東京弁護士会

第9回市民会議(2006年5月22日)

第9回市民会議議事録(PDF:106KB)

第9回東京弁護士会市民会議が2006年5月22日に行なわれた。今回のテーマは「弁護士の広告について」である。日弁連が作成した「弁護士及び弁護士法人並びに外国特別会員の業務広告に関する運用指針」をもとに意見交換がなされた。

  • 藤森研副議長(朝日新聞社編集委員)
    新聞社では広告掲載主としての責任を問われるので、広告を掲載するかどうか審査をする。審査をして「危ない」広告であると思われるものは掲載をお断りするようにしている。広告自体に非弁提携で危なそうなものがあるとすれば、それを摘発するのが早いのではないか。弁護士会の非弁提携弁護士対策本部が、その調査の中で、相当の費用がかかると思われる広告を出しているものなどを絞り込み、調査していくのが、費用対効果としては一番よいのではないか。
    また、日弁連の「運用指針」によれば、「特定の事件の当事者等に具体的に発生している事件の依頼をダイレクトメールなどによって直接働きかける行為は、窮状に陥っている者に対して、その窮状に乗じて事件をあさるという印象が強い」として禁止しているようだが、当番弁護士のように制度化されていなくとも、明らかに公益的だと思われるような場合に弁護士が当事者のもとに駆けつける、いわば押しかけることまで禁止する必要はないのではないかと思う。

  • 岡田ヒロミ委員(消費生活専門相談員)
    電車の中で弁護士広告を見るが、もし問題があるのであれば、弁護士会として「こういう広告には気をつけてください」というメッセージを一般の人に届けてほしい。また、弁護士広告の議論では、関連して弁護士の専門性が話題になるが、客観的に弁護士の専門性を評価するには、どういう事件を過去に何件やってどのぐらいの勝敗率か、どういう弁護団で活躍していたか、という情報を提供してもらうとよい。弁護士を利用する側としては絶対こういう情報が欲しい。特に、大規模な消費者問題が発生した場合に、具体的にこういう弁護団を立ち上げたという情報を掲載してもらうだけでも消費者としては非常に助かる。
    また、弁護士の自己申告による情報提供であるとのことだが、消費者はその情報を信じて相談に行く。その結果、期待に反するような対応だったのであれば、やはり弁護士会としてアフターフォローをきちんしてもらう必要がある。最近は「自分の専門じゃないからやらない」と話す弁護士もいるようである。最初に相談した弁護士の対応が期待に反した場合には、別の弁護士が相談を受けるということを積み重ねていけば、専門性が明確になっていくと思う。

  • 長友貴樹委員(調布市長)
    弁護士の専門性がわかるようにして、持ち込まれる相談に合致する弁護士は誰なのかがわかりやすくなるとよい。弁護士は医師と比較されるが、考えてみれば、医師も熟達しているかどうか、一般の市民は最初からわかっているわけではない。そこに飛び込む市民の側にも自己責任を求めてもいいのではないか。その上で、もう少し専門性を開示して基準をどこに求めるか、カテゴライズをどうするかを考えてほしい。自分はおなかが痛いのに飛び込んだら眼医者さんだったということはできれば避けたい。
    また、行政の観点から弁護士の広告のあり方を考える際、屋外広告物の規制の問題がある。「法令に違反しないような広告をする」、法律の専門家としてそれは当然のことだと思う。わが市でも、貼り紙や貼り札を年間に1万枚ぐらい、立て看板を300ぐらい、行政側が撤去しなければならないが、それでも撤去し切れないという実態がある。法律家として広告をしていくときには範を示してほしい。

  • 阿部一正委員(新日本製鐵株式会社知的財産部長)
    司法改革の議論が始まったときに、企業として何か要望があるかと聞かれて、最初に「弁護士さんの広告をもっと自由にさせて我々が見えるようにしてくれ」と言ったが、今回の市民会議で配付された資料を見ると、「こんなにいろいろ問題があるのか」と思った。
    資格制度を四角四面に守ろうとすると、やはり商売人ではないから勧誘はしてはいけないという思想を徹底することになる。しかし、実際は商売というか、それで弁護士自身も生活をしており、しかも人数がだんだん多くなるから、待ちの姿勢でやるなどということはおそらくとてもできないと思う。とすると、少し危険かもしれないが、自己責任でどんどん広告をさせて、あまり事前規制をしないというように、もう少し大胆に展開しないと多分弁護士会でも面倒見切れなくなるのではないか。それで間違ったことをやったら弁護士の資格を剥奪するということをやっていくことによって、両方が慣れていくしかないのではないか。

  • 藤村和夫委員(筑波大学法科大学院教授)
    日弁連の「運用指針」について、もう少し基本的に一般市民は一体何を知りたいのかという点を考えて作成するとなおよかったのではないか。
    「運用指針」には、「専門分野」「得意分野」「取扱分野」という用語があり、「専門分野」という言葉は表示を控えるのが望ましい、「得意分野」は主観的な評価だから許される、「取扱分野」は評価を伴わないから許される、という若干の違いが設けられているが、一般市民にはこの違いがわからないのではないか。「この弁護士さんはこれが専門だから得意なんでしょ」という受け取り方をするのがむしろ普通ではないか。
    また、取扱分野については「もう何でもやります、取扱いはします、上手か下手かはわかりません」という捉え方も可能であり、こうした区分の仕方は弁護士の視点によるものであり、一般市民が求めているものとは若干ずれているところがあるかもしれない。

  • 紙谷雅子議長(学習院大学法学部教授)
    法律家ではない者が法律家に期待する専門の分野と、弁護士が考えている専門の分野と、ずれているのではないかと思うところがある。一般的に、まず話を聞いてくれるホームドクターのような弁護士がいて、さらにその先に、もし必要であれば非常に専門性の高い弁護士がいるというスタンスを、弁護士会はとることはできないのだろうか。また、債務整理に関する弁護士広告が多いようだが、一方で問題になっているケースも少なくないようだ。
    自分がお願いした弁護士のことをおかしいと思わない、セカンド・オピニオンとして他の弁護士にも相談せず、そのままにしてしまう。おそらくそのあたりが、弁護士が信用されている点につけ込んだ一番の問題点だと思う。弁護士はとても信用できるという世間の常識があるが、実はだんだんそうでもなくなってきているあたりに今回のトピックのポイントがあるのではないか。弁護士が増加しつつある状況において、弁護士会が、規律として、何かの方策で信用される弁護士をつくっていくやり方があるのかが課題になると思う。また、こうした規律が市民に見えないと、弁護士がどのような規律のもとで動いているのかがわからない。積極的に弁護士会の規律の仕組みや運用の実態について広く伝えていくことも重要になるだろう。