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(1)認知症に備えた資産活用(家族信託)
Aさんは1人暮らし。夫はすでに亡くなっており、1人息子のBがいる。 |
認知症対策
厚労省の調査によれば、65歳以上の4人に1人が認知症または認知症予備軍という話もあり、自分らしく人生をまっとうするために、認知症対策は重要なテーマとなっています。
認知症対策としては、後見制度の活用もありますが、資産活用においては、家族信託を活用できる場合もあります。
家族信託の活用例
例えば、Aさんは、Bさんと信託契約を結ぶことで、Bさんに目的を定めて不動産を譲渡して、①Aさんの生前は、Bさんに賃貸物件として管理してもらい、その賃料からAさんの生活費や施設費用などを支払ってもらうこととする、②Aさんが亡くなったら、不動産をBさんの好きなようにしてもらっていいこととする、という二段階の活用を図ることができます。
この場合、AさんがBさんに不動産を譲渡した時点で、賃貸借契約における賃貸人もBさんになりますので、Aさんは、賃貸物件の管理から解放されます。他方、Bさんは、信託契約で定められた目的に従って不動産を管理し、賃料をAさんのために使う義務を負います。この時点で、法律的には不動産の所有権がBさんに移っていますが、不動産から利益を受ける受益者はAさんのままなので、税務上、Bさんに贈与税は発生しません。
Aさんが亡くなると、信託が終了して、残った財産はBさんに帰属しますので、通常の相続の場合と同じように、相続税で処理されることになります。
終活の選択肢
以上は、家族信託の活用例の1つですが、家族信託には、障害のある子どもの支援や、事業承継への活用など、他にも様々な終活での活用例があります。
終活とは、自分らしく人生をまっとうすること、家族や周りの人に、どうしてあげたいかを考えることだと思います。早めに終活することで、自分らしく人生をまっとうし、家族や周りの人にしてあげたいことをできるようになることがたくさんあります。
家族信託の活用は、遺言書の作成、後見制度の利用、死後事務委任契約の活用などとともに、終活を考える上で、1つの選択肢となります。それぞれのケースに沿った活用が考えられますので、お考えの際は、弁護士にご相談いただけるといいと思います。
(伊藤敬史)