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リーガルサービスジョイントセンター(弁護士活動領域拡大推進本部)

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(13)相続土地国庫帰属制度について

近年、実家の山林を相続したが遠くて利用しない、あるいは処分できないなど、いわゆる「負動産」と呼ばれるような不動産の相続が話題となっています。
当コラムでも相続法改正に関するコラムで触れましたが、相続の際に登記がされないまま土地が放置される「所有者不明土地」の発生を予防する方策として、相続登記の申請の義務化などとあわせて、相続した土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度が創設されました。
そこで、今回のコラムでは、終活に関連して相続土地国庫帰属制度について触れたいと思います。

1 制度の概要 

「相続土地国庫帰属制度」は、相続又は遺贈によって土地の所有権を取得した相続人が、一定の要件を満たした場合には、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする制度です。
相続した土地を国に引き渡すために申請ができるのは、相続や遺贈で土地を取得した相続人で、制度開始前(令和5年4月27日以前)に相続した土地でも申請できます。
他方、生前贈与や売買のように相続等以外の原因で土地を取得した人や法人は、基本的に制度を利用することができません。
また、 例えば、兄弟で相続したというように、相続等によって土地の共有持分を取得した共有者は、所有者(共有者)が全員で共同申請を行うことができれば利用できます。(相続等以外の原因により取得した共有者が含まれていても可能です。)

2 引き取ることができない土地

相続した土地全てで相続土地国庫帰属制度を利用できるものではなく、土地に建物がないことなど、国が引き取ることができない土地の要件については、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(以下「法」といいます。)に規定されています。
【引き取ることができない土地の要件の概要】
(1)申請をすることができない場合(却下事由)(法第2条第3項)
 A 建物がある土地
 B 担保権や使用収益権が設定されている土地
 C 他人の利用が予定されている土地
 D 特定有害物質により土壌汚染されている土地
 E 境界が明らかでない土地・所有権の存否や帰属、範囲について争いがある土地
(2)承認を受けることができない場合(不承認事由)(法第5条第1項)
 A 一定の勾配・高さの崖があって、かつ、管理に過分な費用・労力がかかる土地
 B 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
 C 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
 D 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
 E その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地

3 手続きの流れと負担金

実際の申請・国庫帰属までの手続の流れとしては、(法務局への)事前相談→申請書の提出・審査手数料納付→要件の審査→承認→負担金の納付→国庫帰属。となります。
国庫帰属の申請を行う際には、1筆の土地当たり1万4000円の審査手数料を納付する必要があります。
また、法務局による審査を経て承認されると、土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した10年分の土地管理費相当額の負担金を納付する必要があります。なお、負担金は、1筆ごとに20万円が基本とされていますが、一部の市街地の宅地、農用地区域内の農地、森林などについては面積に応じて負担金を算定するものもあります。
以上のように、「相続土地国庫帰属制度」は負担金や審査に時間が掛かるといったデメリットはありますが、令和5年12月28日時点で1505件が申請されています。
「相続土地国庫帰属制度」は引き取り手が「国」であるため、その後のトラブルが考えられないことから、終活を考える際に、処分に困る不動産をお持ちで「不(負)動産で子供たちに迷惑を掛けたくない」などのお気持ちをお持ちなら、相続土地国庫帰属制度の利用を検討する意義はあると思います。

(菅野 典浩)

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