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リーガルサービスジョイントセンター(弁護士活動領域拡大推進本部)

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(17)任意後見契約等 3

(4)任意後見契約等」、「(12)任意後見契約等 2」の二回にわたって、任意後見契約とは何なのか、どういった場面で使えるのかご説明してきました。
今回は、それに引き続き、任意後見契約の中身について見ていきましょう。

任意後見契約でよく定められる事項としては、①後見事務の範囲、②本人の意思の尊重義務、③費用負担及び報酬の有無、④報告義務、⑤契約終了事由等が挙げられます。

このうち、任意後見契約の骨格となるのは、①後見事務の範囲です。
一般的には、任意後見人に行ってもらいたい事項を「代理権目録」という形で列挙し、その範囲を明確化します。
例としては、以下のような事項が挙げられます。
 ● 不動産、動産等すべての財産の保存、管理及び処分に関する事項
 ● 生活費の送金、生活に必要な財産の取得に関する事項及び物品の購入その他の日常生活関連取引(契約の変更、解除を含む。)に関する事項
 ● 医療契約、入院契約、介護契約その他の福祉サービス利用契約、福祉関係施設入退所契約に関する事項
 ● 居住用不動産の購入及び賃貸借契約並びに住居の新築・増改築に関する請負契約に関する事項
参照:日本公証人連合会「公証事務」「4.任意後見契約」「Q11」から抜粋

信頼する任意後見人に何を行ってもらうかを決める重要な事項がこの①ですが、標準的な文言を入れる場面が多いのではないかと思われます。
他方、法定後見と異なり、本人の意思を反映させることができるのが任意後見契約ですから、オーダーメイドの具体的な内容を条項に入れ込んでおきたいと考える方もおられるでしょう。例えば上記で挙げた「福祉関係施設入退所契約に関する事項」に関していえば、事前に自ら調査して好ましい施設の目星をつけたうえで、代理権目録に、入所先として検討対象としてほしい施設を列挙し、その検討の優先順位を指定しておくことも考えられます。
もっとも、任意後見契約は公正証書をもって締結されるものであり、その変更も当然公正証書をもってなされなければなりません。任意後見契約を締結した後で、具体的な内容を書いた条項を変更したいとなった場合、その変更は容易ではありません。

そこで活用できるのが、エンディングノートです。
エンディングノートというと、通常、死後のことを書くものと考えられていまが、特に内容に制限があるものではありませんので、存命中(自分の意思能力に問題が生じたあと)の方針を書いておくことも可能です。
※エンディングノートについては、「(7)エンディングノートで出来ること、出来ないこと ─エンディングノートの法的効力─」もご参照ください

エンディングノートに法的効力はありませんが、本人の意思を明確にしておくツールとして有用です。任意後見との関係でいえば、エンディングノートにおいて、優先的に検討してもらいたい施設を挙げておくことや、自分の趣味嗜好にあった生活費の使い方を残しておくこともできます(例えば、1ヵ月に1度はウナギが食べたい、とか、アードベッグ10年(スコッチ)とブッカーズ(バーボン)を切らさないようにしてほしい、などでしょうか。)。

当然、任意後見人として対応可能な範囲である必要がありますし、財産や体調に照らして実現可能な希望であることが前提となるので、任意後見人となるべき人や専門家と相談の上で、内容を決める必要がありますが、任意後見に先立って、本人の意思を明示する方法として、エンディングノートは一つの有意義な方法と考えられます。

任意後見契約をご検討の方は、エンディングノート等、ご自身の意思を別途明らかにしておく方法についてもご検討ください。

(細谷周平)

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