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次世代の法曹育成を担う
法教育の魅力とやりがい
中沢信介 会員(65期)

2021年9月8日

中沢会員は、修習時代に興味をもった法教育に関わりたいと入会当時から法教育委員会に所属し、2021年度法教育委員会の委員長を務めています。
法教育委員会の活動内容や法教育の魅力とともに、自身の弁護士としての仕事や将来の展望についても話を聞きました。
法教育は次世代の法曹養成を担う意味でも重要な活動であると語る中沢会員。
委員会への関わり方やそこから得られたものにとどまらず、弁護士という仕事の可能性について、次世代を担う弁護士に是非知って欲しいメッセージをお届けします。

‐弁護士になることを決めたきっかけ‐

元々人と話すことが好きで、弁護士という職業に漠然とした憧れがあったのですが、司法試験に合格するには六法全書を丸暗記しなければならないと思ってあきらめていました。
大学は経営学部会計学科に進み、公認会計士を目指したのですが、会計学をしっかりと勉強しなかったせいでその面白さをうまく感じ取ることができませんでした。丁度その頃、法科大学院が出来るということで、初心に帰って弁護士を目指そうと思い、予備校に通って法律を勉強し、法科大学院に進学して司法試験を受けました。

‐現在取り扱っている業務について‐

所属している事務所の業務としては企業法務が多いのですが、私自身は個人事件も多いです。現在は男性側の離婚事件が相当数ありますが、マンション管理や破産事件、貸金に関する事件や遺言に関する事件など、幅広く取り扱っています。会計学の素養を生かすことができる株価算定などを扱っているのは少し珍しいかもしれませんが、面白いですよ。

‐法教育に関わるきっかけ‐

私は水戸修習だったのですが、修習生の時に夏休み中の小学生を対象とした法教育委員会の出張授業に同行させてもらいました。そこで行ったのは、まず、法律と関係のないパン作りという非言語コミュニケーションで児童と信頼関係を構築して、そのあとにルール作りを行うというものでした。一方的に教えるだけの授業ではなく、児童と信頼関係を築いた上でルール作りを行うことで、コミュニケーションがより円滑になり、結果として深い議論ができたという体験はとても楽しく、印象的でした。この時の体験があって、東弁に入会したら法教育委員会に入ろうと決めていました。

-法教育委員会の活動について-

東弁の法教育委員会は、現在123名の委員、13名の幹事、21名の研修員の合計157名が所属している人気の委員会です。
日常的には、学校や団体に向けた裁判傍聴会の実施、小学校・中学校・高校への出張授業(民事・刑事模擬裁判、ルール作り)、職業紹介授業への講師派遣を行っています。現在は、コロナ禍で思うように活動ができていませんが、今年中にはオンライン授業の実施を開始する予定で日々委員はアイデアを出し合っています。

1年で最も大きなイベントは、小学生と中・高生を対象とした「夏休みジュニア・ロースクール」で、2日間で6コースの模擬裁判や裁判傍聴を行っています。今年度は初のオンライン開催となったことから2コースとし、弁護士による刑事模擬裁判の実演を観て、追加質問をしたり、判決を考えてもらいました。全国から延べ111名にご参加いただき、弁護士も延べ104名が参加しました。

また、5年前から日本公認会計士協会東京会と共同開催している「オータムスクール」では、中学生を対象に、会計士の授業で模擬監査を行い、そこで発覚した横領事件につき共同正犯の成否を模擬裁判で体験してもらう等のイベントを行っており、こちらも人気企画となっています。その他にも自治体と連携しながら行っている活動もあります。

これらのイベントの魅力は何といっても規模が大きいことです。児童・生徒・弁護士(会計士)の延べ人数で200人以上が参加するわけですから、その盛り上がりと言ったら想像を遥かに超えるものです。もちろん準備に相当時間を割かれますが、成功させることができたときの喜びはひとしおです。
正・副委員長が全員64期より若い期で構成されており、若手が多く活躍している点も当委員会の特徴だと思います。また、出張授業は休日開催のものもあるので、参加できる曜日や時間を選択しやすく、子育て中の女性会員も多く活躍しています。

‐法教育のやりがい‐

法教育委員会は、「子どもを含む市民に対し、法、司法手続及び司法制度などに関する知識や考え方の習得のために、実践的かつ継続的な教育を実施する」ことを目的としています。特に大事にしていることは、確たる正解があるとはいえない問題に対し、自分の意見と立場が違う人の意見を聴き、考え、疑問に思ったことを自らの言葉で質問し、そして、また考え、自分なりの結論を出すことの大切さを子ども達に学んでもらうことです。
また、ジュニア・ロースクールに参加してくれた生徒が、ジュニア・ロースクールで法律の面白さや弁護士の仕事に興味をもち、法科大学院生となって見学に来てくれたり、実際に司法試験に合格したと報告をくれる例もあり、その時は法教育のやりがいを実感できます。法教育は、現場で法曹の魅力を発信する場としても重要であり、次世代の法曹育成という意味でも果たす役割はとても大きいと思います。

‐東京弁護士会の魅力‐

会員数の多さと多様性が一番の魅力ではないでしょうか。
1つの委員会でも委員の数が多いので、様々な人脈を築くことができます。法教育委員会は業務に直結する委員会ではありませんが、私は委員会を通じて得られた人脈によって業務の幅も広げることができました。
業務の幅を広げるという意味でも、困ったときの相談相手やリフレッシュの相手を作るという意味でも、他の弁護士とのつながりを築くことはとても大切です。東弁の委員会は、同じことに関心をもつ他の弁護士とのつながりを築くという意味でも、非常に大きな役割を果たしていると思います。
また、東弁には様々な法律相談の名簿があり、登録すると実際に担当が回って来る頻度もある程度高いので、仕事につながる機会も多いと感じています。

‐弁護士としてのこれからの展望‐

今は、仕事を増やしたいということが第一です。まだ具体化しているわけではありませんが、企業法務の分野でやりたいと思っていることを実現するためのチーム作りをしています。他業種や他士業と連携しながら一緒に成長できるようなチームを作って、一人ではできないこともできるように種を撒いています。
やはり「弁護士」という職業がもつ信用力は絶大ですし、弁護士だからこそ出会える人々や得られる様々な機会を最大限生かしたいと思っています。もちろんこれからも弁護士業は軸ですが、自分の弁護士人生を豊かにするために何が必要か、何ができるか、常に考えて模索しているところです。

‐修習生・若手弁護士へのメッセージ‐

仕事も委員会活動も、情熱をもって、楽しんでほしいです。どの点に楽しさを見出すかは人それぞれなので、自分なりの楽しさを見つけてほしいと思います。
弁護士になりたての頃は、与えられた仕事をやることに必死でしたが、事務所を移籍して、自分には何ができるのかを考えるようになり、主体性をもって行動するようになってから、仕事がどんどん楽しくなりました。自分の仕事が評価されて、仕事が増え、金銭的な満足も得られる(笑)とどんどんモチベーションが上がります。この仕事は、積極性をもっていれば、やりがいを自分で見つけることができますし、まだまだ可能性は広がっていると思いますので、東弁で得られる人脈を最大限利用して、色々なことに挑戦してもらえればと思います。
法教育に興味をもって、参加してくれる若手も大歓迎です!

【経歴】

2007年:明治大学経営学部会計学科卒業
2011年:明治大学法科大学院卒業
2011年:新司法試験合格
2013年:弁護士登録(東京弁護士会・法教育委員会所属)都内法律事務所入所
2017年:法教育委員会副委員長
2017年:セブンライツ法律事務所入所
2021年:法教育委員会委員長