東京弁護士会

インハウスと事務所勤務
多様な選択肢を視野に
下川慶子 会員(64期)

2021年2月10日

下川会員は、登録して3年間法律事務所で勤務した後、組織内弁護士(インハウスローヤー)となり、現在は週の半分は組織内で、残りの半分は法律事務所で勤務しています。
組織内弁護士となったのは、移籍の相談がきっかけでしたが、組織内部からの相談、外部との折衝など、組織の一員として幅広い業務に携わってきました。
組織内と法律事務所、両方を経験して分かったそれぞれの働き方をふまえて、組織の中で働くことは間違いなく良い経験になると語る下川会員。
組織内弁護士の数も大幅に増加した今、色々な働き方の選択肢を若手に向けて伝えてくれます。

‐弁護士になることを決めたきっかけ‐

高校生の頃から、困っている人を助けることができる法曹という職業に憧れを持っており、大学卒業時に法科大学院ができるタイミングだったこともあって、チャレンジしてみようと思いました。最初は検察官志望だったのですが、弁護修習で、様々な種類の事案を見せていただいたり、子どもの権利や医療事故に関わる委員会や勉強会などに参加させていただいたりしたことから、幅広い活動ができる弁護士の仕事がとても魅力的に感じ、弁護士となりました。

‐組織内弁護士(以下、「インハウス」)になったきっかけ‐

弁護士登録して3年間は、都内の法律事務所で勤務していました。事務所の仕事は企業法務と一般民事が半分ずつくらいでしたが、もっと多くの企業法務を経験したいと考えるようになり、お世話になっている先輩の弁護士に事務所移籍について相談しました。その弁護士が顧問を務める日本生活協同組合連合会(以下、「日本生協連」)を紹介いただいたのが、インハウスとなったきっかけです。
移籍の相談をしたときは、インハウスを想定していたわけではありませんでしたが、大きな組織で働くことに魅力を感じましたし、新しいことに挑戦するのも面白い、その環境が合わなかったらまた別の道を考えようくらいの気持ちで勤務を開始しました。日本生協連は、株式会社などの一般企業とは異なる特殊な法人であるため、これまでの自分の知識経験が役に立つのか不安も感じましたが、逆に全く知らないことを学べることが魅力的でもありました。

-現在取り扱っている業務及びそのやりがいについて-

日本生協連は、全国各地の生協や生協連合会が会員として加盟する全国組織で、会員である生協・生協連合会(以下、「会員生協」)が組合員に販売するための商品(コープ商品)を製造・販売したり、会員生協に対して様々な情報提供を行ったりするなど、会員生協のために幅広く事業を行っています。
日本生協連には、私含め3名のインハウスが所属しており、その他にも週2、3日の頻度で勤務する業務委託の弁護士が3名います。インハウス全員が法務部に所属しており、各人が分担して、契約書チェック、法務相談、商標点検、総会運営支援、会員生協に対する法令情報(特に生協法)の提供、学習会の講師対応、所管行政庁である厚生労働省との折衝などの業務を行っています。事業内容が非常に幅広いため、契約書や相談の内容も幅広く、そこは面白い点だと思います。
関係部署からの情報を収集し、組織内部の意思決定の手順も頭に置きつつ、各部署の調整をしながら進める必要があるため、その点で難しさはありますが、相談を受けた企画が実現したときなどはインハウスとしてとても嬉しいです。また、生協法に関する業務は日本生協連特有のものであり、生協法に関する文献や資料は非常に限られているため、問題に直面した場合の回答を見つけることが難しいことが多いのですが、会社や他の協同組合(例えば、農協法に基づき設立される農業協同組合など)に関する文献を参考にしたり、同じ部署のメンバーと相談しながら答えを考えることは楽しくもあります。
日本生協連はフレックス制ですのでコアタイム(11時~15時)以外であればかなり自由に活動ができますし、コアタイムに委員会が重なる場合は委員会出席も業務時間として扱っていただいているので、インハウスだからといって会務活動との両立が無理というわけでもありません。

‐東京弁護士会の魅力‐

やはり会員数が多くマンパワーもあるためか、様々な面で制度が充実しているように思います。
例えば、委員会についてですが、委員会数だけでなく各委員会のメンバー数も多いので、興味のある分野の委員会に入れば、経験豊富な弁護士と知り合うこともでき、その分野の様々な情報を得ることができて、専門的な知見が深まります。私自身は、登録1年目から犯罪被害者支援委員会に所属しており、委員会でのやり取りを聞いているだけでも当該分野の最新の議論状況を知ることができましたし、経験豊富な先輩弁護士と共同で事件を担当させていただけたことは非常に有益でした。
また、私自身は対象の期ではないのですが、65期以降、登録1年目にはクラス別研修が実施され、この研修で担任・副担任である先輩の先生方や同期とのつながりを作れるので、勉強という面だけでなく知り合いを増やすという点で非常に有益だと思います。実際に、65期以下の方々とお話をすると、クラス別研修でのつながりがきっかけで会務活動等に参加しているということをよく聞きます。

‐ワークライフバランスについて‐

基本的な勤務時間が決まっており、残業も削減傾向にありますので、比較的規則正しい生活ができます。また、年休もきちんと消化するよう言われますので、気兼ねなく年末年始や夏休みにまとまった休暇を取ることもできます。私の場合は、例年、少し時期をずらしてお休みを取得し、混雑しない時期に海外旅行に行くことができていました(2020年は新型コロナの影響でそうはいきませんでしたが)。法律事務所勤務だと、休暇中であっても仕事の連絡が入ることは普通にありますが、組織内で勤務する場合、よほど緊急でない限り、お休み中に仕事の連絡が来ることはないので、旅行中に仕事の心配もなく、旅行を楽しむことができます。このようにオンオフの切り替えができるのは、インハウスの大きな魅力だと思います。
やはり組織なので情報共有ができ、仕事をカバーしあえるので、産休・育休等も皆が気兼ねなくとることができる雰囲気がありますし、福利厚生がしっかりしていて安心して働くことができるのも良いなと思っています。

‐弁護士としてのこれからの展望‐

インハウスの場合、組織の業務以外に個人で事件を受任することができないところもありますが、私は一定の条件の下で個人事件の受任が認められていたので、もともと個人としての弁護士業を行うために法律事務所にも所属し、そちらで弁護士登録をしていました。
日本生協連での業務は気に入っているのですが、やはり訴訟対応など日本生協連では担当しない業務も充実させたいと考えるようになり、2019年4月からはフルタイムのインハウスではなく、日本生協連と法律事務所での業務を週に半分ずつ行う形に勤務形態を変えました。法律事務所で働く方が自由度は高く、時間を柔軟に使うことができるというのも大きいです。
インハウスの経験があることで、機関運営のイメージが掴めるようになり、社内にはこのような規程があるはずといった当たりもつけやすくなったので、今後は、インハウスとしての勤務で得た知識・経験を活かしながら、特に生協法や生協に関係する業務を広げていきたいと思っています。

‐修習生・若手弁護士へのメッセージ‐

リーガルリスクが複雑化・多様化している今、企業や組織の側でのインハウスの必要性は高まっています。また、インハウスの数は増え続けており、今では、特に珍しい存在ではなくなりましたので、今の修習生や若手弁護士の方々がインハウスを選択する際のハードルはあまりないように思います。ただ、インハウスといっても、登録時からインハウスとなる場合、法律事務所で勤務した後インハウスになる場合、インハウス後に法律事務所で勤務する場合、管理職や役員にまでなる場合など、いろんなパターンがあります。インハウスになった後のキャリアをどのように考えるかは悩ましく、私自身も悩んでいるところです。ただ、いずれにしても、組織の中で働くことは間違いなく良い経験になると思います。弁護士の働き方については以前よりも選択肢が増えていると思いますので、いろんな選択肢を視野に入れつつ、柔軟に、自分がどのように働きたいかを検討していただきたいと思います。

【経歴】

1982年:広島県にて出生
2004年3月:広島大学法学部卒業
2009年3月:大阪大学大学院高等司法研究科(法科大学院)修了
2011年3月:東京弁護士会にて弁護士登録、都内の法律事務所入所
2015年4月:奥綜合法律事務所入所、日本生活協同組合連合会にて勤務開始
2018年5月:奥・片山・佐藤法律事務所設立参画(事務所合併による)