東京弁護士会

遺言・相続に関しての質問

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「遺言・相続」に関しての質問一覧
共同相続人のひとりが、10年前から行方不明になっています。遺産分割はどのようにすればよいのでしょうか。
私は、父と一緒に家業の農業を営んできました。ほかの兄弟はみな家を出てしまい、家業にはかかわっていません。父の遺産は父と私で築いたものなのに、ほかの兄弟が私と同程度に相続することは納得いきません。
遺留分の支払を他の相続人に求めたいのですが、訴訟や調停を申し立てる必要がありますか? また、時効はあるのですか?
遺留分減殺請求をする相手は誰ですか? 相続人であれば誰でもよいのですか?
亡父の遺品を整理していたら、遺言書が出てきました。どうしたらよいでしょうか?
相続人は、遺言書の内容に拘束されるのですか。遺言と異なる遺産の配分はできないのですか。
父の四十九日の後に親族が集まったところ、2つの遺言書が出てきました。作成された時期は異なるようですが、どの遺言が有効なのでしょうか?それともいずれも無効なのでしょうか?
自筆証書遺言を作成する場合の注意点について教えて下さい。
公正証書遺言とはどのようなものですか。作成の費用はどの程度かかりますか。
亡くなった夫の遺言が見つかり、可愛がっていた長男に全財産を相続させるというものでしたが、他の相続人(妻と次男)は納得できません。この様な遺言でもそのとおりに従うしかないのですか?
次男夫婦は私たち夫婦と同居して家業を手伝い亡父の財産形成を手伝ってきました。このような場合には相続分に差を設けないと不公平ではないでしょうか?
亡父の生前に相当の財産を貰った者と貰っていない者があります。その相続分に差を付けないと不公平ではないでしょうか?
遺産分割の方法につき、相続人間で話がつかないときは、どうしたら良いのですか。分割方法の基準はありますか?
相続財産を、相続人の間でどのように分けたらよいのでしょうか?いつまでに分けなければならないのでしょうか?
死んだ夫の相続財産は、現金、預貯金、不動産などのプラスの財産より負債が多いため、できることなら相続をしたくありません。そのようなことができますか?借金は相続しないで、プラスの財産を相続することはできますか?
死んだ夫には多額の借金があります。相続財産には借金も含まれますか?夫が保証人になっている場合、保証債務も相続されますか?生命保険金は相続財産に含まれますか?
夫が死亡しましたが、相続人となるのは誰ですか?

共同相続人のひとりが、10年前から行方不明になっています。遺産分割はどのようにすればよいのでしょうか。

家庭裁判所は、共同相続人等の申立によって、行方不明者の代わりにその財産を管理する不在者財産管理人を選任します。この不在者財産管理人を行方不明者の代わりに遺産分割の協議に加えることができます(ただし、家庭裁判所の許可が必要です。)。

また、行方不明の期間が極めて長期にわたる場合は、行方不明者の失踪宣告の申立をし、行方不明者が死亡しているものとして遺産分割協議をすることも考えられます。

私は、父と一緒に家業の農業を営んできました。ほかの兄弟はみな家を出てしまい、家業にはかかわっていません。父の遺産は父と私で築いたものなのに、ほかの兄弟が私と同程度に相続することは納得いきません。

民法には「寄与分」という制度があり、被相続人の事業を手伝ったり、被相続人の看護をしたりして、被相続人の財産の維持増加に貢献(寄与)した相続人については、その貢献(寄与)に応じた相続分の増加が認められています。上記の質問の例は、その典型例です。

もっとも、寄与分が認められるためには、その貢献が通常期待される以上の「特別」のもので、その貢献と被相続人の財産の増加との間に因果関係があることが必要であり、その証明はなかなか困難なものがあります。自分の貢献が寄与分として認められるものかどうかについては、弁護士に相談されることをお勧めします。

遺留分の支払を他の相続人に求めたいのですが、訴訟や調停を申し立てる必要がありますか? また、時効はあるのですか?

他の相続人等に遺留分の支払を求めることを、遺留分減殺(げんさい)請求といいます。裁判手続を経る必要はなく、相手方となる相続人等に書面で通知するだけでも構いません。ただ、後述するように、遺留分減殺請求には時効がありますので、書面で請求をする場合には、内容証明郵便を利用して請求した時期と内容を確認できるようにしておいた方がよいでしょう。

遺留分減殺請求は、被相続人が死亡したことと、自身の遺留分が侵害されていることを知った時(正確に言うと、相続の開始および遺留分を侵害している贈与または遺贈があったことを知った時)から1年間行使しないと、時効によって消滅します。被相続人の死亡から10年を経過したときも同じです。時効期間が短いので、請求する意思がある場合は、いつか請求すればいいと放っておかず、速やかに手続をするべきです。

また、減殺請求をしても、相手方の相続人等が支払に応じないことも多いので、早い段階で弁護士に相談し、適切に対処すべきでしょう。

遺留分減殺請求をする相手は誰ですか? 相続人であれば誰でもよいのですか?

遺留分減殺請求の相手方は誰でもよいわけではなく、法律上次のように定められています

①遺贈と贈与がある場合は、まず受遺者(遺贈を受けた者)に対して請求し、遺贈の減殺のみでは遺留分を満足できないときに受贈者(贈与を受けた者)に対して請求する(民法1033条)。
②受遺者が複数ある場合、原則としてその目的の価額に応じて減殺する。例えば、Aが2400万円、Bが3000万円の遺贈を受けていて、Cが900万円の遺留分の減殺請求をする場合、Aに対して400万円〔=900万×2400万/(2400万+3000万)〕、Bに対して500万円〔=900万×3000万/(2400万+3000万)〕の減殺請求をする(民法1034条本文)。
③贈与を減殺する場合は、新しい贈与を先に減殺し、順次古い贈与を減殺する(民法1035条)。

亡父の遺品を整理していたら、遺言書が出てきました。どうしたらよいでしょうか?

公正証書遺言以外の遺言書が見つかった時には、見つけた者は遅滞なく家庭裁判所に提出して「検認」という手続きを請求しなければなりません。検認手続きは、弁護士に代理を頼むこともできます。封印のある遺言書の場合には、家庭裁判所に開封の申立をする必要がありますので、ご遺族であっても開封には注意が必要です。勝手に開封しても遺言が無効となるわけではありませんが、5万円以下の過料が科せられることがあります。遺言の手続は様々ですので、まずは弁護士へ連絡されることをお勧め致します。

相続人は、遺言書の内容に拘束されるのですか。遺言と異なる遺産の配分はできないのですか。

遺言書は故人の最終意思が記されたものであり尊重されなければなりませんが、有効な遺言書であっても、例えば、遺留分を侵害するような場合には遺留分減殺請求の対象となります(詳細は、「遺留分」をご参照下さい。)。また、遺言書により利益を受ける者や法定の相続人らの話合いで、遺言とは異なる分割方法を決めることもできます。

父の四十九日の後に親族が集まったところ、2つの遺言書が出てきました。作成された時期は異なるようですが、どの遺言が有効なのでしょうか?それともいずれも無効なのでしょうか?

遺言は、被相続人の最終的意思を尊重し確保する制度ですから、被相続人は生存中、いつでも自由に遺言を書き変える(撤回する)ことができます。そして、作成日付と内容を異にする複数の遺言が存在したときは、後に作成された遺言によって前の遺言が撤回されたとみなされます。

自筆証書遺言を作成する場合の注意点について教えて下さい。

自筆証書の作成にあたっては、全文を自筆すること、日付を記載すること、署名・押印をすること等が必要です。これらに反する遺言書は無効となりますので注意が必要です。自筆証書遺言は遺言者自身で作成できる点で便利ですが、遺言の内容が不明確であったり、本当に本人が作成したのかはっきりしなかったりといった問題がありますので、一度弁護士に相談されることをお勧めします。

公正証書遺言とはどのようなものですか。作成の費用はどの程度かかりますか。

公正証書遺言は、証人二人の立ち会いのもとで、公証人が遺言の内容を筆記し、これに公証人、遺言者、証人二人が署名押印するものです。遺言者の遺言であることを公証人が確認していますので、後の裁判でこれが無効となることはとても少ないとされています。公正証書遺言の作成費用は、相続財産の額により異なります。

亡くなった夫の遺言が見つかり、可愛がっていた長男に全財産を相続させるというものでしたが、他の相続人(妻と次男)は納得できません。この様な遺言でもそのとおりに従うしかないのですか?

遺言という制度は、被相続人がその相続財産を自由に処分することができることが前提となっていますが、この自由を広く認めると、相続人の生活が犠牲となることがあります。そこで、遺留分の制度が認められました。遺留分とは、被相続人が遺言によっても自由に処分できない財産のことを言います。
遺留分の範囲は、本件のように妻又は子が相続人となる場合、遺留分は相続財産の2分の1、被相続人の直系尊属だけが相続人の場合には3分の1、兄弟姉妹には遺留分はありません(1028条)。つまり、本件のような場合に、相続財産が1億円あるとすると、妻と次男は総額の遺留分として2分の1の5,000万円があることを前提に、これを法定相続分によって分割し、妻は2分の1の2,500万円、次男は4分の1の1,250万円を遺留分の減殺請求として長男に対して主張することができます。遺留分を侵害する遺言であっても直ちに無効となるわけではなく、相続人が減殺請求をしたときに初めて取り戻す権利が生まれます。この遺留分減殺請求権は、相続の開始及び減殺すべき遺贈または贈与があったことを知った時から、1年間これを行わない時は時効により消滅するものとされていますから、遺留分を主張しようとする場合、早急に弁護士等に相談して権利行使する必要があります。

次男夫婦は私たち夫婦と同居して家業を手伝い亡父の財産形成を手伝ってきました。このような場合には相続分に差を設けないと不公平ではないでしょうか?

これがいわゆる寄与分の問題です。このように被相続人の財産形成に協力した者(弟)としない者(弟以外)の間では、法定相続分による相続ではかえって不公平となります。そこで、このように、被相続人の生前に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産の給付、被相続人の療養監護その他の方法により、被相続人の財産の維持または増加につき特別の寄与をした者があるときは、この寄与により維持され、または増加した相続財産(寄与分)をその寄与をした相続人が取得し、寄与者を含めた相続人はその余の相続財産を相続分によって分けることとなります(904条の2)。例えば、亡父の相続財産が1億1,000万円あり、妻と子(兄弟2人)で相続する場合に、その内1,000万円は弟の寄与によるならば、この1,000万円を除外した1億円を法定相続分で分割し、妻はその2分の1の5,000万円を、兄はその残りの2分の1の半分の2,500万円を相続し、弟は2,500万円に寄与分の1,000万円を加えた3,500万円を相続することになります。

亡父の生前に相当の財産を貰った者と貰っていない者があります。その相続分に差を付けないと不公平ではないでしょうか?

これがいわゆる特別受益の問題です。このように生前に相当の財産(特別受益)を貰った者(兄)と貰わない者(兄以外)の間では、法定相続分による分割ではかえって不公平となります。そこでこのような場合には、被相続人から特別受益者から生前贈与を受けまたは遺贈を受けた財産を相続財産に加えた上でこれを法定相続分で分け、相続の際に実際に特別受益者が相続するのは、子の法定相続分から特別受益を差し引いた分とします(903条)。例えば、亡父の相続財産が1億円あって、特別受益がない場合、妻と子(兄弟2人で相続するなら、妻が2分の1の5,000万円、子は残りの2分の1を兄弟で半分ずつの2,500万円ずつとなります。この場合に、兄が2,000万円の生前贈与(特別受益)を受けていたとすると、これを加えた1億2,000万円を相続財産と考えて、妻はその2分の1の6,000万円、弟は残りの2分の1の半分の3,000万円、兄は3,000万円から生前に贈与を受けた2,000万円を差し引いた1,000万円しか相続できないこととなります。

遺産分割の方法につき、相続人間で話がつかないときは、どうしたら良いのですか。分割方法の基準はありますか?

相続人間の話し合いで遺産分割が出来ないときは、相続人の誰かが他の相続人全員を相手方として家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。申立てを行う家庭裁判所は、いずれかの相手方所在地の家庭裁判所、または相続人全員の合意で決めた家庭裁判所ということになります。調停というのは、裁判所の調停委員が取り持って話し合いを進める手続きです。通常月に1回程度の割合で調停期日が開かれます。各相続人は、各別に調停委員に自分の考えを言うことができ、調停委員は全員の言い分を聞きながらその調整をしてくれます。調停でも話合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の審判に移行します。審判というのは、家庭裁判所の裁判官が一切の事情をもとに遺産分割の方法を決めるものです。審判の際の遺産分割の基準となるのが、法定相続分(900条)です。妻と子が相続人の場合は、妻が2分の1、子が2分の1であり、子が複数いるときはこの2分の1を平等に分けます。養子と実子の間で相続分に差別はありませんが、子のなかに非嫡出子があるときは、非嫡出子の相続分は嫡出子と平等ではなく、嫡出子の2分の1の割合となります。妻と亡夫の両親が相続人の場合は、妻が3分の2、両親が3分の1の相続分となります。妻と亡夫の兄弟姉妹が相続人の場合は、妻が4分の3、兄弟姉妹が4分の1を相続し、兄弟姉妹が複数いるときはこの4分の1を平等に分けます。法定相続分を修正するのが問4の遺言書や、問7の特別受益や、問8の寄与分です。審判の際の遺産分割の基準が法定相続分であることから、前段階の遺産分割調停や、相続人間の遺産分割協議においても、法定相続分は協議をまとめるための一つの基準となります。家庭裁判所の審判の結果に不服がある相続人は、高等裁判所に即時抗告して更に争うことができます。

相続財産を、相続人の間でどのように分けたらよいのでしょうか?いつまでに分けなければならないのでしょうか?

相続財産を分けることを遺産分割といいます。遺産分割は、相続人全員の話合いで行うのが原則で、全員の合意が得られるのであれば、どの様な内容でもかまいません。子供同士で相続分に差をつけたり、一部の相続人が何も貰わないように決めても良いのです。遺産分割協議の目安となるのが答6で説明する法定相続分です。遺産分割をいつまでにしなければならないということはありません。但し、相続税の申告には期限があり、相続開始を知った日の翌日から10か月を経過する日までに申告する必要があります。万一この日までに分割協議ができていない時には、仮に民法所定の相続分等に従って相続税を支払うことになります。

死んだ夫の相続財産は、現金、預貯金、不動産などのプラスの財産より負債が多いため、できることなら相続をしたくありません。そのようなことができますか?借金は相続しないで、プラスの財産を相続することはできますか?

プラスの財産よりも負債が多く相続を希望しない場合、相続人は、通常被相続人の死亡を知ったときから3か月以内に限り、家庭裁判所に相続放棄の届出をすることができます。相続放棄の届出をすれば、負債の相続をしなくてよくなりますが、プラスの財産を含め一切の相続財産を相続することができなくなります。借金は相続しないで、プラスの財産だけを相続することはできません。それどころか、処分したりすると、単純承認したことになり(921条)、相続放棄をすることができなくなりますから注意が必要です。プラスの財産の範囲内で負債を相続する限定承認という制度があります(922条)が、相続放棄と同じく3か月以内に家庭裁判所に(924条)、しかも、共同相続人の全員が共同してのみ申し立てができます(923条)。3か月以内に相続放棄や限定承認などの届出をしないと、自動的に単純相続、すなわちすべての権利義務を相続したことになります。

死んだ夫には多額の借金があります。相続財産には借金も含まれますか?夫が保証人になっている場合、保証債務も相続されますか?生命保険金は相続財産に含まれますか?

借金も相続財産に含まれます。相続財産は、「被相続人の財産に属した一切の権利義務」(896条)と規定されており、これには負債つまり借金も含まれるものと解されています。負債を相続した場合、相続財産で支払い切れないときには、相続人の固有の財産で返済しなければなりません。相続が開始した場合、相続人は被相続人の相続財産の目録を作成しておくと、その後の手続きに役立ちます。その際は、負債も目録に記載しておくべきです。負債の中には普通の保証債務も含まれ、相続後に保証人としての責任を追及されることもあり得ますから注意が必要です。ただし、夫が知人の就職先への身元保証をしていた様な場合には、内容不確定な継続的保証債務であることから、被相続人の一身に専属したもの(869条但書き)として相続財産たる負債には含まれません。夫が相続人を保険金受取人として指定している場合の生命保険金は、保険契約によって保険会社から受取人が直接受領するもので、相続財産ではありません(従って、答3で説明する相続放棄をしても生命保険金は受け取れます)。ただし、相続税の関係ではいわゆる見做し相続財産として課税対象となります。

夫が死亡しましたが、相続人となるのは誰ですか?

まず、妻のほかに子がある場合は、配偶者である妻(民法890条)と子(887条1項)が相続人となります。子は、養子も含みますし、非嫡出子(いわゆる婚外子)も含みます。養子が養親から相続できるのなら、実親からは相続できないことになりそうですが、他家に養子にいった子も実親の相続人となります。胎児も相続についてはすでに生まれた子として相続権がありますが、死んで生まれたときには最初から相続人でなかったものとされます(886条)。子が夫より先に死亡しているときでも、孫が生きていれば、孫が子に代わって相続人となり、これを「代襲相続」といいます(887条2項)。子も直系尊属もなく亡夫の兄弟姉妹がいる場合には、妻のほかに夫の兄弟姉妹が相続人となります(889条1項)。兄弟姉妹が先に死亡しているときでも、その子(甥や姪)が生きていれば、甥や姪が代襲相続します(同条2項)。