第34回受賞者
特定非営利活動法人 OurPlanet-TV
特定非営利活動法人OurPlanet-TV(代表理事:白石 草)は2001年に設立した非営利の報道機関で、社会的弱者、少数者の視点から独自番組を制作し、インターネットで配信しているほか、ギャンブル依存症患者や被災地の子どもを対象にした映像ワークショップなどにも取り組んでいる。特定の企業や行政等からの広告収入を得ない、独立性の高い運営を行なっており、現在は認定NPO法人である。
2011年3月の東京電力福島第一原発事故後は、被災者が不安を抱いている子どもの健康問題などについて幅広く取材。国のバックアップのもとに開始された福島県の「県民健康調査」等をはじめ、被災者の視点で継続的に取材し、Web報道、論文、講演等によって広く市民に情報提供し、原発被災者の権利救済、さらには放射線被曝や研究倫理等に対するリテラシー向上につながる活動を展開してきた。
福島県の「県民健康調査」では、事故当時18歳以下だった38万人を対象とした甲状腺検査が実施されており、現在200人が甲状腺がんと診断されている。想定より多くの患者が見つかっていることをめぐり、県の検討委員会等においても、原発事故との因果関係が活発に議論されているが、時間の経過とともに、テレビ、新聞等のマスメディアは、この内容や問題点を十分に取り上げなくなりつつある。こうした中、OurPlanet-TVは独立メディアとして、同調査の結果や内容を正確に取材・分析し、報道を重ねてきた。こうした報道の蓄積は、多くの被害者のこれからの健康管理や補償の在り方、さらには将来のエネルギー政策をも含めた原発にまつわる諸問題に対して、合理的、民主的な解決を積み上げていくための不可欠な要素である。
また事故から5年後の2016年3月に制作した『子どもたちを守りたい~県境を越えてつながる母親たち』では、自分たちの手で基金を立ち上げ、甲状腺エコー検査を始めたり、地元の行政に働きかけて独自検診を実現させた東葛地域(茨城県・千葉県北西部・埼玉県南東部)に住む母親たちの粘り強い活動を伝えた。その活動は、自ら声をあげられない子どもたちを守ることにつながる。映像化および書籍化することはまさに在野の人権活動に光をあてるものであり、東京弁護士会の人権賞受賞に相応しい団体である。