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第24回市民会議 (2011年7月26日)

第24回東京弁護士会市民会議が2011年7月26日に行なわれた。今回は「民事裁判は市民にとって身近で利用しやすいものになっているか」と「法律相談事業のあり方」をテーマにご意見をいただいた。。

民事裁判は市民にとって身近で利用しやすいものになっているか

  • 紙谷雅子議長(学習院大学法学部教授)
    訴訟手数料の定額化は,一律1万円くらいであれば不合理ではないと思う。株主代表訴訟は定額化した結果,増えた。また,定額にした方がわかりやすい。今は,訴訟の途中で追加の訴訟手数料が必要なこともあり,当事者にはわかりにくい。訴訟手数料を定額にすることで,請求金額が上がることがあるとしても,認定する側が不合理な請求を認めなければいい。
  • 阿部一正委員(㈱日鉄技術情報センター代表取締役社長)
    会社の立場で考えると,訴訟手数料の定額化をすると,訴訟がたくさん提起されて大変になる。しかし,市民の立場から考えると,訴訟手数料をただにしなくてもいいが,今の訴訟手数料は高すぎるという気がする。
  • 後藤弘子委員(千葉大学大学院専門法務研究科教授)
    訴訟手数料もわかりにくいが,弁護士費用もわかりにくい。裁判をしたくても,弁護士に頼むといくらかかるかわからないから,よほどのことがないと弁護士に頼んで裁判をしようということにならない。タイムチャージの方がわかりやすくてよいのではないか。弁護士に頼みやすくするためには,予測可能な弁護士費用にした方がいい。弁護士に相談するだけで高そうというイメージがあって,困っていることがあるのに弁護士の相談までたどりつけない人がたくさんいる。
  • 岡田ヒロミ委員(消費生活専門相談員)
    賃貸住宅の管理契約について,弁護士費用を賄う保険が出てきている。事故が起きたときは助かるので,こういう制度が広がるといいと思う。
  • 後藤委員
    日弁連が弁護士保険に入ろうというキャンペーンをはったらどうか。少しの保険料で一生涯保障されるので,結婚するときには保険に加入しましょうということで,結婚式場とタイアップしたらどうか(笑)。
  • 紙谷議長
    「二十歳になったら,弁護士保険に入りましょう」ということですね(笑)。

法律相談事業のあり方

  • 長友貴樹委員(調布市長)
    自治体の立場からしても,ぜひ英知を結集していい制度を作って欲しい。
    調布市では,法律相談に年間700万円くらいの予算をかけて,約1500件の相談がある。今,調布市の人口は22万人なので,東京都の全人口の60分の1くらいにあたる。単純に計算すれば,東京都全体で4億円から5億円のお金をかければ,9万件くらいの相談があることになる。 調布市は,人口も漸増で,相談件数も全体として漸増している。ただ,女性のための法律相談を設けたが,こちらは減っている。これは,離婚しがたい経済状況にあるというのが一つの要因ではないか。女性の心理カウンセラーのカウンセリングは増えている。
  • 岡田委員
    弁護士が必要だなという相談者が最初にたどりつくのが,消費者センターであることが多い。公設事務所は,弁護士会がやっているので,消費者センターとしても紹介できる。例えば,北千住パブリック法律事務所は,消費者センターと連携していて,どの弁護士がマルチ商法に詳しいか等が私たちにわかるので,その弁護士が相談に入っているときに紹介するようにしている。市民にダイレクトに法律事務所に行くようにと鐘太鼓を叩いてもダメで,パイプ役になって誘導する機関が必要になる。
    公設事務所が消費者センターと連携することで,若い弁護士が消費者問題に取り組むようになってくれている。
  • 後藤委員
    なぜ離婚の専門弁護士を紹介できる名簿がないのか。一般相談名簿を,もっと細分化するとよい。刑事の当番弁護だって,弁護士によって当たり外れがある。同じように,ばらつきがあったとしても,離婚専門,家族問題専門の名簿があってもよい。名簿があるだけで安心できる。認定弁護士制度を作ったらどうか。専門家に対するニーズはある。
  • 阿部委員
    離婚は専門分野として分けてもいいと思う。会社でも,従業員からの相談の約半分は離婚。
  • 紙谷議長
    窓口のたらいまわしはつらい。魅力はワンストップの相談窓口があり,ここに行けば解決の目処が立つということ。わざわざ休暇を1日とってきたのに,別の所に行きなさいというのはつらい。
    予約の電話をするまでの心理的なハードルも高い。パソコンの予約も考えるとよい。
    相談を初回無料化にすると,相談のはしごをする人が増えるのではないか。
  • 岡田委員
    今の消費者を見ていると,相談の無料化が必ずしもいいとは思わない。 消費者事件はお金にならない事件もたくさんあるが,公設事務所の弁護士に受けてもらっている。公設法律事務所は,市民が弁護士の仕事を理解する入口を拡げている。聞くところによると,公設事務所に弁護士会の会費を使うことへの批判があるようだが,とんでもない。
  • 紙谷議長
    もう少しパブリック事務所を作った方がいい。