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第32回受賞者

出元 明美 さん

1984年4月28日、第3子の計画分娩(陣痛誘発)で陣痛促進剤の不適切投与により子宮破裂となり、長女が脳性麻痺の重い障害を負い1歳8ヶ月で死亡した。分娩直後から陣痛促進剤に対する疑問を持ったが、当時、陣痛促進剤についての情報は殆どなかった。

そこで、自らの体験を新聞投稿により公表したり、また、それらがマスメディアで取り上げられたりすることにより、日本全国から連絡があり、陣痛促進剤による被害が多数発生していることを突き止めた。

1988年2月、陣痛促進剤の不適切な使用による悲惨な事故をなくし、安全なお産を実現させることをめざし「陣痛促進剤による被害を考える会」を発足させた。同会の代表として、産科医療事故の被害者・被害者家族らから相談を受け、専門医による医学的分析の支援、訴訟面での支援などの被害救済の活動をしているだけでなく、被害事案・症例を収集し、分析、整理・集約している。それを厚生労働省に報告し改善を求めるとともに、会報やシンポジウムで社会に公表・注意喚起し、分娩時に投与される薬・陣痛促進剤について知ること、インフォームド・コンセントの重要性を説いている。

こうした活動により、陣痛促進剤の使用方法、使用時の監視等について、添付文書の改訂を幾度となく実現させている。

このような地道な活動を、無償で30年間続けており、安全なお産に大きく寄与している。

全国音訳ボランティアネットワーク

2007年6月設立。全国に散在する音訳活動に携わる個人・団体のネットワークを構築し、視覚障害者への支援活動を行っている。

従前、音訳活動(必要とする人に声で文字情報を伝える活動)に携わる人たち(音訳者等)と音訳利用者のマッチングはそれぞれの生活圏内というごく狭い範囲の中で行わざるを得なかった。同団体が発足したことにより、音訳者も音訳利用者も、場所的・人的制約から解放され、これまでよりタイムリーで質の高い音訳を、必要とする視覚障害者や音訳者らの所在場所を問わずに提供することを可能とした。

また、同団体の設立以前では十分対応することが困難であった専門書・外国図書・まんが等の音訳ニーズへの対応可能性を大きく広げた。

障害者の多様なニーズに対応すべく、音訳者の活動の場をテキスト化(文字を音声というアナログデータではなく、テキストというデジタルデータに変換して届けること)にまで拡げる試みに積極的に取組んできた。

旧来の「音訳」からすれば、基本的に肉声を一切使用しないテキスト化作業はもはや音訳ではないとの見方もある。しかし、障害者に寄り添い支援するという原点に忠実に、視覚障害者らのニーズを受入れ、これに応える活動方針を貫き、現在では、図書館等から蓄積したテキスト化のスキルを伝授する講師の派遣依頼が寄せられており、活動軸の一つとなっている。

法制度の進化も追い風としながら、地道な障害者支援を通じて、社会的弱者の権利を保護・保障するための活動を継続し発展させてきた。