繰り返している日本に対し、死刑執行を停止し、死刑廃止を前向きに検討すべきであるとの勧告を繰り返し行っている。今回の執行に対しても、多くの国々、国際機関等から批判や懸念が表明されている。
他方、犯罪により尊い命が奪われた場合、失われた命は二度と戻ってこない。人の命は何よりも重いものであり、生命を奪う犯罪は決して許されるものではない。また犯罪により身内の方を亡くされた遺族の方が厳罰を望むことは、ごく自然なことであり、その心情も十分に理解できる。
このような事情を踏まえると、当会は、基本的人権の尊重を基本とする民主主義社会である現代社会においては、犯罪被害者・遺族に対し十分な支援を行うことに一層力を注ぐとともに、死刑が生命を剥奪する刑罰で国家による重大な人権侵害であることに目を向けつつ、死刑制度を含む刑罰制度全体を見直す必要があると考える。
それゆえ今回の死刑執行に対しては、強く抗議するとともに、改めて死刑を廃止するまで全ての死刑執行を停止した上で、死刑制度を含む刑罰制度全体の見直しをここに求めるものである。

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