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第5回市民会議(2005年5月18日)

第5回市民会議議事録(PDF:78KB)

2005年5月18日に第5回市民会議が開催され、7名の委員全員が出席した。今回は「苦情窓口のあり方について」と、「今年度の市民会議の扱うテーマ及び会議のもち方について」をテーマに議論した。

苦情窓口のあり方について

市民窓口

東京弁護士会では、1996年から、弁護士・弁護士会に関して意見や苦情を述べようとする市民に迅速に対応するために市民窓口を設置している。市民窓口の担当者は理事者経験者が中心に約80名、月曜から金曜までの午後1時から3時までの間、担当の委員が2名ずつ電話や面接で対応している。多くは話しを聞くだけで解決できるが、特定の弁護士に関する事件処理への苦情については、苦情を申し出た者の意見を聞いた上で、その弁護士に苦情申出の内容を伝えることもある。

  • 岡田ヒロミ委員(消費生活専門相談員)
    消費者生活センターにも、弁護士に関する相談、特に「弁護士から説明がない、何をしているのかわからない」という事件処理についての苦情が来ることが多くなった。結局は、弁護士と依頼者のコミュニケーションが足らないことにかかわってくるのではないか。説明義務を自覚していない弁護士が少なくないと思うときがある。また、自分たちはプロなのだから自分たちに任せておけばいいんだという気持ちが強く、依頼者にわざわざ説明をしても時間のロスだ、という感覚もあるのではないか。市民は事件処理に不安があっても、直接依頼している弁護士に聞くには勇気がいる。弁護士会においては、ただ「綱紀委員会に」「紛議調停に」と説明されても解決にならないので、できたらやはり直接その弁護士に「こういう苦情が来ていますよ、それはどうですか」と伝えて、弁護士の言い分も聞いた上で、間に入って依頼者にわかりやすく説明してほしい。そうすれば、苦情を申し立てた市民も随分納得すると思う。市民窓口があると聞いて、弁護士会も前進したと思う。しかし、全国の消費生活センターで、弁護士会にこうした窓口があるということを知っている相談員は本当に少ないと思うので、まずは広報していただきたい。

  • 草野忠義委員(日本労働組合総連合会事務局長)
    苦情を受け付ける窓口をつくられたということには大変敬意を表したい。今後、もっと法曹が市民と身近になると、恐らく苦情件数は相当増えていくことになるだろう。その意味では、広報をどうしていくかということと、苦情を受ける側の態勢をどうしていくかが課題であろう。東弁のホームページでは、市民窓口苦情処理の方法がすぐにわかるようになっていなかったので、その点も工夫する必要があると思う。また、弁護士が相談を受け付けて処理をするとき、例えば「もし何かあればこういうのがありますよ」と苦情処理を扱う市民窓口の存在を紹介すれば、双方の信頼関係も出てくるのではないか。さらに、苦情を申し出た人たちの満足度がどうなのか。何かフォローアップしてアンケートでもとる工夫も必要と思う。労働組合の関係で苦情処理への対応についてお話しすると、いわゆる単位組合の中での苦情処理は、組合員から評価や賃金の問題などが出されると、労使協定している苦情処理委員会で解決してフィードバックするシステムだが、現実的にはなかなか難しい。また、私どものような直接職場と接していないところには多くのクレームが来るが、匿名が多いため、正直言って対応には苦労している。固有名詞が出た企業については完全にフィードバックしている。最近は、非専従の職場の役員が対話活動をする時間がなかなかとれないという実態があるが、まず、組合がしっかり職場と対話をして問題を解決していくしかないと思う。

  • 紙谷雅子議長(学習院大学法学部教授)
    市民窓口は弁護士会が設けているものであるから、外部から見ると仲間内でやっている仕組みに見える。どのぐらい独立性があって信用できるのかということについて、外部が信用するような方策みたいなものはどのようになっているのか。イギリスのことわざで、「正義を実現するということと、正義を実現しているように見えるということの両方が重要だ」というものがあるが、やはりしっかりやっていると同時に、それが外部にわかるようになっていれば、苦情処理に対する満足の程度を高めることができると思う。また、例えば苦情を申し立てた人に「こういう結果になりました」と伝え、その後、例えば「対応が変わりましたか。効果がありましたか」とある程度フォローしていくのも可能なのではないか。私の大学についてお話しすると、自分が疑問だと思う成績について学生が問い合わせをするという成績に対する苦情制度を設けている。また、セクシュアル・ハラスメントに対する窓口があるが、相談者には「あなたの情報は直接先生の方に言ったりしません」とはっきりと言う。そうしないと、相談者である学生が「先生同士味方になるのではないか、握り潰されてしまうのではないか」という猜疑心を解消できないからである。また、問題が発生した場合には、外から第三者をお願いして事情聴取などにも関与してもらい、なるべく客観性のある処理ができるように工夫をしている。

  • 阿部一正委員(新日本製鐵株式会社知的財産部長)
    メーカーではユーザーからのクレームへの対応については、技術サービスセンターという窓口を設けていて、すぐお客様のところへ行って「どういうクレームでしょうか」と尋ねる。そして何か難しい問題があったら研究所に問い合わせる、という仕組みは体系的に全部でき上がっている。また、最近は、社員からのクレームを経営に役立てようということで、社員が業務執行についていろいろ苦情や問題を持込むための窓口を設置しており、これが内部告発をさせる仕組みの根拠となっている。苦情を伝えた社員には「そういうことを言っても、それはあなたの地位には全く影響を及ぼしません」という説明はしているが、それを担保する仕組みというのはなかなか難しい。そのほか、評価を本人に伝えるというやり方で本人のインセンティブを高める、ということがある。私は多くの弁理士と接しているが、仕事をしっかりとやっている弁理士と、多くの手数料を取るために点数だけ稼いでやる者とがいる。やはりきちっと仕事をしてもらいたいため、研究者あるいはスタッフを合わせて何百人から、使っている弁理士の評価を聞いて、毎年「あなたの評価はこうですよ」という結果を紙に書いて1人ずつ手渡している。それが励みになっているのかどうかはよくわからないが、彼らはかなり緊張して受け取っているようである。

  • 藤森研委員(朝日新聞社編集委員)
    新聞の苦情対応は、朝日の場合、第一義的には広報部が全部受け付ける。紙面や記事に対する意見・苦情に対しては、それぞれの担当セクションに伝え、返事をする必要がある場合は担当セクションから本人に連絡して説明する。ごく稀に、誤った記事を書かれた、人権侵害されたということもある。この場合は、まず広報部が相手と話し合いをして、場合によっては訂正を出したりお詫びするという対応をする。それでは解決しなければ、4年前に設置された「報道と人権委員会」という第三者機関で、記事を書いた政治部や社会部などに説明を求め、苦情を申立てた人からも追加的な資料をもらい、両方から事情聴取をして合議した上、見解や勧告、斡旋案を出すこともある。
    弁護士会には弁護士自治がある以上、あまり外から容喙して「こうすれば実効性を担保できるじゃないか」とばかり言えない面もある。むしろ一つの知恵として、十分はできないけれども自律をするよというあり方も尊重したい。自立を保障しながら自分だけで律する難しさがあろう。記者も同じだ。最終的には一人一人の意識の問題にまで帰する。そうすると、どのようにお互いに鍛え合ったらいいかという問題になるが、新聞界では上記の見解や勧告や審議経過を紙面・社内報で詳しく載せる。それを読むことによって「そういう考え方もあるのか」と記者一人ひとりが考えていくしかないのではないか。また、被害を受けた側の体験をきちんとフィードバックし、情報としてみんなで共有していくという制度も必要だ。それは弁護士の世界にも通じることなのではないか。

  • 長友貴樹委員(調布市長)
    要望・苦情・相談・意見ということであれば、我々のやっていること総体が窓口であって、広い意味では市役所は全体が窓口であると言える。ただ、聞いてあげればそこで納得されるという単純なものから、もう何回も意見のやりとりをしても納得されないようなものもある。したがって、住民監査請求から訴訟へ発展するという緊張感を常に我々は持っている。また、市民からすると担当部署がわかりにくく、特に複数の部署にまたがるような案件を捌くには、専門の窓口が必要である。調布市では、企画を担当する政策室の中に、管理職1名を含めて4名体制の「市民相談担当」という窓口を置き、クレームを担当課につなぐこと、各種相談会の企画・立案・運営、その他オンブズマンを担当している。また、市役所の中で専門的な部署を置いて受け付けるものとは別に、自ら足を運んでそれを受け付けている。大体月1回のペースで、「市民の方とのふれあいトーキング」と名付けて市内全域を巡回する形で出ていき、テーマは特定せずに何でもおっしゃってください、ということで答えている。また、即答できないものについては迅速に答えを返している。他にも、ごみ問題とか保育園の問題とか特定したテーマのものもやっており、年に20回ぐらいは市民のところへ自ら出ていっている。褒められることは実に少なく、苦情・批判が大部分である。さらに、もう少し身近に市長を感じてもらおうということで、「市長へのハガキ」を市内の公的施設全部に置いている。市長としては全部一応目は通すようにしている。あとはオンブズマン。3人のオンブズマンに苦情相談の処理を公正中立な立場からお願いしている。ここに来るものは、家屋の住み替え、家賃補助打切りについて等かなり練られた見解・切実な質問である。

  • 濱野亮副議長(立教大学法学部教授)
    苦情というのは、病理現象を突き止めて対応するという面とそのサービスを改善していくきっかけになるという面の両方がある。大学も最近は全学で定期的に授業評価アンケートを学生を対象に実施し、それに対して教員がコメントし、図書館で自由に閲覧できるような状況にしておくという授業評価システムが導入されている。これは直接的な苦情処理窓口ではないが、板書が読みにくいといったことから始まり、授業の内容等に関する苦情・要望が寄せられて、我々はそれを参考にしながら改善するというきっかけになっている。それから日常では、教務の窓口や学部長のところに苦情が寄せられてきて、執行部で対応するというようなことはやっている。ただ、やはり学生なので、苦情などを申し立てにくいという状況がある。そこで、現在検討しているのは、アカデミック・アドバイザーを設けて、成績の不振な学生については、ピンポイントで話を聞いて、場合によっては授業のやり方に問題がある場合には改善していく、カリキュラム自体にも問題がある場合には検討するなどフィードバックしていくという学習支援システムである。大学は弁護士会と同じぐらいに、ある意味で自治とか専門性ということで守られており、あぐらをかいてきた面があることは間違いないと思う。こうした制度改革も全学で議論するといろいろ抵抗がある。しかし、消費者としての学生に対してどう応えていくかということを真剣に考えないと生き残ってはいけない時代だと思っている。

今年度の市民会議の扱うテーマ及び会議のもち方について

  • 藤森委員
    今後は、弁護士の現場に我々が行ってみたいと思う。また、この1年間、東京弁護士会が出てくる記事は一体何だろうと調べてみたら、司法制度改革の関係や公設事務所、不祥事の問題に対しての懲戒などがあった。他に弁護士会の勧告とか声明の記事も多い。東弁会長声明には非常に共感するところが多く、頑張ってやってくれているなと個人的には思っている。しかし強制加入の弁護士会がかなり突っ込んで声明することに、内外から異論もありえよう。日本の社会の健全なバランスをとる上で非常に意味を果たしていると私は評価しているが、これについてどう考えるかも議論が必要かもしれない。

  • 草野委員
    委員の人数は別にこだわりませんけれども、むしろ弁護士会の方から、こういうジャンルの人からの意見も聞きたいということで委員を増やすのは全く異論ない。

  • 長友委員
    皆さんの権利意識が高まってきて、市役所に寄せられる相談も最近は近隣間の民民の紛争みたいなものが持ち込まれることが飛躍的に多くなってきている。そういうものについて市役所は、今までの蓄積・経験がないので対応に非常に苦慮している。市民会議の議題としてふさわしいかはわからないが、最近の民民間の問題の傾向であるとか、それの解決の仕方みたいなものについて触れてもらえれば有難い。

  • 紙谷議長
    この会議では、弁護士ではない私たちの意見を述べることが有意義に思われる。もう1人くらい違う分野の方のお話、あるいは見方を伺うともっとよくなるという気はする。時間については、取り上げる議題に合わせて流動的に決めるのが一番いいと思う。