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意匠

意匠とは、法律上は「物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの」と定義されていますが、簡単に言えば、物の美しい外観、デザインのことです。
デザインも、物の価値を高める重要な要素ですが、容易に模倣が可能であるため、法律は意匠登録制度を設け、デザインの考案者の権利保護を図っています。
意匠権は、特許権同様、主に工業製品分野で活用される権利ですが、特許権は発明というアイデアを、意匠権は物そのものの形状を保護の対象としている点で異なります。また、創作を保護する点では著作権と類似していますが、著作権は表現と同時に権利が発生するのに対し、意匠権は登録によって初めて発生するなどの違いがあります。

Q&A 多くの方々から頂く代表的なご質問

当社の開発部が画期的なデザインの携帯電話を作成しました。発売に備え、あらかじめそのデザインの意匠登録をしたいのですが、登録された意匠は公表されるため、発売日前に競合他社に模倣されないか心配です。

このような場合、「秘密意匠」制度を活用することが考えられます。出願人は、3年間を限度として登録された意匠の情報を秘密にすることを請求することができます(意匠法14条1項)。

当社はスピーカーなどの製造販売を行っている中小企業ですが、この度、新しい形のスマートスピーカの販売を計画しています。このスピーカーはその全体のデザインがこれまでのスピーカーとはまったく異なり、今後の当社の主力製品に育てて行きたいと考えています。しかし、この製品がヒットすれば、大企業が似たようなデザインのスピーカーを販売してくることが心配です。

貴社が販売するスピーカーについて意匠登録(「本意匠」といいます。)をしておくことに加え、他社が行いそうな類似したデザインについても、関連意匠(自己の意匠登録出願に係る意匠又は自己の登録意匠のうちから選択した一の意匠(上記の「本意匠」)に類似する意匠)の登録出願(意匠法10条1項)をしておくことで、他社の行為を抑制することができます。

当社に対し、Y社から、当社が販売している携帯電話AのデザインがY社が保有する意匠権Wに抵触している旨の通知書が参りました。しかし、携帯電話Aのデザインは当社がずっと前から販売している携帯電話Bのデザインと基本的に同一のデザインです。しかも、意匠権Wの出願経過において、携帯電話Bのデザインが公知意匠として指摘されており、Y社は意匠権Wの意匠と携帯電話Bのデザインは類似しないと意見を述べ、そのために意匠権Wが登録された経緯があります。そのため、Y社からの申出については同意できません。

意匠の類似性の判断においては、公知意匠の存在が重視され、それが含まれないような権利解釈がなされます。また、意匠権についても、その出願経過において、出願人が権利取得のために行った発言と矛盾する挙動を行うことは禁止されます(包袋禁反言といいます。)。そのため、ご相談のケースでは、非侵害(非類似)とされる可能性が高いと考えられます。

当社に対し、Y社から、当社が販売している携帯電話CのデザインがY社が保有する意匠権Wに抵触している旨の通知書が参りました。当社としては、必ずしも、Y社の申し入れには納得はできないのですが、もともと、あと数ヶ月後にはデザインを一新しようと思っていたので、大事にする前に、話し合いで終わらせたいです。

意匠権の権利範囲は、基本的には、意匠公報に記載された図面などによって定まるため(意匠法24条1項)、その権利範囲がわかりにくく、類似性に関する当事者間の見解が一致しないケースが多いといえます。しかし、近時のビジネスでは、分野によっては、定期的にデザインの変更を行うことも多く、意匠権侵害の有無はともかくとして、早期に円満に紛争を解決したいという場面はしばしば見受けられます。
このような事例において、実務的には、類似性の点は措いておいて、数ヶ月後にはデザイン変更をすることを通知し、その間は現行品の販売を継続するが、その分を含めた損害賠償は請求しない、ということで意匠権者と話し合いが付くことも多いといえます。そのため、質問の事例においても、そのような交渉を行ってみることが得策といえます。

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