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知的財産

法律が保護する技術やアイデア

chizai.jpg私たちは、日々の研究・創作の中で、新しい技術を発明し、あるいは個性的な文章やデザインを創作するなどして、私たちの生活を豊かなものにしています。これらの価値ある発明、文章、デザインなどは「知的財産」と呼ばれ、「特許」「商標」「著作権」「意匠」といった法律上の権利・財産として取り扱われています。
知的財産は、人の発明・創作の努力の結晶ですが、それ自体は形のない「情報」であるため、容易に模倣(コピー)することができるという特質を持っています。そこで、法律は、知的財産の利用に関するルールを定め、権利者の利益と知的財産の有効利用の両立を図っています。

「知的財産」に関しての質問一覧
当社の開発部が画期的なデザインの携帯電話を作成しました。発売に備え、あらかじめそのデザインの意匠登録をしたいのですが、登録された意匠は公表されるため、発売日前に競合他社に模倣されないか心配です。
当社はスピーカーなどの製造販売を行っている中小企業ですが、この度、新しい形のスマートスピーカの販売を計画しています。このスピーカーはその全体のデザインがこれまでのスピーカーとはまったく異なり、今後の当社の主力製品に育てて行きたいと考えています。しかし、この製品がヒットすれば、大企業が似たようなデザインのスピーカーを販売してくることが心配です。
当社に対し、Y社から、当社が販売している携帯電話AのデザインがY社が保有する意匠権Wに抵触している旨の通知書が参りました。しかし、携帯電話Aのデザインは当社がずっと前から販売している携帯電話Bのデザインと基本的に同一のデザインです。しかも、意匠権Wの出願経過において、携帯電話Bのデザインが公知意匠として指摘されており、Y社は意匠権Wの意匠と携帯電話Bのデザインは類似しないと意見を述べ、そのために意匠権Wが登録された経緯があります。そのため、Y社からの申出については同意できません。
当社に対し、Y社から、当社が販売している携帯電話CのデザインがY社が保有する意匠権Wに抵触している旨の通知書が参りました。当社としては、必ずしも、Y社の申し入れには納得はできないのですが、もともと、あと数ヶ月後にはデザインを一新しようと思っていたので、大事にする前に、話し合いで終わらせたいです。
商標は、必ず登録しなければならないのでしょうか?また、商標を登録した場合のメリットは何でしょうか?
先日、X社から、当社の製造している製品がX社の特許権を侵害しているとして、製造の差止めを求められました。しかし、当社は何十年も前からその技術を利用しており、寝耳に水の要求に困っています。
当社は、Y社に対して、Y社製品が当社の特許権を侵害しているとしてライセンス交渉を求める書面を送付いたしましたが、Y社からは、当社特許に係る発明は従来技術と同一であり、無効であるとして、ライセンス交渉には応じられないとする反論がなされました。どのように対応すればよいでしょうか。
当社は、現在、X社保有の特許技術を採用したX社商品を分解して、同様の機能を有する試作品を社内で製造し、この機能をさらに改良した当社新商品の開発に向けた研究開発を行っております。外部に販売することはありませんが、X社保有の特許技術の評価を目的とするX社商品と同様の機能を有する試作品の製造についてX社からライセンスを受ける必要はありますか。
当社は、共同研究の相手方と持ち分を2分の1ずつとする共有特許権を取得しました。当社は、相手方の同意を得ることなく、この共有特許権に係る発明を実施することはできますか。
当社では、新聞記事から当社の業務に有用と思われるものをコピーし、社内報として発行しています。これにつき、ある社員より、新聞社等の著作権を侵害するのではないのかとの指摘を受けました。社内報は社員しか読むことはなく、引用元も明記しておりますが、著作権侵害に当たるのでしょうか?
私は、この度、小説を創作しました。ウェブサイトでこの小説を公開しようと考えているのですが、著作権で保護されるためには、この小説の公開前に何らかの登録をしておかないといけないのでしょうか。
当社は、デザイン会社であるX社に当社商品のデザイン制作を委託し、X社から、X社が制作する当社商品のデザインに係る著作権の譲渡を受けようと考えています。著作権の譲渡を受けるために、デザイン制作委託契約書に、「X社は当社に、当社商品のデザインに係る著作権を譲渡する。」との規定を設ければよいでしょうか。
著作物に関する権利として著作者人格権というものがあると聞きました。著作者人格権とは何でしょうか。

当社の開発部が画期的なデザインの携帯電話を作成しました。発売に備え、あらかじめそのデザインの意匠登録をしたいのですが、登録された意匠は公表されるため、発売日前に競合他社に模倣されないか心配です。

このような場合、「秘密意匠」制度を活用することが考えられます。出願人は、3年間を限度として登録された意匠の情報を秘密にすることを請求することができます(意匠法14条1項)。

当社はスピーカーなどの製造販売を行っている中小企業ですが、この度、新しい形のスマートスピーカの販売を計画しています。このスピーカーはその全体のデザインがこれまでのスピーカーとはまったく異なり、今後の当社の主力製品に育てて行きたいと考えています。しかし、この製品がヒットすれば、大企業が似たようなデザインのスピーカーを販売してくることが心配です。

貴社が販売するスピーカーについて意匠登録(「本意匠」といいます。)をしておくことに加え、他社が行いそうな類似したデザインについても、関連意匠(自己の意匠登録出願に係る意匠又は自己の登録意匠のうちから選択した一の意匠(上記の「本意匠」)に類似する意匠)の登録出願(意匠法10条1項)をしておくことで、他社の行為を抑制することができます。

当社に対し、Y社から、当社が販売している携帯電話AのデザインがY社が保有する意匠権Wに抵触している旨の通知書が参りました。しかし、携帯電話Aのデザインは当社がずっと前から販売している携帯電話Bのデザインと基本的に同一のデザインです。しかも、意匠権Wの出願経過において、携帯電話Bのデザインが公知意匠として指摘されており、Y社は意匠権Wの意匠と携帯電話Bのデザインは類似しないと意見を述べ、そのために意匠権Wが登録された経緯があります。そのため、Y社からの申出については同意できません。

意匠の類似性の判断においては、公知意匠の存在が重視され、それが含まれないような権利解釈がなされます。また、意匠権についても、その出願経過において、出願人が権利取得のために行った発言と矛盾する挙動を行うことは禁止されます(包袋禁反言といいます。)。そのため、ご相談のケースでは、非侵害(非類似)とされる可能性が高いと考えられます。

当社に対し、Y社から、当社が販売している携帯電話CのデザインがY社が保有する意匠権Wに抵触している旨の通知書が参りました。当社としては、必ずしも、Y社の申し入れには納得はできないのですが、もともと、あと数ヶ月後にはデザインを一新しようと思っていたので、大事にする前に、話し合いで終わらせたいです。

意匠権の権利範囲は、基本的には、意匠公報に記載された図面などによって定まるため(意匠法24条1項)、その権利範囲がわかりにくく、類似性に関する当事者間の見解が一致しないケースが多いといえます。しかし、近時のビジネスでは、分野によっては、定期的にデザインの変更を行うことも多く、意匠権侵害の有無はともかくとして、早期に円満に紛争を解決したいという場面はしばしば見受けられます。
このような事例において、実務的には、類似性の点は措いておいて、数ヶ月後にはデザイン変更をすることを通知し、その間は現行品の販売を継続するが、その分を含めた損害賠償は請求しない、ということで意匠権者と話し合いが付くことも多いといえます。そのため、質問の事例においても、そのような交渉を行ってみることが得策といえます。

商標は、必ず登録しなければならないのでしょうか?また、商標を登録した場合のメリットは何でしょうか?

商標は、必ず登録しなければならないものではありません。もっとも、商標登録をすると、同一または類似の商標を使用する者に対して、使用の差し止めや損害賠償を請求することができ、反対に、商標登録をしておかないと、第三者から差し止めや損害賠償の請求を受けるおそれがあることになります。

先日、X社から、当社の製造している製品がX社の特許権を侵害しているとして、製造の差止めを求められました。しかし、当社は何十年も前からその技術を利用しており、寝耳に水の要求に困っています。

特許権は、特許発明の独占的利用を認める権利ですから、特許権者の許諾なくその特許発明を実施することはできないのが原則です。しかしながら、当該特許の出願前からその技術を実施している者まで、たまたま出願をしていない、あるいは出願が遅れたからといって一切その技術の実施を禁止されるのは不合理です。そこで、このような場合には、一定の条件の下で、従来実施しているその技術を引き続き実施することが認められています(先使用による通常実施権、特許法79条)。

当社は、Y社に対して、Y社製品が当社の特許権を侵害しているとしてライセンス交渉を求める書面を送付いたしましたが、Y社からは、当社特許に係る発明は従来技術と同一であり、無効であるとして、ライセンス交渉には応じられないとする反論がなされました。どのように対応すればよいでしょうか。

一旦、特許として認められた発明でも、従来技術と同一である場合には、新規性の欠如を理由として当該特許は無効理由を有します。もっとも、貴社特許に係る発明を開示する特許公報の記載に従来技術との差別化を図ることのできる構成が含まれている場合には、この構成を追加することを内容とした訂正審判を特許庁に請求することによって(特許法126条1項)、当該従来技術により新規性が欠如しないように特許権の権利範囲を修正することができます。

当社は、現在、X社保有の特許技術を採用したX社商品を分解して、同様の機能を有する試作品を社内で製造し、この機能をさらに改良した当社新商品の開発に向けた研究開発を行っております。外部に販売することはありませんが、X社保有の特許技術の評価を目的とするX社商品と同様の機能を有する試作品の製造についてX社からライセンスを受ける必要はありますか。

特許権者は、特許発明を独占的に実施することができ、第三者は特許権者からライセンスを受けることなく、これを実施することは許されません。もっとも、産業の発達という特許法の目的(特許法1条)にも合致する、試験または研究のためにする特許発明の実施は例外的に特許権の効力が及ばないものとされておりますので(特許法69条1項)、X社からライセンスを受ける必要はありません。

当社は、共同研究の相手方と持ち分を2分の1ずつとする共有特許権を取得しました。当社は、相手方の同意を得ることなく、この共有特許権に係る発明を実施することはできますか。

共有特許権の特許権者は、他の共有者の同意を得ることなく、共有特許権に係る発明を実施することができます(特許法73条2項)。もっとも、共同研究契約または共同出願契約などにおいて、当該共有特許権に係る発明を実施する場合、他の共有者への金銭的な支払いを条件とすることが定められていることもありますので、契約書を確認することが必要となります。

当社では、新聞記事から当社の業務に有用と思われるものをコピーし、社内報として発行しています。これにつき、ある社員より、新聞社等の著作権を侵害するのではないのかとの指摘を受けました。社内報は社員しか読むことはなく、引用元も明記しておりますが、著作権侵害に当たるのでしょうか?

個人的に、または家庭内その他これに準ずる限られた範囲で著作物のコピーを使用することは「私的使用」として許容されますが(著作権法30条1項)、会社内で業務上利用するために著作物をコピーする行為は「私的使用」に当たらないとされています。また、引用箇所を括弧でくくったり引用元を明示したりしても、他の部分と引用部分とが主従の関係になければ著作権法上の「引用」(著作権法32条1項)とはなりませんので、注意が必要です。

私は、この度、小説を創作しました。ウェブサイトでこの小説を公開しようと考えているのですが、著作権で保護されるためには、この小説の公開前に何らかの登録をしておかないといけないのでしょうか。

知的財産権には、登録により権利が発生する特許権、商標権、意匠権などがありますが、著作物については、その創作の時から何らの手続を要することなく、著作権が発生します(著作権法51条1項)。したがって、創作した小説について著作権の保護を受けるために登録は必要ありません。なお、著作権法には、実名の登録(75条)、第一発行年月日等の登録(76条)、著作権の移転等の登録(77条)などの登録制度がありますが、これらの登録制度は権利の発生とは別の制度です。

当社は、デザイン会社であるX社に当社商品のデザイン制作を委託し、X社から、X社が制作する当社商品のデザインに係る著作権の譲渡を受けようと考えています。著作権の譲渡を受けるために、デザイン制作委託契約書に、「X社は当社に、当社商品のデザインに係る著作権を譲渡する。」との規定を設ければよいでしょうか。

著作権には、複製権、譲渡権、翻案権などの個々の権利が含まれています。これら個々の権利の全部又は一部を譲渡することができますが(著作権法61条1項)、著作権を譲渡する契約において、著作権法27条(翻訳権、翻案権等)又は28条(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定されます(同法61条2項)。
したがって、著作権全部の譲渡を受けたい場合には、「X社は当社に、当社商品のデザインに係る著作権を全て(著作権法第27条及び第28条所定の権利を含む。)譲渡する。」と規定した方がよいでしょう。

著作物に関する権利として著作者人格権というものがあると聞きました。著作者人格権とは何でしょうか。

著作者人格権とは、著作者が著作物について有する人格的・精神的権利のことです。著作権法は、著作者人格権として、公表権(著作物でまだ公表されていないものを公衆に提供し、又は提示する権利、18条1項)、氏名表示権(著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利、19条1項)、及び同一性保持権(著作物及びその題号の同一性を保持する権利、20条1項)を規定しています。

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