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学校問題・いじめ

いじめとは、文部科学省の定義によれば、「(1) 一定の人間関係のある者から、(2) 心理的・物理的な攻撃を受けたことにより、(3) 精神的な苦痛を感じているもの」であり、「個々の行為がいじめに当たるか否かの判断は、表面的・形式的に行うことなく、いじめられた児童生徒の立場に立って行うことに留意する必要がある」とされています。
いじめは、根本的にいじめる側に問題があり、その解決のためには、いじめをする側におけるいじめの要因・背景の克服が必要です。いじめ加害生徒と信頼関係のある大人による適切な教育的な関わりを通じて、加害生徒の抱える問題・ストレス、過去に受けた心の傷を十分に理解することがまず必要です。このことを通じて、加害生徒の側に、自らの行為が被害者の尊厳を損ない、筆舌に尽くしがたい苦しみを与えていることの自覚が生まれ、そうした自らの行為についての実質的な反省の念が生まれる必要があります。

Q&A 多くの方々から頂く代表的なご質問

公立高校生の保護者ですが、子どもの授業態度に問題があるとして自宅謹慎を命じられています。この先どうなるのか不安です。

自宅謹慎は授業への出席が認められない点で停学処分に類似していますが、法的には懲戒処分ではなく、事実上の懲戒としてなされるもので、「特別の指導」とされています。
懲戒や指導の運用について文科省は「高等学校における生徒への懲戒の適切な運用について」(平成20年3月10日付け文部科学省初等中等教育局児童生徒課長通知)を発出して、
(1)高等学校に、①生徒への懲戒に関する内容及び運用に関する基準をあらかじめ明確化し、これを生徒や保護者等に周知すること、②懲戒に関する基準等の適用及び具体的指導の状況や効果等について絶えず点検・評価を行い、より効果的な運用の観点から必要な場合にはその見直しについても適宜検討することなどを求め、
(2)教育委員会には、各学校における懲戒に関する基準等に基づく懲戒・指導等の実施が、社会通念上妥当性を欠くものとならないようにするため、事実行為としての懲戒の意義の理解とその適正な運用を含め、参考事例等の情報を積極的に提供し、留意点等を示すことにより、これらの適正な運用のための条件整備等を一層推進することなどを求めています。

実際には、解除の基準が明らかでない無期限の自宅謹慎が事前に十分な説明のないままなされる等、社会通念上妥当性を欠く場合もあるようですので、そのような場合には、学校に対して適切な説明を求めるようにするとよいでしょう。

全日制公立高校3年生です。これまでに何回か不登校を繰り返し、担任や校長に卒業・進学できるか相談したところ、担任は卒業・進学できると明言してくれていたため転校などをせずこの学校での卒業を目指していました。しかし、校長が替わると、卒業を認めないと言われたうえ、自主退学を勧告されてしまいました。両親と学校側との話し合いにより一旦校長は謝罪したにもかかわらず、3月に入ってやはり卒業認定できないとの連絡がありました。受け入れて留年するか自主退学するほかないのでしょうか?

(高等学校を前提にしていえば)進級・卒業の認定は、欠席日数がどの程度であるのか(授業日数の2分の1または3分の1以上あるか否か)、生徒の学力や不登校に至った事情等を総合的に考慮して判断されます。一旦は卒業できると言われたからこれまで転校等の手続きを取らなかったのに、不意打ち的に卒業を認めないとすることは、子どもの学習権を侵害し違法と判断される余地もあります。

また、公立学校での不登校の場合については、「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」)(令和元年10月25日)や「高等学校の全日制課程及び定時制課程における不登校生徒に対する通信の方法を用いた教育による単位認定について」(平成21年3月31日)、「不登校児童生徒による学校以外の場での学習等に対する支援の充実について」(平成29年3月28日)、「高等学校における不登校生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている場合の対応について」(平成21年3月12日)において適切な対応をするように求められています。
さらに、平成28年には、義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律が公布されています。

公立小6年生の息子がクラスの女の子をいじめてしまいました。クラスで問題にされ、態度を変えない限りクラスには入れないと言われ、この出来事をきっかけに息子は学校にいけなくなりました。出席日数や受験にも差し支えることが心配です。先生と副校長に抗議しましたが聞いてくれません。

たとえいじめの加害者とされる子どもであっても、子どもが学校に行けない(=学び、成長する機会を損なわれている)状態を学校側が漫然と放置しているとしたら大きな問題です。息子さんが学校に行けなくなったのはなぜでしょうか。
自分がしていないことまで自分のせいにされたといったことなのか、いじめをしたことは事実だが態度を変えろという要求が一方的で納得できないといったことなのか、あるいは何か他に理由があるのか、お子さんから、よく話を聞く必要があると思います。
学校に話をする際にも、息子さんの話をふまえ、息子が学校に行けなくなったのはこういう事情によると思われるが先生方はどう思うか、この事情をふまえた対応してもらえないか、というように相談するのがよいでしょう。学校が適切に対応してくれない場合には、教育委員会に相談することも考えられます。

なお、仮に、息子さんによるクラスの女の子へのいじめということが事実であり、また、いじめ被害者がクラスでの授業を受ける上で当面息子さんを「クラスにいれない」というのが学校側の判断である場合、いじめ防止法23条4項の定める「いじめを受けた子どもが安心して教育を受けられるようにするために必要な措置」として一定の期間・範囲では許容されうる場合もあります。ただし、親ごさんの方での「出席日数や受験」の心配ももっともです。仮に上記の学校の措置が許容される場合であったとしても、他方で息子さん側にも学習権があり、その一環として学校での教育を受ける権利がありますから、少なくとも別室での授業など、本来のクラスでの授業を受けられないことに代わる教育措置を取ることを求めることはできるものと思われます。

子どもが学校でいじめの被害に遭い、登校できなくなりました。学校に改善の申入れをしようと思っているのですが、どのようなことを申し入れたらよいですか?

いじめ防止対策推進法は、児童等がいじめを受けていると思われるときは学校がすみやかに事実確認の措置を講じることを定めるとともに、その結果、いじめがあったと確認された場合には、いじめを受けた側への支援やいじめをした側への指導などを行うこととしています(同法23条)。
そのケースで「いじめを受けた側への支援」「いじめをした側への指導」として具体的にどのようなものが必要で・相当なものか、をはっきりさせる上では、いじめを受けている子ども本人の気持ち・意向が最も重要になります。
①そもそも、子ども本人が、その学校・クラスに戻りたいという気持ちがあるのか、
②戻りたい気持ちがあるとして、それはどのような条件が作られることで戻れるようになるのか、
③もし、もう元の学校に戻る気持ちがないという場合は、転校することはどうか、当面の問題として教育支援センター(適応指導教室。ただしこれは公立の場合で、私立学校だとフリースクール等)を利用することなどについての気持ちはどうか、
などについて、子ども本人の気持ちをゆっくり確認した方がよいと思います。
②の、子ども本人として、どのような条件が作られることがで学校に戻れると思っているのかという点では、子どもを取り巻く具体的ないじめの人間関係についての子ども自身の把握を前提として、クラス替えを求める、担任の交代を求める、副担任や補助教員を常駐させる、復学後に継続的にスクールカウンセラーの協力が得られるような措置をとる、とりあえず保健室などでの別学習求めるなど、様々な選択肢が考えられますので、子ども本人と相談しながら、これなら子どもが学校に戻れそうだと思える選択肢をケースに応じて申入れていくことになるでしょう。

なお、いじめ防止対策推進法は、いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるときには(「相当の期間」については年間30日が目安とされています)、重大事態として、調査のための組織を設け、事実関係を明確にするための調査を行うものとされています(同法28条1項)。ただし、この重大事態調査の制度も、その調査が始まることが学校での人間関係などに後戻りのきかない大きな影響を与える可能性があることもふまえ、子ども本人の気持と意向を基本にして、重大事態調査を被害者側として求めていくかどうかを判断すべきではないかと思います。

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