弁護士、離乳食を届ける(山川 幸生)
「離乳食がないんです!」
電話でSOSが入りました。
受話器の向こうは、以前、都内の避難所で相談に応じたことのある被災者の方でした。1歳になったばかり女の子を抱えるお母さんです。
話を聞けば、別の避難所に移ったところ、入所して数日で離乳食の供給がストップしてしまい、大変困っているようでした。仕方がないので、スーパーでうどんを買ってきて、そのうどんを洗面所でお湯をかけてほぐして、つぶして離乳食の代わりにしているということでした。
その避難所に行って様子をうかがったところ、離乳食を出す予定は特にないようでした。
自治体に提供を直接要請するという方法もあるのですが、経験上時間がかかるので、まずはツテをたどって企業などに協力を要請しました。なかなか色よい返事をする企業がなく途方に暮れていたところ、あるボランティア団体の関係者の協力で離乳食を届けることができました。
届けた離乳食は、同じような境遇のお母さんたち7人で均等に分けたそうです。お母さんたちの窮状を訴えたところ、ようやく自治体も動き始め、その後は希望者に離乳食が配付されるようになりました。
いま、私は、弁護士会の生活支援チームの一員として、都内の避難所に入っています。なぜ、弁護士が生活支援なのか、疑問に感じられる方も多いかもしれません。
避難している方々は生活と密接にかかわる問題に日々悩んでいます。避難所の食事、子どもの保育・教育、生活費の問題などです。これらの中には、争いごとという意味での法律問題はあまりありません。
しかし、人々が普通の暮らしを送れるようにサポートすることは、基本的人権の根っこにかかわることです。人権を擁護する責務を負った弁護士としては、生活支援の問題を無視できないはずです。
避難所を運営する行政との間でやり取り(時にはバトルも...)が必要な事柄もあり、弁護士のサポートがあれば支援がスムーズに進むこともあります。物資などは弁護士が関係するボランティア団体と協力すれば迅速に供給できることもあります。
今後も自治体や諸団体と協力して、被災者の方々が日々の生活に困ることのないように支援していきたいと考えています。
(弁護士・山川 幸生)