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民事介入暴力対策特別委員会

民事介入暴力対策特別委員会

 

プロ野球暴排

 プロ野球の各球場において、暴力団や悪質応援団が、外野自由席を占拠して一般の観客を排除し、席を高値で転売したり、無許可で応援グッズを販売したり、粗暴行為を繰り返して一般の観客に迷惑をかけたりすることが常態化して、とても目に余る状況でした。

 そこで、2003年(平成15年)11月18日、プロ野球12球団と球場経営企業、日本プロ野球機構のコミッショナー等が「プロ野球暴力団等排除対策協議会」(以下「暴排協議会」と言います。)を設立し、同年12月9日、「誰もが安心して観戦でき、選手がフェアープレーに専念できる球場を守るために」、「力をあわせて暴力団および悪質な応援団の排除に取り組むこと」を宣言しました。これは、プロスポーツ界としては初めての試みで、この暴排協議会による一連の暴排活動を「プロ野球暴排」と呼んでおります。

 具体的には、以下の宣言を採択しました。
① 暴力団や悪質な応援団を球場に入れない。
② 暴力団や悪質な応援団を、選手、監督、コーチらに接触させない。
③ 暴力団や悪質な応援団の不当な要求には屈しない。
④ 暴力・威迫など粗暴行為、ダフ屋行為、物品の無許可販売など、不正行為に対して厳正に対処し、断固たる措置をとる。

 この宣言を達成するために暴排協議会は、統一的な約款の策定を進め、2005年(平成17年)6月、暴排条項を盛り込んだ試合観戦契約約款及び特別応援許可規程を承認し、その内容に従って、各球団が個別に当該約款・規程を制定しました。この約款の内容として、暴力団またはこれに類する反社会的団体に所属する者等、所定の事由に該当する者には入場券を販売しないこと、応援団方式の応援は球団の許可制とすること、主催者は所定の事由に該当する観客に対して退場措置を取ることができること、禁止行為に違反した場合等を販売拒否対象者として指定すること等が定められました。

 他方、警察は、東京ドームの外野自由席を警備会社の社員に場所取りをさせて、業者等に席を販売していた暴力団関係者を東京都迷惑防止条例違反の容疑で逮捕したり、阪神タイガースの応援歌の著作権を詐称してCDを発売した私設応援団元会長の元暴力団員を著作権法違反で逮捕したりして、暴力団がプロ野球を資金源の1つにしていた実態を世間に知らしめて、プロ野球界からの暴排に寄与しました。

 2007年(平成19年)以降、東京三会の民暴委員会も、都内の球場である東京ドームと神宮球場の暴排活動を支援するために、毎年、球場職員や警備員らを対象に「実務者研修会」を実施しております。

 前述の暴力団等排除宣言に伴って制定された試合観戦契約約款によって、中日ドラゴンズの運営会社から、入場券販売拒否対象者へ指定された応援団員らが、同運営会社や他球団運営会社、日本野球機構を被告として、平成20年に応援等妨害禁止、入場券販売拒否の意思表示が無効であることの確認、慰謝料の支払い等を求めて名古屋地方裁判所に提訴しました。名古屋地方裁判所は平成22年1月28日、約款の解釈として、販売拒否対象者への指定の理由として特別応援許可申請において虚偽記載があったことは含まれないとしてその限度で裁量権の範囲を逸脱したとして、その場合の販売拒否対象者への指定の無効確認と慰謝料を認めましたが(それ以外は訴えの却下、請求棄却)、名古屋高等裁判所は平成23年2月17日、特別応援許可申請において虚偽記載があったことも本約款に違反するとして販売拒否対象者に指定できることを認め、原審が認容した部分を変更し、訴えの却下、請求棄却の判決を言い渡しました。そして、最高裁は平成25年2月14日、上告棄却・上告審不受理の決定をしております。

 この暴排協議会方式はその後、暴力団の資金源とならないように、様々な業界や大規模プロジェクトの暴排活動に取り入れられましたが、具体的に暴排を実現するためには、暴排宣言だけでなく、約款や協定書において、暴排条項とその違反行為に対する明確なペナルティを設けることが重要だと考えます。

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