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【報告】東京弁護士会代表団の台北訪問について(2025年1月10日)

2025年1月10日、上田智司前会長、町田行功前副会長をはじめとする当会の代表団22名が台北を訪問のうえ、台北律師公會(台北弁護士会)との友好協定の調印式をはじめとする行事に参加し、国際交流を行いました。

photo1-taipei0110.jpg司法院(憲法裁判所)内での集合写真

1.台北律師公會との友好関係
台北律師公會は、1947年に設立された台湾における最大の単位会であり、会員数は8464名(2024年12月31日現在)と、全国の登録弁護士の約7割を占めます。
当会は、2023年7月に樋口一磨国際委員会委員長と三好慶国際委員会副委員長が、台北律師公會の洪邦桓国際事務委員会副主任委員とIBA(国際法曹協会)Asia & Pacific M&A Conferenceの機会に両会の友好関係の構築を企図して以降、実務者レベルでの企画、交流を継続してきました。 
そして、2024年3月には、台北律師公會の張志朋前理事長らご一行の当会への表敬訪問を受け入れ、日台の個人情報保護法に関するセミナー及び懇親会を行いました。https://www.toben.or.jp/know/iinkai/kokusai/news/2024326_1.html
このような背景の下、当会と台北律師公會の間で友好協定調印の合意が醸成され、2025年1月10日に台北市において調印式及び関連行事が行われることとなりました。

photo2.jpg司法院(憲法裁判所)法廷での集合写真

本調印式には、当会からは上田智司前会長、町田行功前副会長ほか、合計22名の会員が参加し、他方、台北律師公會からも張志朋前理事長ほか30名以上の会員が参加するなど、大いに盛り上がるものとなりました。
また、調印式に際しては、裁判員裁判(台湾では国民法官制度)に関する記念シンポジウムが台北律師公會と共催され、また、台北律師公會のアレンジにより、先行して、司法院(憲法裁判所)と全國律師聯合會(日弁連相当の全国会)の訪問などが企画され、日台両国からの参加者にとって大変実りの多いものとなりました。

1.司法院(憲法裁判所)訪問
台湾では、違憲審査権は、最高法院から独立した機関である司法院(憲法裁判所)に付与されています。
司法院は日本統治時代の建物であり、建物全体は、「日」という形をしており、迎賓室の天井に菊の紋章があり、かつ、院の歴史を紹介する展示品には毛筆で書かれた日本語の古文書が多いなど、日本との繋がりが感じられました。今回の訪問では、その格式ある迎賓室にお招きいただいたうえ、謝銘洋司法院院長からご挨拶を頂くなど、大変高い格式でのお迎えを頂戴しました(同室への招待自体が極めて貴重であるとのことです)。これに対し、当会からは、上田前会長より丁重に答礼を述べました。

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  左から、上田智司当会前会長、謝銘洋司法院院長       上田智司当会前会長

photo5.jpg左から、国際委員会正副委員長及び理事者(司法院迎賓室)

また、ご挨拶の後は、実際の憲法法廷にご案内いただき、憲法法廷の研究法官(日本の最高裁判所調査官に相当)から、司法院の組織、権限及び法制度内での位置付けなどについて、判りやすいご説明をいただきました。傍聴席の半分が記者席であることや、公式のHPからYouTubeで憲法法廷の審理が生中継されるとのことが印象的でした。

photo6.jpg研究法官による講演(憲法裁判所法廷)


なお、当会代表団の司法院訪問の様子は、司法院発行の司法週刊に掲載されています。https://www.judicial.gov.tw/tw/dl-227009-ac6d20d0b51b41c7beedd8c4000b2d50.html?view=1


2.全國律師聯合會訪問
全國律師聯合會は、単位会だけがメンバーとなるその前身組織から、律師がメンバーとなる現在の組織に改変されたうえ、2021年1月に新たに発足したものです。
当日は、同会の李玲玲理事長からご挨拶をいただき、上田当会前会長から答礼を述べました。
また、謝宏明国際事務委員会委員長より、台湾の法曹制度、弁護士会の制度、人口、案件数など司法統計的なことについて、ご紹介いただき、当会からは樋口国際委員会委員長が当会紹介のプレゼンテーションを行いました。
台湾では、法曹人口については、弁護士については、統計上はまだ男性優位であるものの、年齢層によって男女差が順調に解消され、30歳以下はすでにほぼ同比率となり、性別による差異が完全に解消されるのも時間の問題であるようです。
また、弁護士会の会費制度については、日本と比して低額であるほか、単一もしくは複数の地域(又は全国)で仕事をするかによって、異なる会費額となるようです。

photo7.jpg左から、李玲玲理事長(全國律師聯合會)、上田智司当会前会長

photo8.jpg集合写真(全國律師聯合會の会議室)


3.友好協定調印式及びシンポジウム(於 台北律師公會)

―友好協定調印式―
調印式では、まず張志朋前台北律師公會理事長及び上田当会前会長のご挨拶があり、2024年来日の際に張前理事長ご一行が当会にご訪問されたことで、実務者レベルのみならず、張前理事長と上田当会前会長のトップ同士の信頼関係まで醸成され、それが今回の友好協定に繋がったとのお話がありました。その後、両会の友好協定が調印され、記念品交換・写真撮影などのセレモニーが厳粛に執り行われました。


photo9.jpg左から、張志朋前理事長(台北律師公會)、上田智司当会前会長

photo2.jpg洪邦桓国際事務委員会副主任委員、黄傑国際事務委員会主任委員、陳逸竹国際事務委員会前主任委員、徐頌雅理事長、張志朋前理事長(以上、台北律師公會)、上田智司前会長、町田行功前副会長、樋口一磨国際委員会委員長、三好慶国際委員会副委員長(左より)

photo10.jpg洪邦桓国際事務委員会副主任委員、黄傑国際事務委員会主任委員、陳逸竹国際事務委員会前主任委員、
徐頌雅理事長、張志朋前理事長(以上、台北律師公會)、上田智司前会長、町田行功前副会長、樋口一磨国際委員会委員長、三好慶国際委員会副委員長(左より)

調印が整った後、樋口一磨国際委員会委員長から当会のご紹介を行い、これに応える形で、廖郁晴副秘書長から台北律師公會のご紹介を頂きました。

photo11.jpg樋口一磨国際委員会委員長

photo12.jpg廖郁晴副秘書長

―シンポジウムー
シンポジウムは、「裁判員裁判の実情」というテーマで執り行われました。台湾では国民法官制度(台湾版の裁判員裁判制度)が丁度2023年に施行されたところであり、両国の比較は、時宜を得た関心度の高いテーマでした。
当会からは、刑事弁護委員会の榊原一久委員長、大久保博史副委員長及び安藤光里委員が、各々のご経験に基づき、日本の裁判員裁判制度の当初の狙いと期待、現時点の評価、裁判員裁判の実務運用を、大変分かりやすく解説され、台北側から活発な質問が寄せられました。
これに対して、台北律師公會からは、唐玉盈司法改革委員会主任委員及び薛煒育刑事手続法委員会委員により、台湾の国民法官制度の制度立上げ時期の様々な課題と、これら課題の解決に向けた諸活動についてご説明がありました。

photo13.jpg左から、榊原一久刑事弁護委員会委員長、大久保博史刑事弁護委員会副委員長及び安藤光里刑事弁護委員会委員

photo14.jpg左から、唐玉盈司法改革委員会主任委員、薛煒育刑事手続法委員会委員(台北律師公會)

調印式とシンポジウムの締めくくりとして、現台北律師公會理事長である同会徐頌雅前常務理事と当会の町田行功前副会長からクロージングのご挨拶があり、両会の親睦が確認されました。
なお、これら一連の行事にあたっては、台北弁護士会所属の、日本語が非常に堪能な二名の律師(黄傑国際事務委員会主任委員、洪邦桓副主任委員)が常に通訳を行いました。彼らの活躍のおかげで、台北律師公會側の参加者も、当会側の参加者も、言葉に不自由することなく自由に意見交換ができ、交流がより一層有意義なものとなりました。

photo15.jpg徐頌雅現理事長(台北律師公會)

photo16.jpg町田行功当会前副会長

4.公式晩餐会

公式晩餐会には、張志朋前理事長、上田智司当会前会長ほか多数の弁護士会関係者に加えて、日本台湾交流協会台北事務所の片山和之代表も出席されました。
晩餐会で参加者全員にふるまわれたワインは、いずれも、台北律師公會の律師が個人的に提供した珍しいものでした。張前理事長は、民法の本を複数書かれる高名な律師としても知られておりますが、ご挨拶の中では、それらのワインについて詳しくご解説されるなど、晩餐会には、高い格式のなかにも台北律師公會のおもてなしの心が込められており、台北の様々な先生方との交流を育むまたとない機会でした。

photo17.jpg左から、片山和之代表(日本台湾交流協会台北事務所)、張志朋前理事長(台北律師公會)、
上田智司当会前会長

今回の台北訪問は、当会HPやメールマガジン等で広報したほか、各委員会のメーリスでも周知・案内を行った結果、理事者や国際委員会委員に限らず、刑事弁護委員会をはじめとして、広く各委員会に所属する会員が参加するものとなり、当会全体として、海外弁護士会へ訪問する形で、訪問・交流を実現することができました。
また、今回の調印式を通じて、台北律師公會の誠意と熱意を直接感じられたことの意味は大変大きく、訪問団としても台北律師公會との交流とともに、多くの知見を得ることができ、大変有意義なものとなりました。
このような意義深い訪問が実現できたのも、友好協定の締結と交流促進をご承認、ご支援くださった関係各位のおかげであり、この場を借りて感謝申し上げます。
また、とりわけ、今回、刑事弁護委員会が裁判員関連の説明、発表をお引き受け下さったことにより、今回の台北律師公會とのシンポジウムの中身が実を伴うものとなりました。お引き受け下さった刑事弁護委員会の皆様にも感謝を申し上げます。
友好協定の締結は、はじまりにすぎないところ、この協定をより実質的で意義深いものとできるように、引き続き尽力していければと思います。 

photo18.jpg台北律師公會での集合写真

*台北訪問の様子は、LIBRA2025年7月8月号「弁護士会の国際活動第2回 台北での国際交流 ─台北律師公會との友好協定調印式及び関連行事─」 にも掲載されています。

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