東京弁護士会

第4回市民会議(2005年2月28日)

第4回市民会議議事録(PDF:66KB)

2月28日に第4回市民会議が開催され、7名の委員全員が出席した。今回は前回からの継続テーマである「日本司法支援センターについて」と、「市民からの弁護士情報へのアクセスについて」をテーマに議論した。また、2004年度最後の会議となるため、1年間を振り返っての意見・感想をいただいた。

日本司法支援センターについて

  • 岡田ヒロミ委員(消費生活専門相談員)
    いま一番司法アクセスが求められているのは福祉分野の問題であり、社会福祉協議会とか介護保険の担当課などに相談を持ちかけられても、こうした担当部署はどこへつないでいいのかわからないこともある。日本司法支援センターができれば、相談者をまずセンターへ誘導して、そこで法律相談に行く人、裁判所に行く人など適切に振り分けることができる。
    制度構築にあたっては、関係機関の連携・ネットワークを充実するべきである。末端の相談窓口担当者との意見交換やお互いの勉強会なども是非やってほしい。特に地方公共団体との連携はとても大きいので、地方公共団体に対してセンターの仕組みを周知徹底してほしい。そして、制度をつくるだけではなく、最終的には魂、人情で対応してほしい。今回の日本司法支援センターに非常に期待している。

  • 紙谷議長(学習院大学法学部教授)
    自分の抱えている問題が法律問題なのかどうか判断することは大変難しいことだろう。たとえば福祉の問題、障害者の問題であって本人は法律問題であるという認識がなく、法律問題には入らないと思っている場合もあるかもしれない。何でも相談できるようなセンターができるのは、社会全体にとって大変良いことだと思う。問題を抱えている人は、とにかく話を聞いてほしいという気持ちが大きいだろうから、相談の振り分けをする前にまずはきちんと我慢強く話を聞くことが大事である。「うちでは取り扱えません」という一方的な対応をしないような仕組みをつくってほしい。悩み事全般について相談ができるような窓口、相談カウンセラーとしての質の高さがこの制度の成功のカギになるのではないか。

  • 濱野亮副議長(立教大学法学部教授)
    イギリスでは、問題を抱えている人がアクセスポイントに行けば、適切なサービス提供者にすぐにたどりつけるようなシステムを構築しようとしている。インターネット上では「コミュニティ・リーガル・サービス・ダイレクト」という非常に詳細な情報提供システムができている。しかし、相談者の抱えている問題に誰が対応するのが最も適切かという判断にあたっては、抽象的・一般的な情報だけでは不十分である。地域のサービス提供者間で信頼関係をつくり、お互いがどのようなサービスを提供しているのかという情報を共有することが大切であるし、パートナーシップをつくることが重要であろう。関係者が対等な立場で、協力関係・パートナーシップを構築していきながら、制度設計や運用、資金配分の方法、振分けのネットワークをどうつくるか、ニーズと供給のギャップの分析などを、地域単位で行っていくことが重要ではないか。

  • 長友貴樹委員(調布市市長)
    前回述べたとおり、どのように独立性を保つのかは非常に重要な問題だと思う。また、日弁連市民会議の「日本司法支援センターに関する要望書」には「地域の主体性を重視し」とあり、また「支援センターが業務を開始した場合、各種相談事業が縮小される事態が起こるのではないかと懸念されている」とある。私たち市民にとってメリットがあるのか、本当に有用なのか。地方自治体が今までやってきた相談業務も整理淘汰されてもいいのではないかとも思うが、市民の側からしても、何か二重構造でわかりにくいとか、より煩雑度が増すということであれば、私たちとしても中身をよく熟知させてほしいと言わざるを得ない。

  • 阿部一正委員(新日本製鐵株式会社知的財産部長)
    法務部に21年、知的財産業務を含めて30年いるが、従業員を多数かかえている大会社では会社の仕事の他に、従業員の悩みごとを聞く仕事がある。「自分の家族が交通事故に遭った」「暴力団に脅された」ということで、どこに相談に行っていいかわからなくてノイローゼ気味になる従業員もいる。その従業員の上司が気を利かせて「ちょっと法務に相談してごらん」と言って私のところに来るが、私もよくわからないので、顧問弁護士を通じてどこへ行ったらいいのか聞いているという実情がある。そのようなときに、「ここへ行ったら全て解決できる」という所があったら非常にいいなと思う。

  • 草野忠義委員(日本労働組合総連合会事務局長)
    相談に行った人の振り分けがまず一番大事で、結果として「こっちへ行ったが結局あっちへ行った方がよかった」ということも現実的にはあると思う。「どこへ行ったらいいかわからない」という市民が、ワンストップサービスできちんと対応できるような受け入れ側の人をどうやって育てていくかが重要である。また、今は若者の雇用で「ジョブカフェ」というのが多く出ているが、これが機能するか否かの大きなポイントは、若者が行きやすい所に窓口を設けているかどうかということである。日本司法支援センターの窓口も、人が行きやすい所にあるということが極めて重要なポイントであろう。連合は全国47都道府県に地方連合会があり、そこで多くの労働問題の相談をやっているが、最近、労働問題の専門の弁護士が大分少なくなってきたため、地方連合会と支援センターとの連携を是非とらせていただきたい。

  • 藤森研委員(朝日新聞社編集委員)
    税務、労働というのも我々の生活の中で、非常に重要な相談ごと。教育相談も非常に身近で、皆が一様に悩んでいる感じがする。日本司法支援センターには、「せっかく相談に来たのだから全部引き受けた」というぐらいのワンストップ性を望む。教育相談まで振り分けてもらえるような幅広い窓口になれるといいと思う。また、法律扶助の観点から、資力基準を見直して、皆がもっと法を使いやすくすることも大事だと思う。

市民からの弁護士情報へのアクセスについて

  • 岡田委員
    一般法に関しては理解しているが、消費者問題特有の業法に関しては依頼者から仕事を受けてから勉強するという弁護士が多いと思う。私としては、消費者委員会に入っているとか、研修に参加しているとか、そういう弁護士のところに相談者を紹介したいが、消費者問題に強い弁護士がどこにいるのか、その情報がない。専門性という点で一番広いのは、消費者問題だろう。先物取引から始まって、多重債務の問題、不動産の問題等々、それら全部を全ての弁護士が扱えるとは限らない。消費者問題から言えば、特別法、業法に関して知識があるのかないのか、その点がポイントだと思う。

  • 紙谷議長
    基本的な問題として、依頼する人たちが専門性を求めているときに、その求めている専門性と弁護士の側が考えている専門性が一致しているのだろうかという素朴な疑問がある。依頼者はさほどの専門性は求めていないのではないか、知的財産権であれば、当然、依頼者側の知識の方がその分野についての情報を持っているのではないか。普通の人が「今、相続問題で困っているがこれに詳しい先生はいないだろうか」という質問をした場合、一見すると専門性を尋ねているようだが、ほとんどの弁護士が処理できる問題である。そのあたりでイメージにギャップがあるような気がする。

  • 草野委員
    司法試験の受験科目から労働法がなくなってしまったため、労働問題を扱う弁護士が減ってきた。労働問題はある程度特殊な分野にならざるを得ないので、労働問題に強い弁護士がわかるようにしてもらうと、非常に有り難い。パートタイマー、派遣労働者、請負、さらに最近は契約社員も増えており、労働契約の多様化が進んでいる状況があるし、今後労働審判制が導入されるので、もっと労働問題専門の弁護士が増えてほしいし、必要だと思う。これから法曹人口がどんどん増えていくと、全ての弁護士がゼネラリストでやっていけるという状況ではなくなってくる。やはり自分を売り込む得意な分野を鮮明にしていくということは必然的にやらざるを得なくなってくるのではないか。

  • 阿部委員
    新聞で、弁護士が法人組織になって 100人とか 200人という単位でまとまるという傾向が非常に多くなるという記事を読んだ。そうするとその事務所1つが総合商社みたいになって、窓口に行けば「何課に行ってください」という話になるのかもしれない。専門化が激しくなると、ある程度一緒になってやらないと組織的な仕事ができにくくなってくるのではないか。また、アメリカでは、民間の会社が、弁護士の経歴とか得意分野を紹介した本を出版しているが、使う立場に立って考えているから、ある程度一般的な評価がされているのではないかと思う。

  • 濱野副議長
    弁護士の数が増えていけば、自ずから専門化が進んでいくという面もあるが、情報開示するということについては、必ずしも自然に任せれば進むというものでもないであろう。日本司法支援センターにおけるアクセスポイントで、ネットワークをつくるときには、一定のクオリティが保証されている専門分野についての情報が開示されないと、なかなかうまくいかないと思う。アクセスポイントのネットワーク化も、弁護士の専門化も両方同じ時期に起こってきている課題だが、この2つの課題を連携させながら、制度構築をしてほしい。

  • 長友委員
    普通の弁護士は、全てが得意分野で全ての看板を掲げているのと同じような感じなので、時に徒労感というか、真に自分がアクセスしたいところにいくのに時間がかかるのかなと思う。また、医者の世界では、小児科医の不足が大きな問題だが、これは本当に採算がとれない、他の専門に比べてなかなか利益が上がらないことが1つの要因といえる。専門性を特定してそれを公表するときの1つのネックが、やはり同様のことがあるとすると、特定のところに強いというとそればかり集中してきてしまうという問題がある。こうした問題も是正されないと世の中はなかなか変わっていかないのではないか。

  • 藤森委員
    弁護士もやはりレーティングの時代なのかなという気もする。人々の知りたい1つは専門分野が何か、もう1つは腕がいいかどうかだ。本当に価値ある情報は「腕のよさ」情報だと思う。ただ実際に弁護士会が自己評価というのは難しいと思うし、また市場的にレーティング会社ができてくるのがいいのかどうかというのは、まだよくわからない。ただ、少なくとも専門については、ある程度開示していただいた方が有り難い。採算性の悪い仕事ばかりが特定の人に集中してしまうことをどうするのかという問題はあり、それを防御する「ポイズン・ピル」はつくっておかないといけないと思う。

1年間を振り返って

  • 阿部委員
    ずっと企業にいると企業しか見ていなくて、人間生活のうちの全く見えない部分があった。しかし、この会議では、目からうろこが落ちるというか、いろいろと新しい場面を発見できた。ありがたく思う。

  • 岡田委員
    もっぱら消費者の立場でいろいろなことを言わせていただいた。これからも消費者の立場の代弁をしたい。この会議でいろいろな意見を聞いて、視野がかなり広くなった。

  • 草野委員
    やはりお医者さんと弁護士さんは別世界の人だなという感情が抜け切らないところがある。これからももっと情報公開をしてほしい。

  • 濱野副議長
    従来どちらかというと司法の世界は閉ざされたというか、法曹三者の間で物事を決めてきたという面があるが、今後も広く各方面の人たちの意見を取り入れる機会を設けてほしい。

  • 長友委員
    いい人材を法曹界により広く求めていきたい、いい活動をするためには報酬を一定以上の水準を確保したい、それは当然だと思う。ただ、そこで、市民をどう位置づけるか。市民との関係で本当に真の意味で開かれた制度を目指すのがお互いの利益ではないかと思う。

  • 藤森委員
    毎回、この会議は勉強になっているが、私などは想像で語っている面が多い。これからは相談や法廷のような現場にも行ってみたい。私たちも弁護士の現場の感覚をもっときちんと知る努力をしなければいけないと思う。

  • 紙谷議長
    弁護士と話すと、弁護士の視点から物事を見ていると感じることが多い。組織も何となく防御的だという気がしていたが、この会議のように、他の見方に耳を傾けるチャンスを積極的につくったこと自体、やはり弁護士会は変わりつつある。私たちが役に立てればいいなと思う。