東京弁護士会

人権擁護の核となる
刑事弁護をライフワークに
山本彰宏 会員(59期)

2021年1月5日

山本会員は、東京弁護士会の公設事務所で弁護士生活をスタートさせ、法テラス和歌山法律事務所での執務を経て、2019年度から東京弁護士会の刑事弁護委員会委員長を務めるなど、刑事弁護を中心に活躍してきました。積み重ねてきた刑事弁護の知識や技術を若手弁護士や修習生、エクスターン生に伝えていくための研修にも力を入れています。
刑事弁護は、人権擁護の核となる活動であり、弁護士でなければできないからこそライフワークとして続けたいと語る山本会員。
刑事司法を改善していく一翼を担う若手に向けたメッセージです。

‐弁護士になることを決めたきっかけ‐

正直に言うと、もともと自分が法律家として生計を立てていくことになるとは思いもよりませんでした。大学の法学部に入ってから、はじめて法律を興味深いと感じ、法律家になろうと思って司法試験に挑戦しました。
司法修習中、裁判官、検察官、弁護士の仕事を一通り見て、一番興味のある仕事が刑事弁護でした。大阪での実務修習中に、当時大阪パブリック法律事務所の下村忠利所長が企画していた「刑事こうせつ塾」のゼミに参加したことや、少年院見学で少年と直接話す機会があって、少年事件に携わりたいと思ったのも大きな動機付けになったと思います。

‐弁護士生活のスタート‐

弁護士生活をスタートさせたのは、東京弁護士会が設立した刑事対応型公設事務所である「北千住パブリック法律事務所」(北パブ)でした。刑事弁護、少年事件を中心として多くの事件を経験させていただき、駆け抜けた1年でした。当時は裁判員裁判が始まる前でしたが、法曹三者による模擬裁判員裁判の弁護人役という貴重な経験もさせていただきました。
弁護士2年目で、法テラスのスタッフ弁護士として法テラス和歌山法律事務所に赴任し、4年間、国選弁護事件、民事法律扶助事件などを数多くこなしてきました。和歌山赴任中に、平成21年5月を迎え、裁判員法が施行され、和歌山の裁判員裁判第1号事件の弁護人を務めることにもなりました。

-東京弁護士会の魅力-

東京弁護士会の魅力は何か、と聞かれたら、第一に「公設事務所」を運営している点だと思います。
私は、法テラススタッフ弁護士の任期を満了した後に、そのままスタッフ弁護士として別の地方に赴任するか、和歌山で独立開業するかなど、進むべき道について大いに迷いました。
しかし、法テラスのスタッフ弁護士として培った経験や、拙いながらも自分が積み重ねてきた刑事弁護の知識や技術を若い弁護士に伝えていくことも必要だと思い、自分を育ててくれた北パブに戻ろうと決意しました。
北パブに戻って、約6年間、若手弁護士や修習生、エクスターン生の育成をしながら、刑事事件を中心に仕事をしましたが、その経験はとても大きなものでした。刑事弁護に興味を持っているエクスターン生や修習生が、北パブで研修をしたいと希望して毎年10人以上研修を受けに来ていました。その中には、弁護士生活を北パブで始めた人が何人もいます。
こういった公設事務所があることはとても重要だと思いますし、東京弁護士会の一番の魅力です。
また、研修制度が充実している点も魅力の一つです。裁判員裁判の名簿登録のための研修でもある実演型の法廷弁護技術研修を年に何度も実施できるのは、東京弁護士会のような大規模な弁護士会ならではだと思います。

‐刑事事件のやりがい‐

刑事弁護委員会の委員長を務めていることもあり、扱っている事件は刑事事件が多いです。裁判員裁判対象事件の国選弁護事件や、控訴審・上告審の国選弁護事件、私選事件も合わせれば、常時10件以上は取り扱っています。
刑事事件に限りませんが、1つ1つの事件を依頼者のために良い方向で解決することで、依頼者から感謝の言葉を頂くことは、弁護士として何よりもやりがいを感じる瞬間だと思っています。
私が関わることの多い刑事事件や少年事件でも、不当な身体拘束を受けている依頼者が釈放されたり、無罪や認定落ちを獲得して感謝されたりするときは、とても嬉しく感じます。

‐刑事弁護委員会の活動‐

刑事弁護委員会は、当番・国選弁護事件の運営や、刑事弁護に関する研修などを担っています。
委員会内の研修部会では、法廷弁護技術研修のほか、刑事弁護に関する様々な研修を若手弁護士が企画し、実施していますので、刑事弁護に携わりたいと思っている若手弁護士は是非刑事弁護委員会に入ってもらいたいと思います。
また、東京三会の刑事弁護委員会と関係各機関との間では、国選弁護連絡協議会や地裁刑事部との懇談会、法務省矯正局との懇談会なども行っており、毎回どういうことを議題に挙げるかなどを委員会で決めたりもします。そうした議題は刑事の分野での最先端の話題となることが多く、若手弁護士にとってはとても勉強になると思います。

‐ワークライフバランスについて‐

刑事弁護をやっているというと、休みなく働いているイメージがあるかもしれません。確かに、連日接見をすべき事件を抱えている場合には、休日も警察署に接見に行くことがありますが、そういうときも、警察署の近くにおいしいランチがないか探したりして楽しんでいます。
インドア派なので、休みの日は一日中自宅にいて、テレビを見たり、映画を見たりして過ごしていることが多いです。地図とか路線図を眺めたりするのも好きですね。

‐修習生・若手弁護士へのメッセージ‐

裁判員裁判や被疑者国選制度が導入されて以降、刑事弁護の世界は急速に変わってきました。日本の刑事司法がガラパゴス状態と言われて久しいですが、今なお、諸外国と比べて改善しなければならない部分が数多く残されている分野だと思います。
また、刑事弁護の多くは、実際に罪を犯してしまった人の弁護ですが、だからこそ、その人の権利を力を尽くして守り、適正な手続を監視していく役割はとても重要であり、人権擁護の核となるような活動だと思っています。こうした活動は、弁護士でなければできません。私自身も、刑事弁護をライフワークとしてずっと携わっていきたいと考えています。
刑事弁護を担う弁護士はこの10年の間に増加し、とても嬉しく思っていますが、より多くの若く精力あふれる弁護士と一緒に、刑事司法を改善していく一翼を担いたいと思っていますので、是非刑事弁護の世界に入ってきてほしいと思います。

【経歴】

1981年:宮城県仙台市生まれ 群馬県出身
2004年3月:中央大学法学部法律学科卒業
2006年10月:東京弁護士会で弁護士登録、北千住パブリック法律事務所入所(~2007年11月)
2007年12月:日本司法支援センター(法テラス)常勤スタッフ弁護士就任、法テラス和歌山法律事務所へ赴任(~2011年12月)
2012年1月:北千住パブリック法律事務所入所(~2018年6月)
2018年7月:アリエ法律事務所入所
2019年度、2020年度:東京弁護士会刑事弁護委員会委員長