東京弁護士会

遺言・相続に関しての質問

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「遺言・相続」に関しての質問一覧
夫が死亡しましたが、相続人となるのは誰ですか?
死んだ夫には多額の借金があります。
①相続財産には借金も含まれますか?
②亡夫が他人の借金の保証人になっていた場合、保証債務も相続財産に含まれますか?
③生命保険金は相続財産に含まれますか?
死んだ夫の相続財産は、現金、預貯金、不動産などのプラスの財産よりも借金などのマイナスの財産が多いです。
①亡夫の財産を一切相続しないことはできますか?
②マイナスの財産は相続しないで、プラスの財産だけを相続することはできますか?
③プラスの財産の範囲で亡夫の借金を返済することができますか?
①相続財産は、相続人の間で自由に分けてもよいのでしょうか?
②いつまでに分けなければならないのでしょうか?
共同相続人(相続人が複数いる場合の相続人のことをいいます)のひとりが、10年前から行方不明になっています。行方不明者以外で遺産分割をしてもよいでしょうか?
遺産分割につき、相続人間で話がつかないときは、どうしたら良いのですか?分割方法の基準はありますか?
父が亡くなって、相続人は私と弟の兄弟2人だけです。相続財産は現金2,000万円だけでした。弟は、5年前に株の投資で失敗し、亡父から総額1,000万円の援助を受けていました。弟のせいで相続財産が減ったのに私と弟が同じ相続分というのは不公平ではないでしょうか?
夫が亡くなり、相続人は妻の私と、長男、次男だけです。長男は、亡夫と一緒に家業の農業を営んできました。次男は資金援助もせず家業には一切かかわっていません。亡夫の遺産は夫と長男で築いたものなのに、長男と次男が同じ割合で相続することは不公平ではないでしょうか。長男が相続する分を次男より多くすることはできますか?
私の夫が2年前に他界し、その後も私は亡夫の寝たきりの義母を介護してきましたが、亡夫の兄姉は、義母の介護に一切協力しませんでした。今年義母も他界したのですが、私が義母に尽くした分は義母の相続財産から支払ってもらうことはできないのでしょうか?
亡父の遺品を整理していたら、遺言書が出てきました。どうしたらよいでしょうか?
夫の四十九日の後に親族が集まったところ、2つの遺言書が出てきました。作成された時期は異なるようですが、どの遺言が有効なのでしょうか?それともいずれも無効なのでしょうか?
公正証書遺言とはどのようなものですか?
自筆証書遺言を作成する場合の注意点について教えて下さい。
遺言書保管制度について教えてください。
相続人は、遺言書の内容に拘束されるのですか?遺言と異なる遺産の配分はできないのですか?
死んだ夫の遺言が見つかり、夫が可愛がっていた長男に全財産を相続させるというものでした。私と次男も相続人ですが、遺言に従えば私と次男は夫の財産を一切取得できないのでしょうか?
遺留分侵害額の請求をするときには訴訟や調停を申し立てる必要がありますか?
遺留分侵害額の請求をする相手は誰ですか?

夫が死亡しましたが、相続人となるのは誰ですか?

まず、妻のほかに子がいる場合は、配偶者である妻と子が相続人となります(民法890条・887条1項)。
相続人となる子には、養子や非嫡出子(いわゆる婚外子)も含まれます。
また、養子は養親だけでなく実親の相続人にもなります(ただし、特別養子の場合は実親の相続人にはなりません)。

亡夫の死亡時に胎児がいたときは、胎児もすでに生まれた子としてみるので相続人になりますが、生まれる前に死んだときには最初から相続人でなかったものとされます(886条)。

子が亡夫より先に死亡しているときでも、孫が生きていれば、孫が子に代わって相続人となります。これを「代襲相続」といいます(887条2項)。

子もその代襲相続人もいないときは、妻と夫の直系尊属が相続人となります。子、代襲相続人、直系尊属がいなくて、亡夫に兄弟姉妹がいる場合には、妻と、亡夫の兄弟姉妹が相続人となります(889条1項)。
亡夫の兄弟姉妹が先に死亡しているときでも、その子である甥や姪が生きていれば、甥や姪が代襲相続人となります(同条2項)。

死んだ夫には多額の借金があります。
①相続財産には借金も含まれますか?
②亡夫が他人の借金の保証人になっていた場合、保証債務も相続財産に含まれますか?
③生命保険金は相続財産に含まれますか?

①借金も相続財産に含まれます。相続財産は、「被相続人の財産に属した一切の権利義務」(896条)と規定されており、これにはマイナスの財産つまり負債も含まれます。
相続した借金をプラスの相続財産で支払い切れないときには、相続人の固有の財産で返済しなければなりません。
亡夫の相続財産の目録を作成しておくとその後の手続きに役立ちますが、借金も忘れないように目録に記載しておきましょう。

②相続財産には普通の保証債務も含まれます。相続後に保証人としての責任を追及されることもあり得ますから注意が必要です。
ただし、亡夫が知人の身元保証人となっていた場合のように、亡夫と相手との相互の信頼関係で成り立つ保証の場合には、その保証債務は夫の一身専属権として相続財産に含まれません(896条但書)。

③妻が受取人として受け取る亡夫の生命保険金は相続財産に含まれません。
亡夫があらかじめ指定した保険金受取人に支払われる生命保険金は、保険契約によって保険会社から直接支払われるものだからです。そのため、A3で説明する相続放棄をしても、生命保険金は受け取れます。
ただし、相続税の関係では、いわゆる「みなし相続財産」として課税対象となります。

死んだ夫の相続財産は、現金、預貯金、不動産などのプラスの財産よりも借金などのマイナスの財産が多いです。
①亡夫の財産を一切相続しないことはできますか?
②マイナスの財産は相続しないで、プラスの財産だけを相続することはできますか?
③プラスの財産の範囲で亡夫の借金を返済することができますか?

①亡夫が死んだことを知ったときから3か月以内であれば、家庭裁判所に「相続放棄」の届出をして、亡夫の財産を相続しないことができます(915条1項)。相続放棄により、プラスマイナスの一切の相続財産を相続しないことができます。

②プラスの財産だけを相続することはできません。
もし相続人がプラスの財産である現金を使用したりすると、相続放棄の前後にかかわらず相続を「単純承認」したことになり相続放棄をすることができなくなりますから注意が必要です(921条)。

③プラス財産の範囲内でマイナス財産を相続する「限定承認」という制度がありますので、相続放棄と同じく3か月以内に家庭裁判所に申立てをすれば、相続したプラス財産の限度でのみ借金を返済することができます(922条・924条)。ただし、相続人が複数いる場合は、相続人全員が共同しないと限定承認の申し立はできません(923条)。
※夫が死んだことを知ったときから3か月以内に相続放棄や限定承認などの手続きをしないと、自動的にすべてのプラスマイナス財産を相続したことになりますので注意してください。なお、3か月をすぎてから、借金があることが判明したような場合には、その時点から3か月以内であれば相続放棄できることもありますので、弁護士にご相談ください。

①相続財産は、相続人の間で自由に分けてもよいのでしょうか?
②いつまでに分けなければならないのでしょうか?

①相続財産を分けることを「遺産分割」といいます。遺産分割は、相続人全員の話合いで行うのが原則で、全員の合意があれば、どの様な内容でもかまいません。兄弟で相続分に差をつけたり、一部の相続人が何も貰わないように決めても良いのです。遺産分割協議の目安となるのがA6で説明する法定相続分です。

②遺産分割をいつまでにしなければならないということはありません。ただし、相続税の申告には期限があり、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に申告する必要があります。万一この日までに分割協議ができていないときには、民法が定める相続分等に従って相続税を支払うことになります。

共同相続人(相続人が複数いる場合の相続人のことをいいます)のひとりが、10年前から行方不明になっています。行方不明者以外で遺産分割をしてもよいでしょうか?

行方不明者以外の者で遺産分割をしてもその遺産分割は無効です。

家庭裁判所は、共同相続人等の申立によって、行方不明者の代わりにその財産を管理する不在者財産管理人を選任します(25条1項)。この不在者財産管理人を行方不明者の代わりに遺産分割の協議に加えることができます(ただし、家庭裁判所の許可が必要です。28条)。

また、行方不明の期間が極めて長期にわたる場合は、行方不明者の失踪宣告の申立をし、行方不明者が死亡しているものとして遺産分割協議をすることも考えられます(30条・31条)。

遺産分割につき、相続人間で話がつかないときは、どうしたら良いのですか?分割方法の基準はありますか?

相続人間の話し合いで遺産分割が出来ないときは、相続人の誰かが他の相続人全員を相手方として家庭裁判所に遺産分割「調停」または遺産分割「審判」の申し立てをすることができます。申立てを行う家庭裁判所は、いずれかの相手方所在地の家庭裁判所、または相続人全員の合意で決めた家庭裁判所です。

「調停」とは、裁判所の調停委員が取り持って話し合いを進める手続きです。通常月に1回程度の割合で調停期日が開かれます。各相続人は、各別に調停委員に自分の考えを言うことができ、調停委員は全員の言い分を聞きながらその調整をしてくれます。調停で話合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の「審判」に移行します。これは、家庭裁判所の裁判官が一切の事情をもとに遺産分割の方法を決めるものです。

審判の際の遺産分割の基準となるのが、「法定相続分」(900条)です。妻と子が相続人の場合は、妻が2分の1、子が2分の1であり、子が複数いるときはこの2分の1を平等に分けます。

また、妻と、亡夫の両親だけが相続人の場合は、妻が3分の2、両親が3分の1の相続分となります。妻と、亡夫の兄弟姉妹だけが相続人の場合は、妻が4分の3、兄弟姉妹が4分の1を相続し、兄弟姉妹が複数いるときはこの4分の1を平等に分けます。

この法定相続分を修正するのが遺言書(Q10~Q15)、特別受益(Q7)、寄与分(Q8・Q9)などです。審判の際の遺産分割の基準が法定相続分であることから、前段階の遺産分割調停や、相続人間の遺産分割協議においても、法定相続分は協議をまとめるための一つの基準となります。

家庭裁判所の審判の結果に不服がある相続人は、高等裁判所で更に争うことができます。
なお、相続法改正により、被相続人の死去が2019年7月1日以降の場合には、一定の要件の下で、各相続人が他の相続人の同意を得ずに、一定額以内の預貯金債権を行使することが認められるようになりました(909条の2)。

父が亡くなって、相続人は私と弟の兄弟2人だけです。相続財産は現金2,000万円だけでした。弟は、5年前に株の投資で失敗し、亡父から総額1,000万円の援助を受けていました。弟のせいで相続財産が減ったのに私と弟が同じ相続分というのは不公平ではないでしょうか?

いわゆる特別受益(903条)の問題です。

本件のように、生前に相当の財産(特別受益)を貰った者(弟)と貰わない者(兄)の間では、法定相続分にしたがって分割をしたのではかえって不公平となります。

そこでこのような場合には、生前贈与または遺贈された財産の額を元々の相続財産に加えたものを相続財産とみなすこととし、これを法定相続分で分けることにします。そして、特別受益を受けた者の実際の相続分は、法定相続分から特別受益分を差し引いたものということになります。

本件で弟が亡父から受けた1,000万円の援助は、弟の特別受益となります。そこで、この1,000万円を相続財産2,000万円に加えた3,000万円が亡父の相続財産とみなされます。そうすると、兄の相続分は3,000万円の2分の1である1,500万円となり、弟の相続分は3000万円の2分の1である1,500万円からさらに特別受益分を差し引いた500万円ということになります。

夫が亡くなり、相続人は妻の私と、長男、次男だけです。長男は、亡夫と一緒に家業の農業を営んできました。次男は資金援助もせず家業には一切かかわっていません。亡夫の遺産は夫と長男で築いたものなのに、長男と次男が同じ割合で相続することは不公平ではないでしょうか。長男が相続する分を次男より多くすることはできますか?

「寄与分」があると認められれば長男が次男よりも多く遺産を相続できます。

寄与分という制度は、被相続人の事業を手伝ったり、被相続人の看護をしたりして、被相続人の財産の維持増加に貢献(寄与)した相続人については、その貢献(寄与)に応じた相続分の増加を認めるものです(904条の2)。

本件で亡夫の相続財産が1億1,000万円で、そのうち長男の寄与によって増加した財産が1,000万円とした場合には、1,000万円を長男の寄与分として相続財産から除外し、残り1億円を法定相続分で分割して相続します。そうすると、妻は相続財産の2分の1の5,000万円、次男は4分の1の2,500万円を相続し、長男は4分の1の2,500万円と寄与分の1,000万円を加えた3,500万円を相続することになります。

もっとも、寄与分が認められるためには、その貢献が通常期待される以上の「特別」のもので、その貢献と被相続人の財産の増加との間に因果関係があることが必要であり、その証明はなかなか困難なものがあります。
自分の貢献が寄与分として認められるものかどうかについては、弁護士に相談されることをお勧めします。

私の夫が2年前に他界し、その後も私は亡夫の寝たきりの義母を介護してきましたが、亡夫の兄姉は、義母の介護に一切協力しませんでした。今年義母も他界したのですが、私が義母に尽くした分は義母の相続財産から支払ってもらうことはできないのでしょうか?

被相続人(義母)の親族(相続人にあたらない者)が、被相続人に対し、無償で介護をするなどして財産の維持・増加に特別の寄与をしたと認められる場合には、相続人に対し、特別の寄与に応じた額の特別寄与料の支払いを請求することができます(1050条)

相続人との間で協議が整わない場合は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができますが、その申立ては、相続の開始および相続人を知った時から6か月以内、かつ相続開始の時から1年以内に行う必要があります(1050条2項)。

特別の寄与を金銭的に評価することや相続人と交渉することは容易ではありませんので、早急に弁護士と相談されることをお勧めします。

亡父の遺品を整理していたら、遺言書が出てきました。どうしたらよいでしょうか?

遺言書を保管している人は、相続開始を知った後、遅滞なく「検認」の手続を請求する必要があります。遺言書を保全し、関係者に広く周知して、公正かつ迅速に遺言の内容を実現するためです。公正証書遺言の場合は検認不要です(1004条)。

封印のある遺言書は裁判所で開封する必要があり、相続人であっても勝手に開封すると過料に処せられる場合があるので注意が必要です(1004条3項)。

なお、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」の施行によって、2020年7月10日より自筆証書遺言の保管制度が開始されました。自筆証書遺言を作成した人が法務局の遺言書保管所に遺言書の保管を申請できるようになり、遺言者の死亡後であれば、相続人らは遺言書保管所に遺言の内容を確認できます。検認も不要です。

検認や開封の手続きは、弁護士に依頼することもできます。遺言の手続は様々ですので、まずは弁護士と相談されることをお勧めします。

夫の四十九日の後に親族が集まったところ、2つの遺言書が出てきました。作成された時期は異なるようですが、どの遺言が有効なのでしょうか?それともいずれも無効なのでしょうか?

遺言が2つあっても、内容が互いに抵触・矛盾しなければ、いずれの遺言書も有効です。

問題は、遺言の内容が抵触・矛盾する場合です。遺言は、故人(被相続人)の最終的意思を尊重し確保する制度ですので、抵触・矛盾する部分については、後に作成された遺言によって前の遺言が撤回されたとみなされます。

作成日付が同じ2つの異なる内容の遺言がある場合、故人の最終的意思をできるだけ尊重するため、遺言の内容等を吟味して遺言の先後を確認しますが、どうしても先後がはっきりしない場合は、同時に2つの矛盾する遺言をしたものとみなし、抵触・矛盾する部分は無効とするのが通説的見解です。

複数の遺言の優劣は、上記のように難しい検討を要しますので、複数の遺言が見つかった場合は弁護士に相談することをお勧めします。

公正証書遺言とはどのようなものですか?

公正証書遺言は、証人2人の立ち会いのもとで、公証人が遺言の内容を筆記し、これに公証人、遺言者、証人2人が署名押印して作成するものです(969条)。未成年者や、推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族等は証人となることができません(974条)。

遺言者の遺言であることを公証人が確認していますので、後の裁判でこれが無効となることは少ないとされています。

自筆証書遺言を作成する場合の注意点について教えて下さい。

自筆証書遺言の作成にあたっては、全文を自筆すること、日付を記載すること、署名・押印をすること等が必要です。なお、2019年1月13日以降に作成される遺言書については、相続財産の目録部分を自筆せずに、パソコンで作成したり、預金通帳のコピーを添付したりすることができるようになりましたが、自書によらない財産目録を添付する場合には、目録の全ての頁に署名押印をしなければなりませんので、注意が必要です(968条)。

自筆証書遺言は遺言者自身で作成できる点で便利ですが、相続人は家庭裁判所で遺言の検認を受けなければならず、形式的な不備、遺言の内容が不明確、本当に本人が作成したのかはっきりしない等の理由で無効となってしまう場合がありますので、一度弁護士に相談されることをお勧めします。

遺言書保管制度について教えてください。

公正証書遺言は、遺言者の遺言であることを公証人が確認しているため、後の裁判で無効となることがとても少ないとされていますが、証人の立ち合いが必要なことや費用もかかることから、作成することが容易でない場合もあります。そこで、2020年7月10日以降、自筆証書遺言を法務局(遺言書保管所)で保管する遺言書保管制度を利用できることになりました。遺言保管場所には遺言者本人が自ら出頭して申請する必要があり、また遺言書保管所に保管される遺言書は、封のされていない、一定の様式のものである必要がありますが、保管時に様式の確認がなされるため、形式的な不備で無効とされるおそれは少なく、相続人においても検認を受けなくてもよいというメリットがあります。

相続人は、遺言書の内容に拘束されるのですか?遺言と異なる遺産の配分はできないのですか?

遺言書は故人の最終意思が記されたものであり尊重されなければなりませんが、有効な遺言書であっても、例えば、遺留分を侵害するような場合には遺留分侵害額の請求の対象となります(詳細はQ16をご参照ください。)。

また、遺産分割において相続人全員の合意があれば遺言の内容とは異なる分割方法を定めることもできます。

死んだ夫の遺言が見つかり、夫が可愛がっていた長男に全財産を相続させるというものでした。私と次男も相続人ですが、遺言に従えば私と次男は夫の財産を一切取得できないのでしょうか?

「遺留分」として取得できる可能性があります。

遺言という制度は、被相続人がその財産を自由に処分できることが前提となっていますが、この自由を広く認めると、相続人の生活が犠牲となることがあります。そこで、遺留分の制度が認められました。遺留分とは、被相続人が遺言によっても自由に処分できない財産のことをいいます。

遺留分の範囲は、本件のように妻と子が相続人となる場合には相続財産の2分の1、配偶者や子がおらず直系尊属だけが相続人となる場合には相続財産の3分の1となります。兄弟姉妹には遺留分はありません(1042条)。

夫の相続財産が現金1億円とした場合、妻と次男の遺留分は5,000万円(2分の1)となります。そのうち妻と次男の取り分は法定相続分にしたがって決まりますので、妻は2分の1の2,500万円、次男は4分の1の1,250万円を遺留分として、遺留分を侵害された額を長男に請求できます(遺留分侵害額の請求、1046条)。

この遺留分侵害額の請求(旧法下では遺留分減殺請求と呼ばれていました。)は、被相続人が死亡したことと、自身の遺留分が侵害されていることを知った時(正確には「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時」)から「1年」の間に行わないと時効により消滅します。被相続人の死亡から10年を経過したときも同じです(1048条)。

時効期間が短いので、遺留分を侵害された額を請求しようとする場合には、早急に弁護士に相談することをお勧めします。

遺留分侵害額の請求をするときには訴訟や調停を申し立てる必要がありますか?

訴訟や調停によらなくても、請求の相手方となる相続人等に書面で通知して請求するだけでも構いません。なお、このときは必ずしも金額を明示する必要はないと言われています。

ただ、A16で説明したように遺留分侵害額請求権には時効がありますので、書面で請求をする場合には、内容証明郵便を利用して請求した時期と内容を証明できるようにしておいた方がよいでしょう。

遺留分侵害額の請求をしても、相手方の相続人等が支払に応じないことも多いので、早い段階で弁護士に相談し、適切に対処すべきでしょう。なお、支払に応じない場合は、最終的には、訴訟により遺留分侵害額の支払いを請求することになります。

遺留分侵害額の請求をする相手は誰ですか?

遺留分侵害額の請求の相手方は、法律上次のように定められています。

① 遺贈と贈与がある場合は、まず受遺者(遺贈を受けた者)に対して請求し、受遺者に対して請求できる額のみでは遺留分侵害額に満たないときに受贈者(贈与を受けた者)に対して請求する(民法1047条1項1号)。

② 受遺者が複数ある場合、原則としてその目的の価額に応じて請求する。例えば、Aが2400万円、Bが3000万円の遺贈を受けていて、Cが自己の遺留分を900万円分侵害されている場合には、Aに対して400万円〔=900万×2400万/(2400万+3000万)〕、Bに対して500万円〔=900万×3000万/(2400万+3000万)〕の請求をする(民法1047条1項2号本文)。

③ 受贈者に対して請求する場合は、まず新しい贈与の受贈者が負担し、それのみで遺留分侵害額に満たないときには、順次古い贈与の受贈者が負担する(民法1047条1項3号)。