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第12回市民会議(2007年7月4日)

第12回東京弁護士会市民会議が2007年7月4日に行なわれた。今回のテーマは「当会の広報活動のあり方について」である。

  • 紙谷雅子議長(学習院大学法学部教授)
    市民の立場からすれば、自分が巻き込まれているトラブルが法律問題なのかどうか認識がない、市役所等で行われている法律相談に行く必要があるのかすらわからない人が多いだろう。その意味では、こうした市民が東弁のホームページにたどりつくこと自体難しいといえる。ホームページは見てみようと思わないと見ないものだから、「ホームページに書いてあるから皆に伝わっている」と考えることはできないだろう。市民に対して、もっと直接的に弁護士会の存在を伝えるためにパンフレットを配付する方法を考える必要があると思う。また、情報が多く載せられていても、知りたい情報が載っていないことも多い。外部向けの広報をする以上、肝心な情報は何なのかという観点から考える必要がある。
    弁護士を紹介するという業務は、一般の人はできないので、弁護士会がやるべき仕事であると考えていた。特定分野のほうは、まず、相談に来てもらい、その分野で詳しい弁護士を紹介するということになっているが、一方で、事業者向けの方は、事件が起こる以前に相談に応じる仕組みであり、ある意味違う性質のものを一緒にしたという印象を受け、おもしろい。ただし、市民が考える「専門の弁護士」は、あくまでも「自分が求める事件内容の専門家」であり、弁護士会側の「専門の認識」との差は大きいのではないかとも思う。しかしながら、今までは問題が発生してから弁護士を紹介していたところ、紛争が発生する前から弁護士を紹介するという発想はすばらしいし、期待したい。広報を積極的に行ってほしい。
    弁護士会では会長声明などで意見を表明しているが、法の専門家として「この法案には重要な問題点があるのではないか」と指摘することこそが弁護士会の存在意義であると思う。ホームページで会長声明等へのアクセス数が少なくても、ぜひ続けてほしい。

  • 阿部一正委員(新日本製鐵株式会社知的財産部長)
    弁護士会のパンフレットがこんなに種類があるとは知らなかった。どこに備えられているのか、あまり目にしたことがない。市役所等にも備えられているとのことだが、目にした記憶がない。市民にとって身近な存在である市役所に宣伝してもらった方がよいのではないか。パンフレットの装ていだけを見ていると、一番弁護士会らしいのはクレサラ相談のものだと感ずる。他のパンフレットはちょっと軽い感じがする。どちらがよいのかはわからない。また、どのパンフレットもA4サイズ・3つ折りとのことだが、紹介したい内容によって大きな紙の方がよいものもあるし、ある程度ページを使って細かいことが書いてあった方がよいものもあるのではないか。
    弁護士紹介センターの制度はよいと思うが、少し違和感を感じたのは、市民が相談したいことは、交通事故や離婚、相続の争い等であるのに対し、紹介センターのパンフレットを見ると、登記、建築紛争、税務訴訟等、どちらかというと会社で起きそうなものばかりになっている。市民が相談しやすい分野のパンフレットがきめ細かくこの制度に取り込めると、とても使い勝手がよくなると思う。既存の分野以外にはリンクを張ってとぶような、ホームページ的なものが作れると、なおよい。また、弁護士会には総合受付的なものを設置し、そこで、弁護士紹介センターなり、法律相談センターなり、アクセスしてきた市民の要望に応じた交通整理をしてほしい。

  • 長友貴樹委員(調布市長)
    パンフレットを配付するということは、役割や業務を理解してほしいということなのだろう。しかし、市役所には切羽詰まった市民が相談に来るが、パンフレットをいちいちその場で読むのか、持って帰って読むのか、かなり疑問である。パンフレットを配架しておくことと、パンフレットを読んで内容を理解してもらうこととは微妙に違うことは我々が広報を考える上でも一番悩む点である。パンフレットを配付することは否定しないが、例えば、薬局に行って薬剤師のように適切なアドバイスができるような役割の者が必要であり、こうした的確なアドバイスができる者がいることによってパンフレットが持つ効果が倍増するのではないか。東弁のホームページについては、シンプルでわかりやすくて使いやすさを工夫していると思う。ただ、企業や学校のように好感度アップをはかろうとする観点からすればよいのかもしれないが、弁護士会にアクセスする立場から見れば、「きれいすぎる」という意見もあるだろう。

  • 藤森研副議長(朝日新聞社編集委員)
    弁護士会のパンフレットは、A4サイズで、さっと読みやすいし、内容も必要十分だと思う。紛争というものは、いつどこで起きるかわからないから、弁護士会が積極的に営業してお客さんを引っ張ってくるというよりは、弁護士への相談が必要と感じた人が、そのときにアクセスしやすいかどうかが大切だ。全く手がかりなしからの出発であれば、法テラスが、まず1つのルートになるだろうが、そのルートと並行して、ちょっと見てみたいなという意味で弁護士会のパンフレットがあるのは便利だ。
    弁護士会がさまざまな社会問題に対して意見を表明することについて、私は大いに賛成だ。たとえば、少数者の人権問題など、社会の健全なバランスをとる上で弁護士会の役割は極めて大きい。
    弁護士紹介センターは画期的な制度である。利用する側としては見通しがきき、弁護士会からの紹介ということで、安心できる。

  • 藤村和夫委員(筑波大学法科大学院教授)
    一般市民とすれば「弁護士は一体何をしてくれるのか」「我々はどういう時に弁護士の事務所の門を叩けばよいのか」ということが一番知りたい、切実な問題なのではないかと思う。多くの種類のパンフレットを作成して、「こういう問題はこちらの法律相談へ」というよりも、まずは大きな窓口を1つ設けて、その窓口に「自分の身にこういう問題が起きたらどこに行けばよいのか」と相談して、その窓口からその事案に合致した相談場所はここですという回答が返ってくる、こうした役割を担う機関が法テラスになるのだと思うが、そこから第2の門にアクセスさせるという方が便宜なのではないか。また、東京弁護士会としては、他の弁護士会との違いをアピールしたいという気持ちがあるのかもしれないが、情報の受け手である市民にとってみれば、弁護士会がどこなのかという点は、おそらく意識しない問題であろう。
    弁護士紹介センターで紹介を受けた弁護士の報酬については、直接弁護士に相談するということになっているが、依頼者としてはその前の段階で、どれくらいの金額が必要なのか知りたい気持ちが強いと思う。

  • 岡田ヒロミ委員(消費生活専門相談員)
    弁護士会の法律相談のパンフレットを一番利用するのは、おそらく消費者センターであろう。相談員が相談を聞いた上で、弁護士会の法律相談を紹介した方がよいと判断した場合に、窓口対応内容や費用について説明してパンフレットを渡している。ただ、パンフレットが置いてあって「ご自由にお持ち下さい」という形式だと、興味があってパンフレットを持っていったとしても、結局無駄にしてしまうことも多いと思う。最近、消費者センターにはありとあらゆる相談が入ってくる。消費者問題はもちろん、公害環境の問題や外国人からの相談も多い。「弁護士会はどのような法律相談を行っているか」という情報を相談員の頭の中にインプットして相談者に対して的確な助言を行うためにも、是非消費者センターに弁護士会が行っている法律相談のパンフレットを全種類送ってほしい。
    消費者センターは、法律相談センターと弁護士紹介センターの使い分けを考えている。
    弁護士紹介センターに3人の弁護士を紹介してもらい、もちろん、相談料は3倍必要ではあるが、3人の弁護士に相談できるのは、それなりに利用価値があるよい制度だと思う。弁護士会には、とくに消費者相談において、弁護士紹介センターと法律相談センターとの仕訳を明確にしていただきたい。