東京弁護士会

第26回市民会議(2012年2月22日)

第26回東京弁護士会市民会議が2012年2月22日行なわれた。今回は、「専門分野登録弁護士制度について」と「震災問題への取組について」について、ご意見をいただいた。

専門分野登録弁護士制度について

  • 岡田ヒロミ委員(消費生活専門相談員)
    現在の案にあがっている以外の分野で、建築や金融も専門性が求められる分野だと思う。
    昨日、司法委員の講座で東京地裁の方から医療過誤訴訟の話を聞いた。その中で、最近、弁護士会の取組によって、原告側の主張が明確になったという話があった。そのように専門分野について弁護士会で取り組むと、即効果が出るのだなと思った。
  • 紙谷雅子議長(学習院大学法学部教授)
    米国では州によっては義務研修制度(継続教育)があり、個人が高い受講料を払っている。また、専門家の認定制度ではなく、自ら手を挙げて専門分野の団体に所属するという形もある。たとえば、法廷に立たない弁護士が9割くらいなので、法廷での仕事が中心の弁護士は独自のグループを形成し、研鑽を積む。米国では、弁護士会以外にも、営利組織による研修もある。米国の弁護士会は、懲戒処分をするために存在するという印象が強いが、研修も実施している。また、いくつか研修を受けたからといって、それで専門家になったという感じではない。
    イギリスのバリスタは専門化していると言われるが、顧客がバリスタを選ぶわけではなく、ソリスタがバリスタを選んでいる。だから、仲間内では専門性が認識されているが、顧客が選択するものではない。
    市民の間では、離婚など、多くの弁護士がやっているであろう分野であるにもかかわらず専門家の要望が強いという印象がある。そのような分野について専門家として登録していくのも一つの方法だが、弁護士はみんなその分野ができますよと広報していくことも一つの方法だと思う。
    経済界が要求している専門家は知財・税・経済法等の分野だと思う。ただ、分野別の専門家の存在があると、逆に、離婚のような普通のことについてもその分野の専門家が存在するという錯覚が生まれやすい。DVもある程度専門化している分野だが、少数の弁護士に事件が集中すると、対応できず困る分野でもあるようである。
  • 長友貴樹委員(調布市長)
    近年の法律事務所のCMを見ていると、仕事を件数でこなしているのではないかというイメージを持ってしまう。 専門化というときに、分野だけではなく、レベルも重要だと思う。レベルの判断は難しいのだろうが、弁護士会の内部あるいは外部で内情をわかっている人が客観的な基準を作ればいいのではないか。また、依頼をするからには、人格、識見も重要な要素になる。
    私は、専門分野登録制度の案をみて、まずは実現してみたらどうかと思った。オールマイティな基準ではないかもしれないが、現在、専門性について何の基準もなくて不安に思っている市民がいることを考えれば、その人たちに対する朗報になる。そして、その制度を続ける上で改善をしていけばいい。
  • 紙谷議長
    専門分野登録制度を導入するにあたって、弁護士会の責任を心配する必要はないのではないか。複数の候補者の中から選ぶのは当事者。登録した人にお願いしたら負けたという苦情を心配するのかもしれないが、そんなことまで弁護士会が責任を持つ必要があるのか。大学でも、学生がガラス戸にぶつかってケガをしたら親が怒鳴り込んでくることがあるが、学生の判断の機会を奪う絶対的安全対策は、学生のためにならないように思う。
  • 岡田委員
    今のように広告にあれもこれもと同じようなことが書いてある時代には、一般の利用者に、何が専門かという基準をある程度示すべきだと思う。そうでないと、利用者は、判断に迷って、弁護士のところに行くのを躊躇してしまう。また、やっと弁護士にたどりついたら、その人が期待したレベルではなかったということだと、利用者は踏んだり蹴ったりになる。
  • 紙谷議長
    現在広告をうっている弁護士や弁護士法人は、この専門分野登録制度の要件を簡単にクリアしてしまうように思う。だから、この制度には、過大広告を何とかするという機能はあまりないように思う。
  • 岡田委員
    消費者問題について言えば、私は消費者問題の専門ですと言いながら、弁護士会の消費者問題特別委員会には入っていないと言われると、どうかと思う。少なくとも弁護士会の委員会に入るのは専門家の条件かなと思う。
    消費生活センターから、弁護士会の法律相談センターに先物取引被害の相談を紹介したら、担当の弁護士が先物取引について全然知らなくて、必死にメモをとるだけで30分が過ぎてしまったと言って、怒って戻ってきたケースがあった。やはり一般の人は、弁護士のことを専門家だと思っている。
  • 紙谷議長
    専門分野登録制度の導入により若手弁護士の参入の機会を奪うのかという議論があるようだが、経験の全くない若手弁護士が勝手に「私はこれができます」と言う方がこわいのではないか。
  • 岡田委員
    利用者はお金を払って相談するのに、よくわからない人が対応するのでは困る。
  • 紙谷議長
    「認定」と「登録」の区別は普通の人にはつかないと思う。
    専門医は、日本眼科学会など、それぞれの分野の学会の認定によっている。弁護士も、各弁護士会を横断的にして、たとえば子どもの権利のグループに登録というような形にしていくと、専門性の表示として多少説得力があるように思う。

震災問題への取組について

  • 長友委員
    自治体の立場からすると、災害後、早期に情報提供を含めて弁護士に相談をさせていただきたい。今回の教訓を活かして、明日に備えてしっかりと準備したい。調布市では、30くらいの小中学校の避難所があるが、避難所ごとに3日間のマニュアルをつくった。その後のことについても、可能な対応・準備をしたいと思って進めているので、法的側面についてぜひ教えていただきたい。まずは、区長会、市長会で大つかみの話し合いをさせていただきたい。
  • 古西洋委員(朝日新聞社記事審査室長)
    民間企業では、東京が災害で大きな被害を受けて機能を失ったときのことを想定して大阪に東京と同じ機能を作っておくなどの準備をしている。今回、被災した現地の弁護士がすぐには弁護士の活動ができなかったと聞いているが、同じようなことが東京で起きたときに、日本の弁護士のかなりの方が集中している地域で弁護士活動が機能しなくなるということを想定し、西日本の弁護士がすぐに対応するというような危機管理が重要だと思う。