アクセス
JP EN

第16回市民会議(2008年11月4日)

第16回東京弁護士会市民会議が2008年11月4日に行なわれた。今回のテーマは「被疑者国選弁護制度等の実現拡大について」「被害者参加人国選弁護制度について」である。

  • 長友貴樹委員(調布市長)
    多摩地区における法律事務所、弁護士の数が少ない。弁護士過疎といってもいい。ぜひ弁護士の人数を拡充してほしい。被疑者国選弁護制度は積極的に周知していくしかないだろう。被疑者の権利も重要だが、被害者の権利もしっかり見直してバランスのとれた議論をしてほしい。
    被害者が参加することによって公判中や公判後に再び犯罪に巻き込まれるのではないかと危惧感を抱くだろう。被害者が安心して参加できることを担保しないと積極的に参加しないと思う。
  • 小賀野晶一委員(千葉大学大学院専門法務研究科教授)
    被疑者段階から弁護人が付くことがあまりない現状において、被疑者国選弁護制度はこれまで対象外とされていた者に光をあてていくものであり、有意義な制度であると思う。また、少年事件についても付添人費用がやや高めに設定されているが、短期間で集中的に動かなければならないことを考えると納得できる。
    被害者参加制度については、裁判官の心証に影響を与えることが考えられ、このことをどのように評価するかという問題もあるが、被害者の気持ちを少しでも安らかにしたいという深い意味があり、この点にこの制度の意義があるといえる。 
  • 古賀伸明委員(日本労働組合総連合会事務局長)
    被疑者国選弁護制度は基本的人権の擁護の視点から非常に重要な制度であるから、今後も制度の拡大実現に努力してほしい。しかし、想定件数などを考えると弁護士が十分に対応できるのか。また、弁護士の使命感を尊重するとしても規定された費用で弁護士が満足しているのか、本音を聞いてみたい。
    被害者が刑事訴訟に参加する被害者参加制度については、犯罪被害者からの要望でもあり、この制度の定着に向けて、関係者のさらなる努力を期待したい。
  • 岡田ヒロミ委員(消費生活専門相談員)
    消費者センターにも被疑者国選弁護制度について問い合わせが入る。市民にとって何か困ったことがあったら消費者センターに連絡する、という意味で消費者センターは市民にとって身近な存在である。相談員も制度について理解していれば弁護士会に誘導できるので、ぜひ消費者センターにチラシなどを置いて広報活動に努めてほしい。
    被害者参加制度に関して解決する問題は少なくないが、被害者の思いが通じた結果と思う。今まで参加できなかったことが問題である。
  • 阿部一正委員(㈱日鉄技術情報センター代表取締役社長)
    最近、ある人が逮捕された時に当番弁護士が付いていかなかったという話を聞いたことがある。警察が当番弁護士制度があることを知らせない以上、被疑者に対して当番弁護士の存在が伝わらない。このような事例から推察すると、これから始まる被疑者国選弁護制度は積極的に周知していく必要があろう。
    被害者参加制度について、裁判官が被害者の参加を許可しない場合に、被害者から不服を言えないとすれば、被害者の「権利」とは言いにくいのではないか。
  • 藤森研副議長(朝日新聞編集委員)
    当番弁護士制度は弁護士が率先して始め、非常に大きなインパクトがあった。弁護士のイメージアップにもつながっていると思う。この制度が発展し、被疑者国選弁護制度もできた。弁護人の確保といった人的問題があるが、全国的にこの制度が広がることこそ正義であろう。
    被害者の公判参加とは別の問題だが、その置かれた立場に関し、被害者が受ける二次被害、マスコミの問題が話題にされる。被害者が立ち直ろうという矢先に、事件と関係のないプライバシーをマスコミに掲載された、傷つけられた、といった被害者の声がある。こうした問題についても考えていかなければならないと思っている。
  • 紙谷雅子議長(学習院大学法学部教授)
    弁護士会は被疑者国選弁護制度の実現に向けて一生懸命体制を整えつつあるようだ。しかし、被疑者の請求がないと国選弁護人が付かないとなると、被疑者やその家族がこの制度を予め理解している必要があるので、積極的に周知させていってほしい。また、職業としての弁護士が信頼される重要な制度であり、ぜひ第3段階実現を目指してほしい。
    被害者参加制度に対しては、被害者は意見を述べたいために参加するのだろうが、検察官の見解と対立する意見表明はできるのか、という疑問がある。また、有罪・無罪が決まらないうちに被害者が参加することで無罪推定の原則に何らかの影響が出るのではないか。この制度の一番難しいところと思う。