東京弁護士会

第17回市民会議(2009年3月11日)

第17回東京弁護士会市民会議が2009年3月11日に行なわれた。今回のテーマは「法曹人口問題と弁護士へのアクセス障害について」である。

  • 藤森研副議長(朝日新聞編集委員)
    リブラ2008年12月号特集「弁護士報酬を考える」でも書かせてもらったが、司法制度改革は、法曹人口増加、裁判員制度、法テラスの創設、法科大学院などが、相互に補完し合う1つのセットになっている。その目的は、もっと市民のための司法にしようという考え方で、日弁連も合意したはずだ。その共通目的に向かい、皆でこれまで山登りをしてきたのだから、当面の目的地の峠までは当初に計画を変更せず、頑張って登り切った方がよいのではないかと思う。峠に立った上で来し方行く末を眺めて、たとえば法曹人口増については見直した方がよいと考えられれば、誠実に説明すれば市民も十分に理解してくれるだろう。そうではなく、もしも現段階で急に山登りの計画を変更するというのであれば、市民に対し、もう少し説明が必要ではないかという気がする。
  • 小賀野晶一委員(千葉大学大学院専門法務研究科教授)
    司法改革は歴史的な大きな改革である。いろいろな意見が出てくるだろうが、動き始めた以上、動きながら議論していく必要がある。本意見書については、いろいろな項目を取り上げ、実証的なものと絡ませて調査した成果であり、有意義と思う。法科大学院のスタート以来、日々試行錯誤している立場からの感想としては、法曹として活躍する者が増えてくることは大変喜ばしいことであるが、他方で法科大学院を出て法務博士となりながら、司法試験に3回チャレンジしても法曹資格を得られない人が出てきていることを懸念している。司法改革で「法律を知らない者も法曹界に入ってきてほしい」との呼びかけに応え、ゼロから法律の勉強をして一生懸命勉強して頑張ったものの試験で成果を出せない者が出てきている。こうした者を社会で支えていく議論が必要である。 
  • 阿部一正委員(㈱日鉄技術情報センター代表取締役社長)
    いわゆる団塊の世代の企業人は人数が多く、競争していくうちにスキルが磨かれて自然にリーダーが生まれた。しかし、人口が減少してきて競争がなくなった現在、責任は負いたくない、リーダーになる必要はない、そこそこ生活していければいいと考えている企業人が増えている。このような状況で国際的な競争ができるのか、経営者は心配している。司法界も同様の状況ではないか。試験に受かったら大事に育てるというのが今のやり方のように思えるが、もっと競争した方がよいのではないか、とも思う。しかし、一方で競争によってノイローゼになると言われてしまう。本意見書には、弁護士人口の増員は競争原理に立つものではないという考えがあるようだが、ある程度競争がないと専門分野や新しい分野の開拓は不可能であろう。司法改革での初心を忘れないでやりきってほしい。
  • 岡田ヒロミ委員(消費生活専門相談員)
    かつての弁護士は、消費者問題にあまり関わってくれなかったが、今では受任してくれる弁護士も増えている。弁護士が増えたことは決して悪いことではなく、よいことも出てきている。弁護士の増加によっては、資質の問題や勤務先の不足等の問題を聴いているが、弁護士の増加については地域によっていると思われ、資質の問題も現状で判断するのは早計ではないか。弁護士会だけでなく、会員や法曹志望の人々にも現時点で方向性を変えること以外の検討を望みたい。
    素人考えでは、司法試験合格者を人数で決めるのではなく合格点で決めることができないかと思って仕方がない。 年によって合格者数に差がつくとか、合格点の基準を定める困難さはあるが、全く検討に値しないのだろうか。
  • 古賀伸明委員(日本労働組合総連合会事務局長)
    司法制度改革意見書に沿った司法改革が進むことによって、変化する裁判等に対応するには法曹人口を増やしていく必要がある。例えば、犯罪被害者の訴訟参加、労働審判制度、裁判員制度等の導入により、裁判官、検察官、弁護士などの法曹人の需要は高まっているのではないかと思う。本意見書はいわゆる隣接職種問題についても触れているが、現状の課題を解決していくための建設的な議論をしてほしいし、もう少し市民に対しての説明が必要だと思う。法科大学院、司法試験のあり方など総合的に考えながら、真に市民のための法曹を目指してほしい。また、弁護士は市民から見て「雲の上の存在」であってはいけない。弁護士には、もっと街に出ていってほしいと思う。市民の視点でアクティブに生活・労働相談など行うことを要望したい。
  • 長友貴樹委員(調布市長)
    自治体が弁護士に依頼する事項として、行政事務の相談、訴訟代理人就任、市民相談の担当の3つに分けられる。市民相談は、弁護士1名あたり年15回あり、すべて予約が埋まるとのことである。調布市について言えば、人口約22万人のところ、市内に事務所がある弁護士が18名しかおらず、弁護士の需要が充たされているとはいえない。これから法曹人口を増員することによって改善されるのだろうか。法曹養成についても、どういう人材を育てようとしているのか、そのプロセスに興味がある。法曹の適性についてはテクノクラート資質を過大視してはいけない。相談者の不幸な心理をほぐすことこそ法曹、特に弁護士の重要な仕事であろう。最近の若者は精神的に弱いように思うが、こうした重要な仕事を担う法曹の選抜方法に関心がある。
  • 紙谷雅子議長(学習院大学法学部教授)
    何故、今回の意見書のように考えたのか、市民に対してもっと説明をしてほしい。最初から独立する弁護士のオン・ザ・ジョブ・トレーニングについては、何人かの弁護士と共同して仕事をさせるなどの手当てや工夫をしてほしい。弁護士にはもっと町に出てほしいし、新しい分野を開拓するなど弁護士がやるべきことはまだまだあるだろう。また、弁護士の役割として、紛争を解決するだけでなく、相談者の話の聞き手という役割も重要であろう。法的な知識だけでなく、人と対話ができること、人の話が聞けることが法律家に限らずどの分野でも重要だと思う。弁護士会に対しては、初心貫徹をして、やせ我慢をして司法改革を推し進めて、ある程度進んだところで改めて法曹人口の問題、法曹の役割を果たしているか、検証して合格者の適切な選抜を考えてほしい。